投資後、売上も順調に伸び、キャッシュも減らなくなったが、常に
営業は瀬戸際の頑張り、PVの伸び率も鈍化、という成長の踊り場
にさしかかったことがある。実際にも、自分の投資先3社の業容が
似たレベルになり、翌期の伸びが最も小さかったのは、アットマー
クアイティ(I社) だった。その際には、結果を見て場当たり的な発言
を繰り返すキャピタリストの弊害を目の当たりにしたし、CEO自ら進
退伺いをされる場面もあった。
アットマークアイティのIPOまでのプロセスで分岐点になったのは、
アイティメディアとの合併である。以前も一度検討し、自力でのIPO
を目指す決断をしたのだが、独力での成長シナリオが明確には描
けないなか、再度検討する機会が得られた。カルチャーの違いなど
当初デメリットと考えられていたこともメリットと評価できる部分があ
り、実際の執行者が前向きに取り組んだ結果、話は進展した。
結果的には、異種の組み合わせでお互いの弱みを補い、それぞれ
が今までになかった強みを獲得した。また、成長の踊り場で澱みが
発生しつつあった社内の雰囲気にも新しい緊張感が生まれた。早め
に事務所を統合しつつ、メディアの統合は行わなかったことが功を
奏し、広告主にも提供できるメニューが充実した。
合併時には、親会社の持株比率を維持する関係で、アットマークア
イティ側で株式移動を行ったが、リスクを見込んで「逃げるが勝ち」
と豪語していた方もいたそうである。しかし、実際には合併前に懸念
した共食い状態も生じることなく、順調に売上を伸ばすこととなり、
コンテンツの充実と営業マインドの醸成がはかられた。
合併時に取締役は外れたが、毎月の業況把握を行わせて頂き、
途中の紆余曲折を見聞きすることができたのは、今後に活かせる
ものと確信している。管理責任者の工藤さんもカメのように着実な
成長を遂げられ、IPO直前には発言にも自信が漲っていたのは、
本当に喜ばしいことだった。
上場承認日や上場日には、お忙しいなか、藤村さんからもお礼の
メールが届き、喜びを共有できた感じがした。忙しい時に何を行うか
は、究極の優先順位づけであり、経営者の資質を裏づけると思う。
IPO自体は、一瞬の出来事だが、そのプロセスを共有できた喜び、
そのプロセスの中で、企業とともに成長を果たした敬愛すべき個人
の営みを知る機会を得られたことは、自分自身が今後をより良く
生きていく上で欠かせないものになっている、と確信している。
2007.4.29


