昨日、本ブログでも紹介した「アチェの声-紛争と津波を乗り越えて」という講演会に行ってきた。現地NGO「ジャリ・アチェ」のスタッフのイムランさんとヌルジュバさんが来日、04年末のインド洋大地震・津波の被害支援や人権問題について話してくれた。実は共謀罪のことが気になっていたので、関連の集会とかに顔を出そうかとも思ったのだが、イムランさんにはアチェ取材でとてもお世話になったので、やはりイムランさんに会いに行くことにした。                     イムランさん ■紛争と津波のダブルパンチ  「ジャリ・アチェ」はスマトラ島北東部ロスマウェ市に拠点を置くNGOで、津波後は、ロスマウェ周辺の村々への支援を行ってきた。ロスマウェ市周辺では、7つの郡が被害を受け、死亡者は約2700人。ただでさえアチェ州では独立を掲げる「GAM(アチェ自由運動)」とそれを潰そうとするインドネシア軍が、約30年間にわたり争ってきた。ロスマウェ市のある北アチェ県は特に戦いが激しかった地域で、住民は紛争での被害に加え、津波まで来たので、正に踏んだり蹴ったりという状況だったそうだ。特に津波直後は、軍がキャンプを柵で囲い「GAM狩り」を行ったりして大変だった。私が訪れたタナパシール郡避難民キャンプでも、軍の兵士らが、避難民の若者5人を「お前、GAMだろう」と拘束して、拷問を行ったということがあったが、同じような問題が頻発していたらしい。 ■津波がもたらした和平  その後、アチェの津波被害の甚大さに驚いた国際社会から、国連の援助機関や各国の軍、国際NGOなどが続々とアチェ入りし、インドネシア政府に「おい、戦争なんかやってる場合か」と停戦を求めた。それで、昨年8月にインドネシア政府とGAMとの間で停戦合意が結ばれたワケで、皮肉なことに30年続いた紛争に幕をおろしたのは津波だったのだ。イムランさんに「もし津波がなかったら、和平はなかったと思う?」と聞いたが、「99%なかっただろうね」と言っていた。                      ヌルジュバさん ■「第二の津波」~現地を混乱させた膨大な援助  さて、海外からさまざまな組織や団体が来て、それが和平につながったのはいいのだが、ヌルジュバさんやイムランさんに言わせると、困った面もあったという。津波後「第二の津波」と言われる程、多額の支援が押し寄せてきたのだが、それが現地に元からあった相互扶助的な伝統を壊してしまったのだという。例えば、以前は村のために村人が力を合わせて無償で働いていたのに、"Food for Work"*のように有償で支援活動をさせたために、人々は有償でしか働かなくなってしまったそうだ。また、モニタリングが甘かったため、住宅建設計画でも、実際には住宅がほとんど建っていなかったり、質の悪い木材とかが使われるなど、現地で汚職をはびこらせることになってしまったのだという。 *援助機関やNGOの事業に参加することで食料や賃金を得られる援助プログラム ■現地のことは現地の人々に聞け  これらの問題がなぜ起きるのか。イムランさんやヌルジュバさんは「インドネシア政府や現地自治体に支援物資を渡すから」「国連の援助機関や国際NGOは現地の文化を知らない。現地のことは現地の人々に聞け」と指摘していた。彼らは「インドネシア民主化支援ネットワーク」の佐伯奈津子さんと共に避難民キャンプを訪れ、「サウォ」という伝統的な魚網を支援することにしたという。これは安価で誰でも使える上、役人や軍の兵士達が欲しがるものではないので、横領されることもない。さらに海水から塩を作るための道具を支援したり、破壊された小学校を修復したりしたのだという。国際機関や国際NGOとは比較にならない小規模な支援ながらも、こうした地域の事情やニーズを理解した援助の仕方が大切なのだな、と思った。 ■国際社会の関心の継続が和平進展のカギ  和平の進展も一つの山を迎えている。昨年夏以降、インドネシア軍のアチェへの派遣部隊が撤退し、GAMも武装解除した。一見すると和平は順調のようだが、今、焦点となっているのは、「アチェ行政法案」というアチェ州自治のための法案がインドネシアの国会で審議されており、これが可決するか廃案になるかで和平の行方も大きく左右するのだという。30年間紛争に苦しんできたアチェの人々は、まだ完全には状況を楽観視していないが、国際社会がアチェに関心を向けていてくれる限り、おそらく大丈夫だろうと思っているとのこと。日々、さまざまなニュースが飛び交うなかで、未曾有の大災害も日本人の意識の中で風化していくだろうが、やはり一過性のものではなく、少しでもいから意識を向けておくことが肝心なのだろう。  つい長くなってしまったけれど、久々に友人達に会え、楽しい一日だった。共謀罪の強行採決も(とりあえずは)避けられたようだしね。
■GOOD JOB!
この記事よいネ!クリック!→