TOP>2009年09月
前回のブログ、「日経MJで西武池袋店、ベニマルに学ぶ、を特集!」で、西武池袋店とヨークベニマル、イトーヨーカ堂のP/L構造を比較してみた。その結果、数字を見る限りでは、西武百貨店のP/L構造が意外に良く、原価(粗利)、経費面でも、ヨークベニマル、イトーヨーカ堂、双方に遜色のない結果であったことがわかった。それでは、B/S面ではどうかを改めて、今度はヨークベニマルと西武百貨店に加え、そうご、三越伊勢丹を含めて比較してみたい。比較数字は、2009年度の本決算数字である。
まず、前回のブログの結論、P/L構造の違いであるが、改めて4社を見てみたい。原価YB75.7%、西武76.7%、そごう76.1%、三越伊勢丹72.1%であり、結果、売上総利益(粗利)は、YB24.3%、西武23.3%、そごう23.9%、三越伊勢丹27.9%である。西武、そごうはほぼ同じ数字であり、ヨークベニマルもやや高いが、西武、そごうに近い数字である。三越伊勢丹はこの3社と比べ、約3.0ポイント高く、比較的、原価が低く、高粗利であるといえよう。食品スーパーマーケット業界でいえば、ちょうど、ヤマザワ、マルエツ、カスミとほぼ同じ原価、粗利構造である。
次に、経費を見てみると、YB24.0%、西武22.3%、そごう22.8%、三越伊勢丹26.5%であり、ここでも、西武、そごうは良く似た数字であり、ヨークベニマルがやや高めであり、三越伊勢丹はそれ以上に経費比率が高く、この4社の中では最も経費比率が高い。結果、差し引き、マーチャンダイジング力であるが、YB0.3%、西武1.0%、そごう1.1%、三越伊勢丹1.4%であり、三越伊勢丹が最も高く、ついで、そごう、西武となり、ヨークベニマルが最も低い数字となった。これに、不動産収入等のその他営業収入がのり、営業利益となるが、その、その他営業収入を見ると、YB3.2%、西武1.5%、そごう1.4%、三越伊勢丹0.0%であるので、結果、営業利益はYB3.5%、西武2.5%、そごう2.5%、三越伊勢丹1.4%となり、ヨークベニマルが最も高く、ついで、西武、そごうが並び、三越伊勢丹が最も低い数字となる。原価(粗利)、経費では、三越伊勢丹の数字が最も良い数字であったが、その他営業収入を足すとヨークベニマルが最も良い数字となった。ただ、原価(粗利)、経費では食品スーパーマーケットも百貨店も極端な差がなく、こと、P/L構造は良く似ているといえよう。
そこで、次にB/S構造を見てみたい。まず、純資産比率であるが、YB79.0%、西武11.1%、そごう21.6%、三越伊勢丹36.2%という状況であり、ここで、ヨークベニマルと百貨店各社との間で決定的な差が出たといえよう。P/L構造ではさほど差がなかったが、B/S、純資産比率では、大きな数字の開きがあり、三越伊勢丹がやや良い数字であるが、それでも、40%を割っており、西武に関しては約10%と厳しい数字である。これを見る限り、百貨店は負債に大きく依存するB/S構造であり、逆に、ヨークベニマルは負債に依存せず、自らの資本で自由に経営活動ができるB/S構造であるといえよう。
では、その負債の状況であるが、有利子負債を総資産対比で見ると、YB0.0%、西武67.8%、そごう55.2%、三越伊勢丹17.2%であり、西武、そごうは極端に有利子負債が多く、経営を圧迫しているといえよう。これに対し、三越伊勢丹はさほど有利子負債は負担にはなっておらず、食品スーパーマーケット上場企業の平均が約30%であるので、食品スーパーマーケット業界よりも軽い有利子負債の比率である。ちなみに、純資産比率であるが、三越伊勢丹の36.2%は、食品スーパーマーケット上場企業の平均が約40%であるので、食品スーパーマーケットの経営構造と良く似ているといえよう。
こう見ると、西武、そごうは有利子負債が経営に重くのしかかり、苦しいB/S構造であるが、三越伊勢丹は食品スーパーマーケット上場企業の平均にほぼ近い数字であり、数字を見る限りでは、全く見分けがつかないくらい、食品スーパーマーケットと良く似たB/S構造といえよう。これに対してヨークベニマルは、この4社の中では突出したB/S構造であり、食品スーパーマーケット上場企業の中でも、トップクラスのB/S構造であり、極めて健全な財務状況である。
では、もう一方の資産面も見てみたい。資産の中でも店舗関連の有形固定資産の総資産に占める割合を見てみると、YB42.6%、西武56.3%、そごう53.8%、三越伊勢丹58.0%であり、百貨店3社は良く似た構造であり、約60%弱となる。これに対して、ヨークベニマルは約40%であり、ここが百貨店と大きな違いといえ、都心部に重装構造の建物で商売している百貨店と郊外で軽装構造の建物で商売している食品スーパーマーケットとの違いがあるといえよう。したがって、三越伊勢丹も含め、百貨店3社は純資産の範囲内では治まっておらず、負債に依存した店舗関連の資産であるといえ、特に、西武、そごうは、このB/S構造を今後、どう改善するかが、経営改革の大きな課題といえよう。
このように、ヨークベニマルと百貨店3社のP/L、B/S構造を比較してみると、P/Lはほとんど大きな差がないが、B/S構造に大きな差があり、特に、西武、そうごは、負債に大きく依存する経営構造となっており、今後、ヨークベニマル等の支援を得て、さらに、収益を引き上げ、B/Sの改善につなげられるかが、課題といえよう。西武百貨店が今後、どのように変わるか、その動向に注目である。
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9/28の日経MJで、西武池袋店の特集が組まれた。見出しは、「西武池袋、覚悟の船出」、「ベニマルに学ぶ新百貨店モデル、意識も改革、従業員にセブン流浸透」、「百貨店価格と決別、PB衣料、価格4割安く」である。記事を読むと、そごう・西武が、これまで否定的だったセブン&アイHグループとの連携強化に舵を切り、PB商品の開発などで新しい百貨店ビジネスモデルの構築を急ぐという内容である。
そのさきがけとなったのが、ヨークベニマルによる食品売場の活性化支援であるという。記事の冒頭が、「サンマ一尾100円、・・」という書き出しではじまるが、西武池袋店の鮮魚売場が急激に変化し、従来の高級感中心の商品だけではなく、割安品を展開したり、魚とポン酢とのクロスマーチャンダイジングを実施したりと、食品スーパーマーケットの鮮魚のマーチャンダイジングが、西武百貨店の鮮魚売場のテナント、魚喜、魚耕でも実施されてはじめたという内容である。また、鮮魚売場だけでなく、生鮮食品全体も急激に食品スーパーマーケットのノウハウが導入され、変わりつつあるという。
そのノウハウを伝授したのが、ヨークベニマルとイトーヨーカ堂であるという。特に、ヨークベニマルの貢献度は大きいとのことで、各テナントの店長自らヨークベニマルの店頭などで研修を積み、その成果を売場に活かしはじめたという。結果、生鮮売場全体の売上高は3月以降、前年同月比で1割以上伸びているとのことである。また、ヨークベニマルの大高社長が指揮をとっているPB、セブンプレミアムも、この8月には西武池袋店内に700品目を集めた本格的なコーナーができあがったという。
これ以外にも、セブン&アイHのグループをあげて、来春にはグループ企業の「赤ちゃん本舗」やドラックストアの「アインズ&トルペ」等の専門店も西武池袋百貨店に入る予定であるという。特に、今回は約30年ぶりに300億円に上る改装に着手しており、内、200億円を来年秋までにつぎ込むとのことで、ソフトだけでなく、ハード面でも西武池袋店が新たなビジネスモデルづくりに挑戦するとのことである。
また、衣料品でも新たなビジネスモデルづくりが始まっているとのことで、9/9に婦人衣料のPB、「リミテッドエディションbyアツロウタヤマ」を新規投入したという。鮮魚の「サンマ一尾100円、・・」の衣料版ともいえ、4,800円のデニムパンツ、5,800円のカットソー、6,300円のスカート、・・等、従来の百貨店の価格よりも約4割安い割安感があるという。すでに、目標の3倍の売上で推移しているとのことである。これだけの割安感を出せた背景には、原価を下げるために、中国の工場を活用したり、原料調達に踏み込んだり、完全買い取りに移行したりと、ユニクロ等のSPA的な手法が随所に取り入れられているという。
このように、日経MJによれば、西武池袋店がセブン&アイHグループの総力を挙げて、脱百貨店の新たなビジネスモデルに取り組み始めたとのことであるが、ビジネスモデルを変えるには、売場、商品政策だけでなく、P/L、B/S構造の変革も伴うことが必要といえる。そこで、現状の西武百貨店、ヨークベニマル、そして、イトーヨーカ堂の財務構造を比較してみたい。2009年2月期本決算の数字を見ると、原価、西武76.7%、YB75.7%、IY74.4%であり、原価は極端な差がないといえる。結果、売上総利益は、西武23.3%、YB24.3%、IY25.6%となる。意外に、西武百貨店の売上総利益、粗利が最も低い数字である。
ついで、経費であるが、西武22.3%、YB24.0%、IY26.7%であり、ここでも意外に西武百貨店の経費比率が最も低い数字である。ここから、差し引き、マーチャンダイジング力であるが、西武1.0%、YB0.3%、IY-1.1%と、何と、イトーヨーカ堂のみマイナスであり、しかも、西武百貨店が最も高い数字となった。西武百貨店は粗利も低く、経費も低く、マーチャンダイジング構造は、この数字を見る限り、3業態の中では最も良い数字である。そして、営業利益であるが、これに、その他営業収入が加わるので、その他営業収入を見ると、西武1.5%、YB3.2%、IY1.8%となり、結果、営業利益は西武2.5%、YB3.5%、IY0.7%という数字である。マーチャンダイジング力では西武百貨店の方が良かったが、その他営業収入でヨークベニマルが抜き去り、結果、営業利益ではヨークベニマルが1.0%の差を付け、トップとなり、ついで、西武百貨店、イトーヨーカ堂となる。
こう見ると、ことP/L構造では西武百貨店はヨークベニマル、イトーヨカ堂と比べ、むしろ、優位性があるといえ、粗利が少し低いのが気になるが、それ以上に経費が低いため、利益もしっかり確保しており、その他営業収入がそのまま営業利益に加算され、利益も確保できているといえる。したがって、今回の西武池袋店のセブン&アイHグループをあげての新たなビジネスモデルづくりは、ことP/Lの観点から見る限りでは、売上高を引き上げ、原価を下げ、結果、粗利を引き上げることが目的といえ、現状の23.3%の西武百貨店の粗利をどこまで改善し、結果、営業利益2.5%をどこまで引き上げられるかにあるといえよう。なお、B/S構造に関しては、稿を改めて、取り上げてみたい。
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