人生を変えるものは何だろう。
人は変わることを、ぼくは知らなかった。
まだほとんど生きてもいないのに、「人は変われない」なんて知っている気になっていた。
…無知よりも、知っていると思い込んでいることの方が恐ろしい。
本を読んでいただけで知った気になっていることの、なんて多いことだろう。
知っていることは経験することとは違う。
この手に触れ、この目で見て、この耳で聞くことをしなければ。
触れもしていない、見てもいない、聞いてもいないことを、ただ信じていることと何も変わらない気がする。
会っただけで、相手を知った気になっていることの、なんて多いことだろう。
心は目に見えないものだから、50%の情報収集力と、40%の想像力と、10%の秘密で推し量るしかない。
会っただけでは、何もわかりようがない。
わかろうとしなければ。
伝えようとしなければ。
人生を変えるものは、人との出会いであるという。
それを口にする人は、きっと人生を変える出会いをしたのだろう。
ぼくは「人は変われない」と思っていた。
でも、もしかしたら変わるのかもしれない。
時間の流れ、数々の経験、そして出会いによって。
思えば、この人と出会ったこともまた、人生を変えることになるのかもしれない。
これがただの思い込みや、恋のようなものなのだとしても、自分の中で生じている変化を、ぼくは感じ取っている。
本の中でしか起こりそうにもない物語ではなくて、今起きていることだということが、とても不思議で、驚いている。
ぼくは、今まで見えなかった景色を見、聞こえなかった音を聞き、触れられなかった世界に触れている。
そんな確かな感覚が残っている。


