日本企業の優秀さは、製造・流通現場でのブルーカラーの優秀さに由来す
ると学生時代から確信していた。ブルーカラーが優秀な分、ホワイトカラー
の生産性は低く、昼間からパチンコ屋は営業マンに占拠され、内勤の事務
員は役所の役人に過ぎなかった。最も効率の悪い重役にいたっては、重役
出勤という表現に象徴されるがごとく、上がりの役職として、過去の貢献に対
し、車や部屋があてがわれ、若年層の給与を上げられない構造の主人公と
なっていた。ITの進化によって、そういう実態が白日の下にさらされることに
なり、もともとホワイトカラーしかいない金融業などは、外資の独壇場になっ
てしまった。
先日、投資先のシステム開発会社の取締役会で、エンジニアの稼働率に関
する議論があり、創業10年目にして稼働率という考え方に初めて触れ、目か
ら鱗が落ちた感動が、その場を包んだ。大企業からすると当たり前のことも、
ベンチャー企業では感動を呼び起こすいい例である。それほど、ベンチャー
企業は経営的には原始的な場合が多く、当たり前のことが、当たり前のよう
になされていない事が多い。稼働率を考えずに受託開発しても、結局は赤字
で、社員の給料は永久に上がらない。
稼働率といっても、SEとPGでは差がある。提案書作成などがあるSEは、せい
ぜい70%なのに対して、PGは90%程度の目標値は設定できる。ただ、これは
長期雇用しているエンジニア(社員)に途切れなくジョブがある状態を想定して
おり、それは実際ありえないことである。エンジニアにとっても、ジョブが途切
れなくあると、スキルアップの時間が全く取れず、疲弊する。また、雇用調整
弁とされる外注先や派遣社員は稼働率が高く設定できる分、単金が高くても
契約可能だが、将来のPM候補生は、ジョブ以外のこともやらせるので稼働率
は低く、それが将来の肥しになる。また、開発期間が長い大型契約は、自然に
稼働率を引き上げる。このような状況を無視して(稼働率を考えず)時間管理を
して、誰がどのジョブにどの位関わったか、というデータだけで、ジョブのコスト
を算出しているのが、よちよちベンチャーの実態だろう。
2時間に10分の休憩などは、何時間はまれば、このジョブが仕上がる、という
計算にカウントされるが、全く何のジョブにも関わってない時間は考慮されず、
ジョブ単位では黒字だが、全体では低い粗利益率となり、販売管理費を負担
すると、赤字になる例が多い。ジョブ単位では黒字なので、見積りの方法も修
正されることなく、忙しいけど儲からない状態が常態化する。また、固定給の
社員としては、残業手当に象徴されるように、報酬は成果ではなく、拘束時間
で支給されることが見えている。 怠惰な様子を見せることなく、拘束時間を積
み上げるには、不要な仕事をするに限る。夜遅くまでやっていると効率悪いと
思いつつも無碍には扱えないのが人情であり、そのために企業収益が圧迫さ
れる。
さて、このような稼働率の考え方が、ホワイトカラーに関して意識されているだ
ろうか?何も考えていない企業ほど、稼働率100%を想定している。営業マンと
て、人間だから買ってくれないストレスには息抜きや休養が必須だし、内勤者
の私用メールも効率を上げるには有効であり、喫煙スペースでの井戸端会議
は、息抜きとともに情報共有を促す。業務の効率化と称して、稼働率100%を
目指すと疲弊し、稼動している時間の効率が悪くなり、余計な仕事ばかりをする
ようになる。さらに、横暴な経営者になると、稼働率150%を前提でジョブの割り
振りをし、自分はゴルフや飲み会に出かける。(もちろん会社の経費)時々帰っ
てきては、ジョブが仕上がっていない状況に激怒し、社員を無能よばわりする。
社員のモチベーションの上がらない会社の社長のやっていることは、この程度
のことであり、稼働率70%で良しとする常識が備わっていない。
よちよちベンチャーでも稼働率50%でも黒字にするのが経営者の手腕である。
社員が全員70%以上の稼働率で働き、余計な仕事をしていなければ、日々の
管理は不要である。そういう意味で、明確な目標設定は、仕事の要・不要の判
断が容易になり、無駄な仕事をしなくなり、実質的な稼働率を引き上げる。
ベンチャー企業の経営者は、自らの稼働率を上げるよう日々努力をする反面、
社員に対しては稼働率70%を上限として成果を期待すべきである。社員として
は、無駄な仕事をすることなく、稼働率50%でも報酬に見合った成果(給料の
3倍)が出せるよう、やらなくてもいいことを極力やらないよう、意識を高く保つ
必要があるだろう。営業マンであれば、顧客との商談時間が稼働率の目安と
なる。事務作業等を考慮しても、拘束時間の1/3が商談に費やされていれば、
いい状態と評価できる。ただし、茶飲み話に花が咲く営業先での時間はカウ
ント外であるが。
2005.3.20
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