ビジネスにおいては、「戦術」という用語はあまり使われませんが、「戦略」という言葉はしばしば用いられます。
ゼネコンの営業でも例外ではありません。
企業の営業戦略について考えると、この先5年10年の長きにわたり安定的な受注・売上・利益を確保するために、何をなすべきか、という点が重要なポイントになります。
ところが、ゼネコンが「戦略」あるいは「戦略的」という用語を使うとき、それは大型赤字プロジェクトを受注することのみを意味しがちである気がします。
営業の責任者が経営者に対して、
「このビッグプロジェクトは、戦略的に受注することにより」
と言ってから、次のように続けます。
「我が社のモニュメントになります」
「今年の受注高目標を達成できます」
「○○社(従来顧客名)の信頼を維持でき、将来的にもプラスです」
「××社(新規顧客名)の信頼を勝ち取り、他社の牙城を突き崩しました」
・・・等々
ではそこに、利益に関する配慮はあるのでしょうか?
得意先に営業行為を仕掛けるにあたって、最も押さえておくべき事項は“利益の作り込み”です。
大手ゼネコンが受注する都心のビッグプロジェクトの損益が、軒並み大赤字という実態を聞くにつけ、発注者から完全に足元を見られているのではないかという気がしてなりません。
一方でゼネコン側は、あまりにもガードが甘い。
そして、残念ながらゼネコン側の脇の甘さの方が、むしろ大きな問題なのです。
なぜこのような問題提起をするのか。
それは、かくいう びに自身がゼネコン営業の最前線に居て、業界内あるいは会社内部が抱える問題の深刻さに現在直面しているからです。
ただ、軽々しく“業界全体の問題である”と言い切れないのも事実。
と言いますのは、びにが直面する“問題をはらんだ事態”というのが、同じ会社の他のプロジェクトあるいは他社のプロジェクトに当てはまるかどうかまで確認できませんので、ここはあくまで びに個人の“想像”ということにして、この“問題”について話を進めます。
営業活動を進めるにあたって、顧客対応のポイントは大きく2つ。
・精度の高い情報収集活動を進め、顧客ニーズを的確に把握することが必要であり、
更にそのニーズに対して
・顧客に高い満足度を与えられる協力をすることが不可欠です。
こうした営業活動が、後々発注者から「あなたのところを軽々しく切る訳には行きません」と言わしめることに繋がるのです。
ともすると、
「見積内訳の内容があいまいだから、その分いい加減に見積もっているだろう」
「入札にすればいくらでも安く受注する業者がいるだろう」
などと、今どきの発注者は安易に考えがちです。
しかしながらゼネコンが
真に発注者の立場に立ってプロジェクトを進めていれば、
そしてそのことを発注者自身が深く恩義に感じてさえいれば、
そう易々と他のゼネコンに依頼することなど、常識的には考えにくいものです。
(これは発注者にもよるので一概には決められませんが、あくまでも人情として)
さて、こうして発注者との間に良好な関係が築かれたとしても、ゼネコンは冷静さを失ってはいけません。
もっとはっきり言いますと、発注者に甘えてはいけません。
ゼネコンは、発注者と「良好な関係」を築くことさえ出来れば、それで目的が達成されたと勘違いしがちです。
そうではありません。
これがビジネスであることを忘れてはならないのです。
ビジネスとは、仕事して、それに対する対価をもらうことです。
そのためには“約束”(「契約」と置き換えてもよい)をしなければなりませんが、それがあまりにも不得意なのが、ゼネコンです。
「顧客のために」とお手伝いして、例えば設計協力・技術検討をして、500億円の見積が上がったとします。
それに対して発注者から「予算が足りないから400億でやってくれ」とお願いされた場合、断ることが出来ないのがゼネコン。
正当な対価のことを考えないで、やみくもに突っ走り、テキトーに約束してしまって自ら墓穴を掘るのがゼネコン。
5億・10億のプロジェクトならまだしも、数十億・数百億プロジェクトとなった場合、あるいは特別な意義あるプロジェクトの場合を想定すると、そう簡単に降りられるものではありません。
テキトーな約束が、億単位、ときに数十億もの赤字を生んでしまう。
実に恐ろしい事態です。
また別の観点からすると、ゼネコン側はそれなりの技術検討・設計応援・見積作業等を行い、相当な人材・保有技術等の経営資源の先行投資を行っています。
おそらく億単位の先行投資です。
かくして、「せっかくここまでやって来たのだから・・」と、引くに引けない状況になる訳です。
結果、大赤字で受注し、工期中の追加工事受注に望みを託すものの、しょせんは焼け石に水、最終的に大型欠損(数億から数十億規模の大赤字)での竣工引渡しを迎える訳です。
なぜ、こんなことになってしまうのでしょうか。
また、どうすればこうした事態を防ぐことができるのでしょうか。
簡単に言えば、プロジェクトのコントロールが出来ていないから、このようなブザマな事態に陥るのです。
受注前・契約時・工期中いずれにおいても、歯止めをかけるポイントは何度かあったはずです。
今回のテーマは営業なので、営業行為に絞り受注前の問題に焦点を当てます。
上の例で言いますと、「冷静さを失った」時点が地獄の淵への第一歩です。
1)社内にあっては「利益の作り込み」
2)顧客に対しては「出来る限りニーズに応えること」
この二つのバランスこそゼネコン営業のパフォーマンス(基本性能あるいは能力)と言えます。
ゼネコン営業は歴史的に、建築を知らない営業マンが少なくありません。
そういう人達は、「得意先ニーズ」の的確な把握も出来なければ、「利益」の源泉がどこにあるのかという認識も皆無です。
・会社から経費を預かり、客や設計のセンセイをゴルフや飲食店に接待する
・顧客のキーマンと良好な関係をつくり、人脈を構築する
ということだけがゼネコンの営業行為だと教えられ、実践してきたのです。
そして今だに、その方法しか知りません。
建築を知らずとも営業できると信じるゼネコン営業マンは、上記の
1)利益の作り込み
2)出来る限り顧客ニーズに応えること
という二つのポイントの具体的な内容すら理解しようとしない傾向があります。
たまたま判りやすいので「営業」を例として挙げましたが、これは営業マンだけの問題ではありません。
組織の問題です。
営業部門がダメなら他の部門(例えば生産部門や設計部門等)が補完すればいいのです。
そしてそれが出来ないということは、経営者の問題でもあるのです。
なぜなら、そういうアンバランスな営業行為を許してきているからです。
ということは、突き詰めると会社全体の問題であり、もしこれが数多くのゼネコンに当てはまるのであれば、業界全体の問題ということにもなります。
さて、締めくくりです。
冒頭で「戦略」と「戦術」の違いについて説明しました。
ビジネスにおいて「戦略」という用語がしばしば使われますが、「戦術」はあまり用いられないことも述べました。
そしてゼネコンにおける「戦略」とは、ビッグプロジェクトまたは世間の注目を集めるプロジェクトの受注に対する判断においてのみ使われ、それは大赤字工事の受注を意味するものだとも述べました。
これに対して後段で述べた営業力のポイント1)2)は、言わば「戦術」です。
今回最も言いたいことなので三たび述べます。
1)利益の作り込み
2)出来る限り顧客ニーズに応えること
(この二つのバランスこそ営業のパフォーマンスである)
ここに、ゼネコンは「戦略」を語りながら「戦術」を疎かにしているという構図がはっきりと見て取れる訳です。
戦術なくして戦略なし
前々々首相が好んで使いそうな言葉ですが、これを本日の結論としましょう。
・・・なお本日の記事は、びにの会社の実務に密接に関係する話でもあるので、微妙な表現が多くなり、読みづらい点もあったかと存じます。
雑文お許し下さい。
今日は一体何位?・・・も、もしかして20位台に乗っちゃったかな?
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