大方の予想どおり、安保理採決が延期されて平壌での中朝交渉に焦点が集まる結果となった。ライスは北朝鮮が六カ国協議に復帰するのを期待すると言っていて、やはりヒルを中韓に派遣した目的は北朝鮮の六カ国協議復帰にあったことが裏付けられた。米国は六カ国協議枠内での米朝対話の了承まで譲歩していて、この譲歩の意味はマカオのバンコ・デルタ・アジアの口座凍結解除以外に考えられない。金融制裁を解除するから六カ国協議に復帰しろと要求しているのだ。日本は強硬論で固まっているが、米国は二枚腰で、今度の安保理決議でも早々と中露の意向を斟酌して採決延期に応じたし、最初から制裁決議案の採択は想定していなかった気配がある。米国も米朝戦争は考えていない。ブッシュ政権は例の核開発疑惑があった四年前に戦争のシミュレーションをした形跡があるが、その検討結果がよくなかったのだろう。米国にとって北朝鮮との戦争は割が合わない。リスクのみ多い。安倍晋三は採決の延長を「数日」と言っているが、今朝のテレビ報道が伝えたNYの国連情報筋の話では、採決の日程は15日以降となり、これから一週間の空白ができると言う。延期を決めたのは議長国フランスのドラサブリエール大使で、最初に素早く日本の制裁決議案に乗りながら、中露の説得を受けて瞬時に身を翻すあたりは、実にしたたかなフランス外交の印象がある。裏でライスと相談しながら状況を見極めているのだろう。一説では、イラン核問題で中国を米欧側に引き寄せる代わりに北朝鮮問題で譲っている取引の結果だという話もある。情報筋の言う15日は、武大偉の訪朝団が平壌を離れる期日であり、またロシアでサミットが開幕する日程でもある。15日までに中朝の交渉が纏まらず、なお武大偉の平壌滞在が延びた場合はどうなるのだろう。サンクトペテルブルクで首脳会議をやりながら、ニューヨークで北朝鮮制裁決議案を採決するのだろうか。17日には胡錦濤も出席する。
米日英仏と中露の首脳が全員揃う。サミットでは北朝鮮のミサイル問題について議長総括で懸念が表明され、北朝鮮に自制を求めることが決まっている。日本は議長総括で北朝鮮に対して非難声明を出すように要求していたが、ロシア側に却下されて懸念表明に格下げされた。今回のサミットの本題はイラン核開発問題への対処であり、その場に北朝鮮のミサイル問題を無理に持ち込んでG8会議を複雑にしたくないのは米国もロシアも同じだろう。サミットと並行して国連で北朝鮮制裁決議が未調整のまま強行されるとは思えない。仮に採決されるとすれば、北朝鮮の六カ国協議復帰が確認されて、決議案が制裁決議案ではなく非難決議案に緩和された時点でのことだろう。そう考えると、中朝交渉には暫くの時間的猶予が与えられる。サミットが閉幕する17日までの一週間が交渉期間となる。で、その間にぜひ韓国政府は潘基文と宋旻淳の二人をNYに送り込んで、安保理巻き返しの多数派工作に尽力して欲しい。
昨夜のNHKのニュースでは、非常任理事国の一部に(決議案には賛成だが安保理が割れないために)中国の提案する議長声明でよいではないかという国が出てきたという情報が伝えられていた。一部の国とは、恐らく共同提案国に入ってないアフリカか南米の国だろう。李肇星が電話攻勢をかけただけでこれだけの成果が上がり始めた。巻き返しは可能だ。中韓が結束して説得して、オマーン、ガーナ、コンゴ、アルゼンチンを中立に覆せばいい。一週間あればできる。核実験なら制裁条項付きの決議案も妥当と言えるが、単なるミサイル発射のレベルで即制裁条項を付すのは適当ではない。拉致問題を抱える日本がそれを要求するのは当然だとしても、安保理の理事国がそれを多数決で決議するのは行き過ぎだ。まず何より当事国である韓国の立場を聞かなくてはいけない。六カ国協議の中の韓国と北朝鮮を除く四カ国は安保理の理事国だが、韓国は入ってない。理事国は何より韓国の意思を尊重すべきだ。
さてその韓国だが、これまでずっと盧武鉉政権を糾弾し、今回のミサイル問題でさえ日本政府の韓国政府非難に同調し、愚かにも日本の政権と右翼のサポーターとなって青瓦台批判を続けてきた売国三大紙が、ようやくここへ来て安倍晋三を中心とする日本の政権の極右体質に気づき始めたようである。朝鮮日報が7/11付で「国家としての良心を失った日本の先制攻撃論」と題して、安倍晋三や額賀福志郎や麻生太郎のミサイル基地先制攻撃論を非難する社説を書いている。記事に書いているとおりだ。日本がトマホークで北朝鮮に先制攻撃をかけた場合、北朝鮮はすぐに高射砲でソウルを火の海にする。数万の特殊部隊が地下のトンネルから駆け上がって大都市を破壊工作する。化学兵器が使われる。主要駅や繁華街で夥しい数の犠牲者が出る。それがあるから韓国は北朝鮮と戦争ができず、太陽政策の選択しかないのだ。休戦ラインから50キロしか離れてない人口1千万人のソウルを人質に取られているのである。
朝鮮日報はこれまで日本の右翼の盧武鉉攻撃に便乗して安直に政府批判をしてきた錯誤を自己批判すべきだ。経済政策批判はいい。他のどの国内政策の批判もいい。新聞が政府を批判するのは当然である。だが、日本の右翼政権の韓国政府批判に媚を売って追随するのは売国行為である。対日政策で国内を割る愚を犯してはいけない。日本に対しては韓国は常に一枚岩でなければならない。それは民族の歴史の教訓だろう。最近の韓国紙の盧武鉉政権叩きのおかげで安倍晋三と日本の右翼はすっかり増長した。このツケは大きい。災いは韓国にリターンする。一週間の国連外交空白。韓国はこの一週間が天の時である。思い切って17日に盧武鉉大統領がサンクトペテルブルクを電撃訪問するのはどうか。飛び入りでサミットにゲスト参加せよ。胡錦濤主席とプーチン大統領とブッシュ大統領と小泉首相のいるその場で五カ国首脳会議をやればいい。そこで北朝鮮経済制裁の無効性を主張し、太陽政策をオーソライズするのだ。
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