不況で業績が悪化するメーカーを中心に、社員の副業を認める動きが広がっている。しかし、社員が実際にアルバイトを行うケースは少ないという。理由は「本業だけで精いっぱい」「時間や年齢などの勤務条件が合わない」…。就業規則で副業を禁止してきた企業側は今回について「例外的な措置」としているが、従業員側にとっても副業に携わるのは“例外”となっているようだ。
不況が深刻化する中、電機業界では2月上旬に富士通(東京)、東芝(同)が減産を実施している工場の社員を対象に副業の容認を打ち出した。世界的な販売不振にあえぐ自動車業界でも日産自動車(同)が今月5日、最大20%の賃金カットを伴う休業日限定で、正社員を対象に1日8時間までアルバイトを容認することを決めている。
このうち、富士通は(1)同業他社で働かない(2)機密の保持(3)富士通の業務が主である-の3点を条件に副業を認めたが、対象者約5000人のうち、「実際に副業を行っているのは、ほとんどいないと聞いている」(広報IR室)。夜勤や遅勤などさまざまな交代制勤務のため、定期的にまとまった時間が確保できないことが理由とみられている。
一方、副業容認の広がりを受け、即戦力となる人材獲得をもくろんだ企業も当てが外れている。
家電量販店のノジマ(横浜市)は今年2月から、副業を認めたメーカーの社員のアルバイト採用に乗り出したが、現在も採用人数はゼロだ。
メーカー社員が培った技術や経験を店頭での商品説明や検品作業に生かしてもらおうと、30人を目安に募集。時給はほかのアルバイトと同じく最大1400円で、勤務時間も希望に応じるとしていたが、問い合わせが数件あっただけで、面接に至ったケースはないという。
同社の広報担当者は「現在の勤務地と当社の店舗が離れているなど、地理的に条件が合わなかったようだ」と肩を落とす。また、「工場で働いていた人にとって、店頭での対面販売への苦手意識もあるのでは」とも分析している。
副業容認の動きが広まる中で、実際の利用が少ない理由について、人事労務コンサルタントで社会保険労務士の青木勝一さんは「いくら勤務時間が減ったとはいえ、本業以外に慣れない副業をやることは、特に40代以上には体力的にきつい」と指摘。その上、「時間や場所、賃金などを総合的に判断した場合、自分に適したアルバイトを見つけるのは難しく、高齢の場合は雇用側も採用に二の足を踏むのではないか」と話した。
不況が長引けば、副業容認の動きはさらに本格化するとみられ、青木さんは「アルバイト先でのけがで従業員が本業を休まざる得ない場合への対処など、会社側は新たな事態を想定しなければならないだろう」と指摘した。
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