- 司馬 遼太郎, 宮崎 駿, 榎本 守恵, ロナルド トビ, 田中 直毅, 大前 研一, 武村 正義
- 対談集 日本人への遺言
近頃の政局をみていますと、
出口の見えないトンネルに入ってしまって、
その中にまた無数の迷路があるように思えます。
あの暗黒の昭和10年代がやってこないことを祈ります。
226事件、軍部の台頭、政治家の暗殺、
警視庁のサボり学生の大量検挙、
枚挙にいとまがありません。歴史は繰り返すといいますが、
繰り返すのはいいことだけでいいですよね。
この4年間何もいじらず、
国の借入金だけがどんどん増加。
財政改革はまったく行われず、
公務員優遇、議員優遇に対する改革は全くありませんでした。
結局庶民に過激な税負担を求めるやり方は、
昔とかわりませんよね。
みなさんはどう思いますか?
郵政民営化はどうしても必要とは思えません。
構造的な問題です。お金の流れは変わりません。
複雑化して迷路をつくり、
行政機関の焼け太りをねらっているという意見もかなりあります。
以前の記事を再三載せたいと思います。
若き淑女が世界を、日本を変えると言うシミュレーションです。
あくまで、フィクションですが。
この国には、ある種のカンフル剤が必要なのでしょう。
司馬遼太郎さんは、
雲の上でどう見てるのでしょうか・・・。
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西暦20XX年11月。東京。
仁科は京葉線の新木場駅で北東の方角を見上げていた。
子供たちが喚声を上げている。乗降客で駅のホームはざわついている。 透き通ったセルリアンブルーの空が突然暗くなった。乗降客は東京湾の上空を指をさしながら不安そうに見つめている。
「パパ、あれ見て。すごい数。何なの?」
「しかし、ずいぶん飛んでるよな・・・」
「UFOかしら・・・」
「まさかね・・・」
「高度が高くて・・・。あっ、でもあの速さは一体・・・」
「飛行機かい?なんか丸い形してるぞ。五角形のしるしが見えるし。たぶん日本のじゃねえ。どうみても日の丸じゃねぇしなぁ・・・」
学生が尋ねた。
「じいさん、よく見えるねぇ・・・」
「前の戦争ではいつだったかな・・・東京の上空を軍部が飛行機を千機も飛ばしやがってよ・・・」
「そうだったんだ・・・」
「若いの、こうみえても、おれぁ、むかしは戦闘機のパイロットだったんだぜ。80年前も前だがな。ゼロ戦で真珠湾までいったもんじゃ・・・。ひっく・・・」
「わかった。わかった。じいさん。んもう、朝からこんなに呑んじゃってさぁ・・・」
「おめぇさん、学生さんかい。戦争なんかにいくんじゃねぇ。いくんじゃねぇよ。俺は三人の兄が学徒で南方戦線にいって死んでしまった。いいか、戦争なんかに絶対いくん・・・。ひぃっく・・・」
「わかった、わかった。じいさん。行かねぇよ」
学生はいまにも酔って倒れそうな老人を、駅の医務室へ運んでいった。老人の一世紀の歴史の皺が仁科には不気味に思えた。
「あたし怖いわ・・・」
「戦争になるのかしら?・・・」
若い女たちは身が震えている。お台場や羽田空港の一帯は夜の暗さになった。上空の無数の飛行物体で、部分日食にでも出会ったような不気味さだ。日本や世界の国々が静まりかえった。ネットのアクセスが不能になる。日頃政治に無関心な若者も、ふと自分の身が心配になってくる。
駅の職員が駆けつけた。
「駅長、電話が通じません。携帯電話も・・・。どうしたんでしょう・・・」
「いったいどうなってるんだよ・・・。俺に聞くな・・・」
「テレビもラジオも全くだめです・・・」
いつもは電車内で携帯電話と会話しているOL・サラリーマン。IT社会の恩恵で便利な生活に慣れ過ぎてしまった彼らはパニック状態になっている。この日は彼らにとって日本の全てのシステムが、一新する歴史的な一日のようだった。
仁科はいま、彼らの予告していたロードマップが現実となり、正直、顔をこわ張らせている。前日、日本政府はホワイトハウスに、日米安全保障条約破棄の一方的な通告をしたばかりだ。しかし遅すぎた。アメリカは二十一世紀はじめの頃までは、世界の保安官と経済を支配していたがその二十年後には、誰もが予想しなかった事態に見舞われていたのである。合衆国の分裂である。
日本の現政府はメルセデス嬢の率いるヤマト創世グループ(前身は昭和の初期に発足した民間の世界戦略研究所)の一部門として機能しているに過ぎなくなっている。
彼女は日本人の母とフランス人の父の間で生まれた。父方の昔を辿れば函館戦争時のフランス軍人とまでは判明している。当時フランス軍だったメルセデスの曾祖母の父は、新撰組の土方歳三や榎本武揚との交流もあったという。だが、その後彼は退役して船舶業界で世界を駆けめぐっていた。その彼が亡くなり、彼女の家族が国家規模の遺産を引き継いだ時点で、メルセデスの名は一躍世界に広まっていた。
人々は彼女がマリア像の顔に似ていることから、カソリック教会では話題になったことがある。バチカン内でも彼女の調査を出生時から水面下で進めているという。この日から日本は自力で国を守らなければならなくなった。アメリカは二十一世紀初頭の同時多発テロで世界を紛争に巻き込んでいたが、国家的な力は衰える一方であった。貿易収支の累積赤字は百年たっても返済できない額に膨れあがり、国家財政は破綻寸前であった。日本はそれまで蓄積していた外貨・貿易黒字を、アメリカの双子の赤字解消システムに組み入れられていた。米国債金融通貨制度でIMFや世界銀行を狡猾に利用していたアメリカは、すでに国家というシステムが分裂している。五十州どころか十三州まで減っている。他の州は完全に独立し、インディアン居留区は解放されていた。ネイティブアメリカンのアングロサクソンへの逆襲が始まっていた。過半数の州がネイティブインディアンのものとなった。かれらにとっては、元の姿にもどったという意識が強い。南北戦争以来のリベンジーが果たせたという見方もある。日本もそれに呼応していた。アメリカは核だけの脅しの国家という地位まで下がっていた。だが、軍事力は以前にも増して強大になっていた。
アメリカの核の傘が無くなった今、非戦などという甘い観念は捨てざるを得ない。これまで熱心にナショナリズムを唱えてきていた、マスコミ、ジャーナリスト・軍事・経済評論家たちは、いざその事態になると逃げ出してしまう。海外の特派員は、総論賛成各論反対という玉虫色の論議が、この国をここまで腐らせた原因だという。
世界の若者の右傾化が顕著になり、世紀末からの真の指導者待望論が日本の若い世代からもでてきている。勝者と敗者の確執・激しい貧富の差は対立関係を拡散させる。メルセデス嬢により現日本国憲法は新しく塗り変えられることになる。二十一紀初頭の世界同時多発テロ以来、景気も悪化の一途をたどり失業率は20%まで跳ね上がった。内閣の支持率は一桁台になっていた。
仁科の予想だとおそらく日本は何日間は無政府状態になる。彼女が東京に来るのは1週間後だが、その前に最終的な会合が函館で行われる手はずになっている。
仁科は取材で一息ついたら、急ぎ、メルセデス嬢の軍師である三咲の戦闘ヘリで函館に向かうことになっている。電車が手動で緊急停車を試みていた。中央コントロールセンターのコンピューターが制御不能になったらしい。東京湾の上空では羽田空港の管制塔の支持を待つジャンボ機が十数機旋回している。
緊急無線はしばらく使えそうなので、おそらく手動で着陸するつもりなのだろう。
彼女は数日前からネットで航空機や乗り物には乗らないよう警告していた。
これまで得体のしれない若きメルセデス嬢の警告には誰も本気にしていなかったようだ。その時がついに来たのだ。この一週間の間、仁科は側近の三咲に極秘で東京の様子を逐一報告していた。三咲は彼らでしか通話できない特殊な携帯電話を使う。普通の携帯電話は早朝から全国一斉に通話出来なくなっていた。
この日から全世界のインターネット、TV、ラジオなどありとあらゆる電波も遮断される。ニューヨークや東京、ロンドンの株式市況は一斉に停止する。すべての周回衛星は使用不能となった。スペースシャトルから見た地球は青い海と暗黒の大陸しか映らなくなっていた。海外の軍事施設には彼らから発信された強力なコンピューターウイルスで全世界で無用の長物となる。医療機関以外のすべての機器が使えなくなった。
米国も恐れるネットウイルス「ブルー・モンキー」。ネットを通していかなる軍事システムをも破壊するトロン製のソフトが完成したばかりだ。すでに核保有国は自力で核ミサイルの発射・迎撃が出来なくなっていた。ウイルスはそれを自爆させる働きも持っている。
頼れる情報源は新聞や印刷物のみとなった。メルセデス嬢をはじめとする日本とその同盟国が世界のイニシアティブを握り、六十年前の極東軍事裁判の公平な再審と国連に替わる世界平和民主政府連合の樹立に動き出した。米国の立場は危うくなっていた。そして、原爆投下担当者の関係者達と、トルーマン元大統領の正当性や彼らの無差別爆撃犯罪を、新たな国際公平裁判で時をへだてて裁かれることになった。
(世界の平和と子供たちの美しい未来。応援します。)
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