TOP>ベニシオ・デル・トロ

2012年02月07日

シチリア!シチリア!

シチリアを舞台に、牛飼いの次男として生まれた
ペッピーノの半生を描いた作品。
たぶん、ペッピーノはトルナトーレ監督の
父親がモデルで、息子のピエトロが
監督なのかな?
2時間半と長め作品ですが、
山場がほとんどないので
ちょっと睡魔を誘います。

■お気に入り度 ♥♥♡

(ルナのひとりごと)
共産主義との関係が難しすぎる・・・。

2012年01月28日

ALWAYS三丁目の夕日'64・・・・・評価額1650円

理想の昭和に逢える街、それが夕日町三丁目。

世界の映画史に類を見ないノスタルジックテーマパーク映画、「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズ第三作。
昭和33年の東京下町・夕日町三丁目を舞台に、建設中の東京タワーが戦後日本の復興と希望を象徴していた第一作、翌昭和34年の三丁目の人々のその後を描いた第二作
あれから早5年が過ぎ、映画の中でも東京オリンピックの到来と共に、いよいよ昭和30年代が終わりを告げ、作品と共に成長してきた登場人物たちの人生にも、大きな転機が訪れようとしている。
日本人の郷愁を誘う昭和のビジュアルは相変わらず出色の出来だが、世界観の定着と共に見世物的興味は薄れ、逆に物語は熟れてきて三丁目の住人たちの人生劇場は観応え十分。
また三作目にして現代へ向けた視点を持ったのも特徴で、内容的にはシリーズベストの仕上がりと言える。

1964年10月。
東京オリンピック開幕を控え、日本中が熱気に包まれている頃、夕日町三丁目では人々が多少浮き足立ちながらもいつも通りの生活を営んでいる。
小説家の茶川(吉岡秀隆)と結婚したヒロミ(小雪)のお腹には新しい命が宿り、高校生になった淳之介(須賀健太)は東大を狙えるほどに成績優秀だが、茶川の顔色は晴れない。
連載中の雑誌に、新進気鋭のライバルが登場し、人気の低迷している茶川の小説は打ち切り寸前なのだ。
淳之介は、そんな茶川の期待に応えようと、東大を目指して受験勉強中だが、内心では小説家になる夢を捨てられないでいる。
一方、鈴木オートに勤める六子(堀北真希)は、ふとした切っ掛けで出会った医師・菊池(森山未來)にほのかな恋心を抱くのだが・・・


第一作の時にも書いたが、私はこの作品の企画は原恵一監督の大傑作、「クレヨンしんちゃん 嵐をよぶモーレツ!大人帝国の逆襲」にインスパイアされて生まれたのではないかと思っている。
あの映画は、過去にこそ理想の世界があったと考える一団が、懐かしの昭和レトロを再現したテーマパークを作り、洗脳された春日部の大人たちとともに引き篭もってしまい、外の世界に取り残されたしんちゃんたちが、過去の幻影から未来を取り戻すべく奮闘する物語だった。
昭和という時代から、貧困や公害、治安の悪さなどのネガティブな部分を極力排除し、あくまでも美しくノスタルジックな思い出だけを抽出した理想郷を作るというアイディアは、言わば映像で観る昭和テーマパークという第一作のコンセプトに共通する。
実際、VFXで作り出された昭和33年の風景は、日本人の心の琴線に触れるとても魅力的な物だった。

だが、第一作は映像の見事さに比較して、明らかに物語が負けていたのも事実。
おまけに夕日町三丁目という舞台の縛りがある以上、世界観だけで映画を引っ張るには限界があるのは明らかである。
もちろん、そんな事は作り手も十分承知していたのだろうが、このシリーズは二作目、三作目と尻上がりに物語の完成度を高めてきた。
すっかり世界に馴染んだレギュラーの登場人物を使って、本作で山崎貴監督が描くのは「幸せってなんだろう?」というシンプルだがなかなかに深いテーマ。
今回は、鈴木オートに勤める六子の恋と、茶川家で育った淳之介の夢と現実という、物語を貫く二本のバックボーンを通して、それぞれの家族が本当の幸せを掴むために葛藤する姿が描かれる。

六子が恋する医師・菊池は、一見するとお洒落な遊び人だが、実は勤務先に睨まれながらも貧困層への無償医療のボランティアに取り組み、将来は故郷の寒村の診療所を継ごうとしている誠実な青年だ。
医師という肩書きはあっても、もし彼と結婚すれば、都会で裕福な生活をする道は閉ざされてしまう。
また血の繋がらない茶川に育てられた淳之介は、小説家になりたいと言う自分自身の夢と、彼に東大に進学して欲しいと言う茶川の願いとの狭間で悩む。
実質ヒロミのヒモの様な生活をしている茶川は、淳之介に自分の轍を踏ませたくないと言うのだが、それは淳之介にとっては憧れていた小説家としての茶川の自己否定に見える。
一体、人はどう生きれば幸せになれるのか。
山崎貴と古沢良太の脚本は、前作以上に練りこまれており、今まで描かれなかった茶川と父とのエピソードが、淳之介に対するある行動と繋がるなど、物語の伏線は丁寧に張り巡らされ、人間ドラマとしての仕上がりも上々。
それぞれの内面の葛藤が物語のテーマに収束する手際も良い。

本作の描く1964年は、高度成長期のど真中。
この国の社会が、生活が、そして何よりも人々の価値観が大きく変わった大変革期であり、東京オリンピックの開催や、東海道新幹線の開業があったこの年は、なるほど一つの時代を象徴するに相応しい。
日本人は、その日その日を必死に生きる戦後の貧さから解放され、将来を見据える余裕を持った事によって、物質的な豊かさと心の豊かさの分岐点に差し掛かったのである。
「幸せってなんでしょうなあ?」と問いかける、三浦友和演じる町医者の宅間先生の言葉がこの映画のキモだ。
みんなが上ばっかり見てる時代。
しかし幸せになるとは、お金持ちになるとか、出世するとか、そういう物質的な事だけなのだろうか。
山崎監督は、1964年の三丁目の人々を通して、この単純だが簡単ではない問いを現代の我々にも投げかける。

この時代があって、今がある。
真っ赤な夕日は48年前と変わらないとしても、他はどうか。
果たして日本人は、今まで本当に幸せになる道を選択してきたのだろうか。
見世物的昭和テーマパークだった第一作、ビジュアル中心から物語重視にシフトし、登場人物に血を通わせた第二作を経て、このシリーズは遂に現代から過去への一方的ノスタルジーを超えて、過去から現代へと通じるクリティカルな双方向性を獲得した。
山崎貴監督作品としても、ベストの出来栄えと言っても良いのではないだろうか。
噂によれば、第四作の舞台となるのは大阪万博のあった1970年だとか。
なるほど、1973年のオイルショックによって高度成長期が終わりを告げる直前にして、昭和レトロという括りからすると、ギリギリの時代であり、おそらくは最終作となるのだろう。
今まで劇中での経過時間と現実での経過時間を殆ど合わせてきたことからすると、制作されるのは5年後?
果たしてその時我々は、どの様な感慨を持って郷愁の昭和を眺める事になるのだろうか。

今回は、平成に蘇った昭和レトロの代表格、「ハイボール」をチョイス。
元々は昭和30年代に生まれたトリスバーの主力商品として、トリスウィスキーのハイボールが流行った事から日本で広まった。
私が酒を飲み始めた頃には、既にレトロなオヤジの飲み物だったが、本作にも出演している小雪のCMで、再び人気に火がつきリバイバルブーム。
冷蔵庫でキンキンに冷やしたウィスキーとソーダを1:3の割合で氷を入れたグラスに注ぐ。
泡立てず、マドラーでスッと一回だけ混ぜる。
お好みでレモンピールで香り付けすると、よりスッキリとした印象になる。

ランキングバナー 
記事が気に入ったらクリックしてね

こちらもお願い



2012年01月25日

古今東西デュエットの名曲ベスト5(わたしの独断と偏見)

 男女2人で歌うデュエットが好きな人も多いでしょう。わたしは、カラオケでデュエットしたことがほとんどありませんが、このYOU TUBEシリーズで、数々のデュエットを聴くうち古今東西のデュエットの名曲について思いをめぐらしたくなりました。以下、わたしの趣味、独断と偏見の世界です。

 わたしの選ぶベスト5。日本では、裕次郎の「銀恋(銀座の恋の物語)」など有名な曲がたくさんありますが、わたしは裕次郎と浅丘ルリ子の「夕陽の丘」をまず筆頭に挙げます。昭和38年(1963年)の歌で、戦争の色が濃く残っている歌詞ですが、この曲の哀調を帯びたメロディーにひかれます。歌詞でも「バスの車掌の襟ボクロ、別れた人に生き写し」なんていいですね。「真菰の葦の」というところもいい。この映像にはなぜか、浅丘ルリ子ではなく、八代亜紀の名前が出てきて、笑ってしまいますが。浅丘はうまくないけど、薄幸な女をうまく表現しています。
 
 日本の近年の曲では、稲垣潤一と相川七瀬の「愛が止まらない」を挙げます。ちょっとドラマチックな仕立ての映像もなかなかいいが、2人の声質がうまくかみ合っていると思います。仲良く2人が並ぶのも悪くありませんが、こういう風に2人が別々の方向を向いて歌い、慣れ合っていないようなものもなかなかいいです。稲垣の高く澄んだ声がわたしは好きです。相川七瀬もなかなかチャーミング。(稲垣は小柳ゆきとデュエットした「悲しみがとまらない」の方が高評価のようだが、わたしは相川とのデュエットにこだわる)

  海外に目を転じますと、まずサラ・ブライトマンとホセ・カレーラスによる「Amigos Para Siempre」が浮かんできます。スペイン語で、永遠の友、という意味だそうです。いい曲です。イントロから心が高鳴ります。あまりにも美しい2人の声。声質もドンピシャという感じです。2人の表情もなかなかいい。記憶に間違いがなければ、1992年バルセロナ五輪の閉会式で歌われたと思います。すごく盛り上がったのではないでしょうか。そういえば、カレーラスの白血病は完全に治ったのでしょうか。五輪の時、「完全復活」と言われ、もう20年もたつんですからね。

 セリーヌ・ディオンとアンドレア・ボッチェリの「The Prayer」も素晴らしい曲です。ボストンでのライブから採ったもので、冒頭、ディオンの語りが入ります。「素敵なデュエット曲はたくやってきたが、これもその一つ」と言っています。ボッチェリの甘い声、ディオンの硬質の声、見事に絡みます。デュエットの成功典型例とでも言えましょうか。カレーラスもそうですが、オペラ歌手がこういったポピュラーな曲を歌うのもいいもんです。

 ベスト5の最後の曲になりました。これも大好きな曲です。やはりイントロにしびれます。メアリー・J・ブライジとロックバンド「U2」のボーカル担当ボノによる「One」です。これは掛け合いが素晴らしい。まずボノが歌いあげ、途中から、ブライジの声も混じり、ボノの「メアリー」という声かけで一気にブライジが歌います。曲の美しさは特筆すべきものです。以上、いかがでしたか。1曲でも気に入っていただければ嬉しいです。できればコメントをお願いします。この5曲の選曲について。

 次点は、以前にも書きました都はるみと岡千秋の「浪花恋しぐれ」。本当は、岡がピアノを弾きながら歌っていて、そこに、はるみが寄り添っていくものがよかったのですが、(YOU TUBEではよくあることですが)削除されてしまいました。今回リンクした映像は相当古いものでしょう。司会の徳光和夫の若いこと!今回の映像は都も岡も若過ぎて、ちょっと物足りない。味わいが足りない。なので次点。ピアノ・バージョンならベスト5に入れたかった。

 読んで頂き、ありがとうございました。この緑バナーをポチっとクリックして、応援してくださると、うれしいです。ランキング画面に飛びます。ranking


2012年01月24日

ヒミズ(PG-12)


伝説のhiropoo映画日記

                                                          

2011・邦画     ★★★☆☆(3.6)

                                  

監督:園子温

出演:染谷将太  二階堂ふみ  渡辺哲  諏訪太朗  川屋せっちん  吹越満  神楽坂恵  光石研

                                   

                                          

『恋の罪』などの鬼才園子温が監督を務め、古谷実原作の人気漫画を映画化した衝撃作。

                                                   

ごく平凡な15歳の少年と少女の運命が、ある事件をきっかけに激変する過程を園監督ならではの手法で描き出す。

                                                    

主人公に染谷将太、ヒロインに二階堂ふみら若手実力派を起用。

                                                

自身も原作のファンだという園監督が創造する新たなる人間の心の闇から目が離せない。
(シネマトゥデイより抜粋)

                                           

                                            

                                                  

ブタ  タイトルの「ヒミズ」とは(日不見、日見ず )、トガリネズミ目モグラ科に分類される哺乳類。

      

      頭胴長が89-104mm、尾長が27-38mm、後足長が13.8-16mm、体重が14.5-25.5gになる。

      いわゆるモグラに比べると小型で、長い尾をもつ。

      モグラによく似ているが、土を掘り進むために使う前足が小さい。

      体毛は背面が黒色か黒褐色で光沢がある。腹面はやや淡色になる。

      尾は太く棍棒状で頭胴長の1/3の長さがあり、先端部には比較的長いブラシ状の毛があるが、

      根本はピンク色の皮膚が露出する。なお、

      尾骨はたがいに癒着し、1本の骨のようになっている。上顎の第1切歯は非常に大きく、先端が尖る。

      <Wikipediaより>


伝説のhiropoo映画日記

      とまぁ、タイトルの説明はこんぐらいにして…、監督初の「コミックス」の映画化。

      原作の方は、古谷実氏の作品と聞いてもピンとこなかったが「行け!稲中卓球部」の作者と聞くと

      分かるのでは?


伝説のhiropoo映画日記

                                                  

        原作の方は未読です。

                                        

        解説にはあるのだが、「ごく平凡な…」と、ところがスクリーンの中の2人の家庭は全く普通ではない。

        正しく書くと「一見すると、ごく平凡な…」であろうね。

                                       

        けれども、実際には「普通」なんてものに「線」引きは出来ない。

        それは人それぞれの様々な「価値観」であったり「感覚」であったり「思い込み」等があったりするから…。

                                                    

        ヴェネチア国際映画祭で、主役の若き2人がマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞したそう。

        其れは目出度い事である。

                                              

        が、私は主役の2人の作品を見ている訳ではないけれど染谷氏に関しては、何時もながらのと言う感じを

        覚えたし、二階堂氏に関しては、なぁ~~んかどうみても「宮崎あおい」氏に見えて仕方なかった。

                                                     

                                                    

        若い2人以外は、監督のお気に入りの常連メンバーが、其処此処に出演している。

        その辺も、若い2人が主人公の青春作品なのに、どうも新鮮さを欠いてしまった気がしたんだけれど。

                                     

                                      

        そんな中で、「渡辺哲」氏は良かったなぁ~。って、そんな事を書いているレヴューは私位でしょね。

        原作はチョッと読んでみたい気がするけれどもな。

                

                                                      

        あの震災後の様子を何度となく映し出すのだけれど、「忘れない」と言う意味では強烈な映像では

        あるのだが、本作に必要なのか?

                                       

        私はいらなかったと思うんだがな。(と、心の中の事を書き出すときっと止まらなくなるだろうあせる

                                        

        

                             

                       

                                           

                                   

                                        


にほんブログ村 映画ブログへ ランキングに参加しています。←こんな状態でもポチッとなが頂けると、嬉しくて涙ダラダララブラブ
にほんブログ村

2012年01月14日

哀しき獣・・・・・評価額1600円

クソ親父、駆ける。

2009年に公開された途方もなく恐ろしいスリラー、「チェイサー」で鮮烈なデビューを飾った韓国の俊英、ナ・ホンジン監督の待望の第二作である。
借金苦から殺人を請け負ってしまった一人の男が、予期せぬ犯罪と暴力の連鎖に巻き込まれて行く。
腹に一物ある多くの登場人物が入り乱れ、韓国の夜を縦横無尽に疾走する、怒濤のノンストップ・クライムアクションだ。
物語が複雑な分、とっ散らかった部分が多いのは残念だが、140分の長尺を一気に見せ切る演出力はやはりホンモノ、圧巻である。

中国とロシア、北朝鮮の国境の中国側に位置する、吉林省延辺朝鮮族自治州。
朝鮮族のタクシー運転手のグナム(ハ・ジョンウ)は、妻を韓国に出稼ぎに出すために作った6万元の借金に苦しんでいる。
借金取りに追われ、賭け麻雀に手を出すも、事態は悪化するばかりで、更には妻からの音信も途絶えてしまう。
そんな時、ヤクザのミョン(キム・ユンソク)に声をかけられたグナムは、韓国へ行ってある人物を殺したら借金を帳消しにする、と持ちかけられる。
グナムは、悩んだ末に借金返済と行方不明の妻を探すため、密航船で韓国に向かうのだが・・・


上映中トイレ厳禁。
ちょっと油断すると、驚速で展開する物語から置いていかれてしまう。
全体は「タクシー運転手」「殺人者」「朝鮮族」「黄海」の章題を持つ四章構成で、「黄海」はそのまま原題にもなっている。
中国で暮らす主人公が、幼い頃に見た狂犬病の犬の思い出を語る冒頭のモノローグは、その後の物語の流れ行く先を暗示する。
吉林省延辺は国境の朝鮮族自治州とは言え、中国政府の同化政策によって漢族の進出が進み、朝鮮族はもはや少数派。
おそらく食用であろう、犬の市場が開かれている猥雑な街の描写が良い。
檻の中に閉じ込められてもなお、吠え続ける犬たちが、社会の最下層へと貶められた人間たちのギラギラとした生き様を象徴する。
巨額の借金の返済と、妻が出稼ぎ先の韓国で浮気しているのではないかという猜疑心から、殺人を請け負ってしまう主人公、グナム。
だがそれは、闇夜でしか生きられない、獣たちが跋扈する世界への片道切符だ。

韓国に渡ったグナムは、指示されたとおりにターゲットをつけ狙い始めるのだが、いざ実行という時になって、予期せぬ事態が起こる。
突然、グナムとは別の暗殺者グループが現れ、先に殺しを実行されてしまうのだ。
だが、ターゲットが武道家だった事もあって、暗殺者たちも刺し違えて絶命。
一人生き残ったグナムは、現場に止まっている所を警察に目撃され、犯人として追われる事になる。
殺害の実行犯を送り込んだバス会社社長で、裏社会の顔役でもあるキム社長は、事件の真相が暴かれるのを恐れ、目撃者であるグナムを警察よりも先に消そうと躍起になる。
キム社長はグナムが延辺の朝鮮族である事を知ると、部下を送って密航組織の元締めであるミョンをも消そうとするのだが、逆にミョンの返り討ちにあい、韓国に乗り込んで来たミョンとそ一団に高額でグナム殺害を依頼する羽目になってしまう。
ここからはグナム、ミョン、キム社長、更には韓国警察による、四つ巴の目まぐるしい追跡劇となり、それぞれの思惑を抱えた裏社会の男たちがソウル、ウルサン、プサンと韓国中を駆け巡り、殺し合う。
例によって銃器を用いず、ハンマーだの斧だの牛刀だの、見るからに恐ろしげな凶器を使ったアクションは肉体の痛みを強烈に感じさせ、巨大なトレーラーまで動員したカーチェイスも迫力の仕上がりだ。

しかし、本作が何よりユニークなのは、主な登場人物が誰一人として、事件の全貌を理解しないまま盲目的に突っ走っている事にある。
ターゲットの名前以外一切を知らされていないグナムは勿論、彼を追うミョンやキム社長にしたところで、一体事件の発端が何で、自分たちが何故ややこしい事態に追い込まれているのか、全てを理解していない。
訳のわからないまま全力疾走し、とりあえず出会った者を片っ端から殺してゆく彼らの姿は、自分ではコントロール出来ない衝動に突き動かされ、ひたすら目の前の敵に噛み付こうとする狂犬そのものである。
さらに、グナムが韓国に来たもう一つの目的である妻探しも、不確かな情報を鵜呑みにした結果、彼は妻が死んだと思い込んでしまう。
その事が良くも悪くもグナムの覚悟を決めさせると、物語はいよいよ悲劇的な色彩を強め、最終章の「黄海」へと突入する。
壮絶な殺し合いの末に、最後に残ったグナムが全ての発端を知った時、彼が見せる何とも言いようの無い複雑な表情が印象的だ。
もしかしたらグナムは、ある人物に妻のイメージを見ていたのかもしれない。

ナ・ホンジンの演出は相変わらずパワフルで、先の見えない物語を力技でグイグイ引っ張るが、残念なのはやはり脚本の荒っぽさだ。
前作の「チェイサー」では、基本的に猟奇殺人犯と彼を追う元刑事の二人に視点が固定されていたが、遥かに多くの登場人物が韓国中を駆けずり回る本作は、視点の置き所が定まらない。
更に、物語の展開が非常に早い上に、寡黙な登場人物たちが内心を明かさずに行動するお陰で、観ている方は現状を理解する為に常に脳みそをフル回転させて考える必要に迫られ、ちょっとでも油断しようものなら、物語は無情に走り去り、置いてけぼりをくってしまう。
事件の全ての始まりが、驚くほどバカバカしい物だったというのも、狙いとしては面白いのだけど、唐突感に繋がってしまっているのも事実で、何というか脚本をシンプルにブラッシュアップしている途中で、時間切れになって撮影に突入してしまったのでは、と思わされる様な荒っぽい仕上がりなのである。
もうちょっと整理するだけで、ずっと観やすくなるのは確実なので、惜しい気がする。

キャストには、「チェイサー」の主役二人が今回も役割を変えて再登板。
あの映画で、恐るべき猟奇殺人犯を演じたハ・ジョンウがグナムを好演しているが、今回の儲け役は執拗にグナムを追い詰める密航組織のボス、ミョンを演じたキム・ユンソクだろう。
殆どジェイソンの如き不死身の殺戮マシーンは、狂犬たちのボスに相応しい迫力だ。
彼ら二人は共に朝鮮族であり、中国では二級市民と差別され、祖先の地でもある韓国でも溶け込む事は許されず、地べたを這い回るしかない。
それでも、犬は帰属意識の強い動物だという。
ようやく狂気から開放され、遅すぎた帰路に就いた“哀しき獣”の目指す先は、韓国名の“西海”ではなく、中国名の“黄海”でしかないのである。

今回は、パワフルな肉食系アクション映画に相応しく、韓国を代表する力技のカクテル(?)「爆弾酒」をチョイス。
でっかいビアジョッキに韓国ビールを注ぎ、そこにショットグラスに入れた韓国焼酎を放り込む。
世界中にあるビール+蒸留酒のバリエーションの一つで、猛烈に悪酔いするのが特徴である。
その分、さっさと酔っ払いたい場合には、これほど便利な酒も無いのだけど(笑

ランキングバナー 
記事が気に入ったらクリックしてね

こちらもお願い





2012年01月05日

ヒミズ・・・・・評価額1750円

これが、ポスト3.11のリアル。

「ヒミズ」は、昨年「冷たい熱帯魚」「恋の罪」という、人間のダークサイドを描いたパワフルな2作品で気を吐いた、園子温監督による最新作。
原作は古谷実の同名漫画で、今までオリジナル脚本に拘ってきた園監督にとって、はじめての原作物である。
3.11後の世界で、ごく普通の大人になりたいと願う中学生男女のビターな青春物語からは、前2作の様な過激なセックスと血飛沫は影を潜め、代わりにあるのは時代と正面から向き合った切実な葛藤と、未来への幽かな希望だ。

中学三年生の住田祐一(染谷将太)は、池の畔でボート屋を営む母親(渡辺真起子)と二人暮らし。
彼の夢は、普通の生活をする平凡な大人になることで、子供に無闇に大きな夢を見せようとする大人たちには反発を感じている。
一方、住田を崇拝する茶沢景子(二階堂ふみ)の夢は、愛する人と支え合いながら共に人生を歩む事。
だが、住田の母親が突然愛人と出奔し、更に別れた父親(光石研)が闇金から巨額の借金をしている事が明らかとなり、住田は中学生にして生活を守るために働かざるをえなくなる。
そして父親の理不尽な暴力に耐えかねた住田は、ある事件を起こしてしまうのだが・・・


原作は未読。
だが園子温監督は、「2001年に書かれた原作のスピリットを尊重しつつ、2011年のリアルを描いた」という趣旨の事を語っていたので、映画はあくまでも“今”に立脚した独立した作品という理解で良いのだろう。
冒頭、いきなり津波で破壊された被災地の風景と、その荒涼たる世界で彷徨う登場人物たちが映し出される事に驚く。
何でも、この映画の準備中に東日本大震災が起こり、急遽脚本を大幅にリライトして撮影に挑んだそうである。
3.11を理由として企画の凍結、内容の変更を行った作品は、伝え聞くだけでも何本もあるのだが、本作はそれらの中で実際に作品として結実した最初の一本かもしれない。

タイトルの「ヒミズ」とは、日本列島の固有種である小型モグラの一種。
浅い土中や落ち葉の下に潜み、夜になると餌を探して地上を徘徊する事もあるが、決して太陽の下には出て来ない、文字通りの“日みず”な生き物だ。
誰にも注目されず、気付かれる事すらなく、ひっそりと生きて死んでゆく。
主人公の住田祐一は、そんなヒミズの様に平凡に生きたいと思っている中学生。
だが、本人の意思とは裏腹に、彼には熱心な崇拝者が多数存在する。
その筆頭である同級生の茶沢景子は、祐一の印象的な発言を全て書き出して部屋中に貼り付けているほどの信者で、殆どストーカーの様に彼に付きまとう。
またボート小屋の周辺には、ブルーシートの家に住むホームレスの大人たちが住み着いており、彼らはどうやら震災と津波によって全てを失ってしまった人々の様である。
この大人たちもまた祐一を褒め称え、時に自らを犠牲にしても彼の支えになろうとする。
何故、凡人の宣言をしている祐一が、そんなに持ち上げられるのか。
それは、彼が“普通の日常”がもはや存在しないポスト3.11の世界で、未来への希望を体現する存在だからに他ならない。

丁度震災を挟んで作られた、園子温の前作「恋の罪」と「ヒミズ」は、3.11のビフォアーアフターとして捉えると非常に興味深い。
すっかり映画監督業が板についたが、彼は元々“ジーパンを履いた朔太郎”と呼ばれた詩人であり、その表現は文学的な暗喩性を特徴に持つ。
「恋の罪」は、カフカの「城」をモチーフとしたセクシャルな心理サスペンス。
主人公が、決して入ることの出来ない「城」に翻弄される物語は、キリスト教社会では人間が決して触れられない存在、イコール神の比喩と論じられる事が多いが、日本で作られた「恋の罪」の場合は、むしろ人間存在という掴みどころの無いものの象徴として引用されていた様に思う。
そして「恋の罪」が、閉塞した日常に立脚し、非日常へと堕ちて行く構造を持っているとすれば、荒涼とした被災地の風景にフランソワ・ヴィヨンの詩が響き渡る「ヒミズ」は、もはや日常が存在しない世界から、必死で日常を求める映画と言えるだろう。
どちらの映画でも、物語の最後に主人公が疾走する。
だが「恋の罪」で、水野美紀演じる女刑事がゴミ収集車を追って走ってゆく先が、自らの内面という閉じた非日常なのに対して、本作において祐一と景子が「頑張れ!住田!!」という魂の叫びと共に走り出すのは、未来という開かれた日常に向けてなのである。

地震、津波、そして今も続く原発事故によって、国土が放射能で汚染され、広大なエリアが今後何十年も人の住めない無人地帯となるという現実は、3.11を経験する前であればぶっちゃけSF的与太話であったはずだ。
実は我々は、あの日以来ずっと非日常の世界に生きており、3.11以前の日常はもう何処にも存在しない。
そんな物語の立脚点が崩壊してしまった世界においては、「普通の大人になりたい」という夢とも言えない未来を語るにも、大きな犠牲と葛藤が必要となる。
その事を表現者の覚悟を持って、圧倒的な映画力で観せてくれた本作は、まさしくポスト3.11時代の幕開けに相応しい衝撃的な傑作である。
黙示録の時代を生きる中学生カップルを演じた染谷将太と二階堂ふみは、本作の素晴らしい演技で、ヴェネチア国際映画祭の新人賞にあたるマルチェロ・マストロヤンニ賞をダブル受賞。
彼らもまた、日本の未来であることは間違いない。

今回は被災地の宮城県から一ノ蔵の純米吟醸「蔵の華」をチョイス。
繊細な吟醸香が鼻腔に広がり、まろやかでスッキリとした純米吟醸らしいフルーティな味わいが、新年の華やぐ気分を盛り上げてくれる。
3.11では東北地方の多くの酒蔵もダメージを受けたが、たくましくも復興へ向けて動き出している。
酒飲みとしては、安全性に留意しつつもなるべく東北の酒を呑んで、支援したいと思う。
この国のパンドラの箱は開いてしまったが、希望だけはまだ残っているのだから。

ランキングバナー 
記事が気に入ったらクリックしてね

こちらもお願い



一ノ蔵 純米吟醸 『蔵の華』1800ml [宮城県]

一ノ蔵 純米吟醸 『蔵の華』1800ml [宮城県]
価格:3,800円(税込、送料別)

【広告】

サイト内検索

メンバー紹介

このサイトに自分のブログを載せたい!
(ブログの登録は無料です。)


カテゴリー

アーカイブ

姉妹サイト

アマゾン

ブログパーツ

最新の情報をお届け!


rss