VS ラースと、その彼女 星☆☆☆
at 池袋シネリーブル

不思議な味わいの映画である。。両親の死後、他人との深い交わりを嫌い、仕事のとき以外は部屋に閉じこもりがちな主人公ラースと、彼がネット販売で購入したリアルドール(日本で言うダッチワイフ?)のビアンカの恋物語。
物を言わず、動くこともない人形のビアンカ。。人形だから当たり前なのだが。。そんなビアンカは、ラースにとっては、”最高の彼女”なのだ。なぜなら、彼女は口答えをしないし、どこにも行かない。好みも自分の望むままだ。。
しかし、周囲の人間はラースの突然の行動に戸惑いを隠せない。ラースの家の隣に住む、実の兄は精神病院に弟を入院させるべきと主張。しかし、身重の妻に「兄弟なら、まずラースの力になってあげるべき」と諭され、また精神科医の助言もあって、ビアンカを”一人の人間”として扱うことにする。
職場の同僚や、教会の信者たち、村の人々も、戸惑いつつも、ラースとビアンカの不思議なカップルを、否定せずに見守る。。それもこれも、ラースの普段の行いを知っているからこそ。人との関わりを避けてはいるが、お年寄りの対して親切だったり、子守が好きだったりと、彼の人柄は誰もが憎めない存在なのだ。。
でも・・・やっぱりビアンカは”人形”なのだ。。そして、ラースのトラウマの正体が徐々に明らかになり・・・という物語。この映画の話は、現代の日本でも実際ありそうな話ですよね。。
ただ、この話がともすればキワモノな話になりかねない題材を扱っているのに、心温まる作品に仕上がっているのは、”他人の善意によって、人は生かされている”という事実に他なりません。。
翻ってみるに、現代の日本。特に都会では、近所との繋がりや、人との関わり合いが、とんと希薄になってしまっています。そのため、少しでも変わっている者に対して、否応なしに隔離したり、差別する傾向があるような気がしてなりません。。
外国人というだけで差別したり、障害者を無視したり・・・いつから私たちは、他人を恐れ、敵と

見なすようになってしまったのでしょうか?その社会の歪が、もしかしたらあの秋葉原の痛ましい事件の、原因を産んでしまったと考えるのは、おかしいでしょうか?
この映画の登場人物たちは、ラースの行動がおかしいことに気付いています。でも、同時に彼らは、ラースが素晴らしい青年であることも知っているのです。だから、みんなは精一杯、彼の不思議な世界に付き合ってあげているのです。なんて寛容で、素敵な世界なんでしょう。。
勿論、それを作り話だからとか、映画のようには上手くいかないと言ってしまえば、それまでだけど、綺麗事だろうと、理想論だろうと、そんな世界を我々は目指すべき時に、来ていると痛感させられます。
折りしも、今週はクリスマスウィーク。何も聖夜は恋人同士だけのためにあるのではありません。親や、友だちや、ちょっとした知り合い、はたまた見ず知らずの他人でも構いません。ちょっとした親切をしてみませんか?きっと貴方の善意が、誰かの心に小さな灯りを灯すこともあるかも知れない。。反対に貴方が、誰かから勇気をもらうことだって。。いつでも人は、決して一人で生きているわけじゃない・・・そんなことを学ぶ作品です。