f91272e0.jpg そのラブシーンの激しさだけが喧伝されている感のある「ラスト、コーション」(アン・リー監督)をようやく見ることができた。Last caution(最後の警告) とてっきり思っていたが、Lust,caution(肉欲、警告)なんだ、とオープニングで認識をあらたにした。まさに原題の「色、戒」だな。この映画、昨年のヴェネチア映画祭で金獅子賞を受けているんですね。見た後、そうだったのか、と思った次第(最近映画に不熱心なことがばれる)。それはどうでもいいのだが、前作の「ブロークバックマウンテン」にも「やられた」が、アン・リーという途方もない鬼才にまず恐れおののく。小品としての楽しさ、洒脱さにあふれていた「ウェディング・バンケット」、「恋人たちの食卓」のころには想像もできなかった、遠い遠い世界に飛翔してしまった人。18世紀イギリスを舞台にした「いつか晴れた日に」(エマ・トンプソン脚本、主演、95年)あたりから、アン・リーの「冒険」が始まったと思う。アジア人というある種の制約から解き放たれ、次には南北戦争を題材にした「楽園をください」、そして「グリーン・デステニー」、「ブロークバックマウンテン」と続く。テーマの選び方、切り口が多彩すぎる。今回もあえて、抗日の戦いを極限の性愛とともに描くという冒険をして、見事に成功している。その限界の見えない豊かな才能曼荼羅に、まったく関係ない分野で生きる私でさえ嫉妬を抱く。

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