胃炎について知ろう(その1)
胃炎というと、実は多くの人が悩んでいる病気の一つではないでしょうか。神経性のものもあれば、そうでないものもありその原因は様々です。今回はそんななじみ深いけれども実はその実体を良く分かっていない胃炎について取り上げてみたいと思います。
胃炎って何?
胃炎は一つの病気を指す言葉と言うよりは、ある状態を指す言葉と言った方が正しいでしょう。それは胃壁の炎症を特徴とする様々なものを指すからです。胃炎は胃潰瘍を引き起こす一番の原因となる同じ細菌によって引き起こされる炎症の結果起きるのが一般的です。ただし、その他にも当然原因となるものがあります。
トラウマになるほどのダメージや、日常的に鎮痛剤を使用することさえも胃炎を引き起こしてしまいます。
胃炎には多くの条件が関わっているにもかかわらず、その兆候や症状は非常に似通っています。
上腹部の焼けるような痛みや、膨満感、げっぷ、吐き気、嘔吐などが時折起きます。また、場合によっては胃炎は潰瘍に発展することがあり、胃ガンのリスクも高まります。とはいえ、ほとんどの人にとって胃炎は深刻な病気ではありません。治療によって直ぐに改善することが可能です。
どんな症状が出るの?
胃炎の兆候や症状はしばしば比較的穏やかで一時的なものであることがあります:
腹部の痛み
上腹部つまり、胃の部分にかけて起きる痛みです。食事をするとさらに悪化したり、逆に良くなったりします。
吐き気・嘔吐
食欲減退
げっぷ・膨満感
食事後に胃の部分が膨張した感覚がある
体重の減少
胃炎は突然襲ってくることがありますが(急性胃炎)、典型的なパターンとしては吐き気・腹部の焼けるような痛みまたは不快感の組み合わせとなって現れます。また、慢性胃炎の場合、段階的に症状が進行するため、鈍痛やちょっと食事をしただけで満腹感を感じたり、食欲が無くなったりと言った症状に見舞われることが多いものです。
とはいえ、ほとんどの人にとって慢性胃炎は他のトラブルの原因とはなりません。
時々、胃炎は胃からの出血の原因となることがありますが、胃壁が潰瘍化していない限り深刻なものになることは希です。ただし、胃からの出血は嘔吐や、タール状の便の原因となるため、直ぐに医師の診断を必要とする場合もあります。
なぜなら、胃炎は似通った兆候や症状を伴う一般的な胃腸のトラブルの一つであり、以下のような他の症状と混同しやすいためです:
胃腸炎
ウィルス性胃腸炎とも呼ばれ、腸内にウィルスが感染した結果としておきます。下痢・腹部の激痛・吐き気や嘔吐・消化不良を伴いますが、普通の胃炎が症状が徐々に悪化していくのに対し、胃腸炎では1~2日で症状が治まります。
胸焼け
胸部の痛みと焼けるような感覚を伴うこの病気は、食事の後に起きることが多いものです。胃酸が食道に逆流する事によって起きる病気で、食べたものの一部が口へ上がってきたり、酸っぱさを感じたりする場合があります。
胃潰瘍
胃の部分の絶え間ない痛みや焼けるような痛みを感じるようであれば、潰瘍を疑った方が良いでしょう。胃潰瘍は胃壁に出来た傷のようなもので、突出した症状として痛み(夜間や胃が空になっている際に悪化することも)があります。胃炎と胃潰瘍は一部同じ原因から出来る事があり、特にピロリ菌感染は両者を引き起こす原因となります。
非潰瘍性消化不良
一般的には単に消化不良と呼ばれます。非潰瘍性消化不良は機能障害の一つであり、必ずしも特定の病気と関連があるとは言えません。正確な原因ははっきり分かっていませんが、ストレスや揚げ物・スパイシーなもの・脂肪分の多いものを過剰に食べると胃の部分の痛みや膨満感、げっぷ、吐き気といった特徴的な症状を引き起こすきっかけになったり、悪化させたりします。
原因は?
あなたの胃は筋肉で出来た空洞のようなもので、上腹部の左側に位置します。また、肋骨の直ぐ下にあたります。典型的な成人の胃の大きさは25cm程度の長さがあり、3.7Kg程の食べ物と水分を蓄えることが出来るほど拡張します(注:ただしこの値はアメリカ人を基準としているので、日本人の場合はもう少し小さな値になるかもしれません)。
あなたの胃は食べ物を蓄えつつ、それを消化しやすいように処理します。そして、徐々に食べ物を小腸へ送り出す役割も持っています。食道から食べ物が降りてきた時、胃はそれを受け付けて攪拌を開始します。その動きによって食べ物はさらに小さく砕かれていきます。同時に、胃壁からは胃液(胃酸と消化酵素)が分泌され、食べ物をより細かくしていきます。
これらの一つである塩酸は、鉄製の釘ですら溶かしてしまうほど腐食性の高いものです。あなたの胃の組織は、重炭酸塩の粘液でこの腐食性の酸から守られています。これは胃が持っている防御機能の一つで、胃壁に張り付いた粘液が酸-アルカリバランスを調整し、胃酸で胃の組織自体がダメージを受けないようにしています。
そして、胃炎はこれらの防御機能が打ち負かされた際に起きます。つまり、胃壁がダメージを受け炎症が起きる事が原因です。こういった状況を引き起こす要因としては:
細菌感染
世界中の多くの人はヘリコバクター・ピロリ菌と呼ばれる、胃壁の表面の覆うように生息する細菌に感染しています。現時点でもどのようにピロリ菌が伝染していくのかははっきり分かっていませんが、経口感染や便を媒介とした感染、あるいは汚染された水や食べ物による感染がありえると考えられています。
幼児期に感染したとしても、一旦感染すると治療しない限り生き続ける程しつこいというのが特徴です。
ピロリ菌は胃潰瘍や胃炎の主要な原因として知られており、長期間にわたる感染は、胃壁が炎症反応によって広範囲に変化してしまう原因となります。これらの変化のうちの一つは萎縮性胃炎と呼ばれ、胃液腺が徐々に破壊されていく状態になります。
研究者は胃酸レベルが低いと発ガン性のある毒素が上手く分解されず、胃ガンのリスクが高まるかもしれないと考えています。とはいえ、ピロリ菌に感染しているほとんどの人はガンになりませんし、胃炎の症状も起きません。細菌によって病気を引き起こす他の要因に対して耐性が弱まるという事はありますが。
鎮痛剤の日常的な使用
アスピリン・イブプロフェン・ナプロキセンといった非ステロイド系の薬剤は、胃壁を守る物質を減少させることにより胃壁の炎症を引き起こすことがあります。これらの薬を時々使用する分には胃炎などが起きる心配はありませんが、日常的な使用や許容量を超えた使用は胃炎や胃潰瘍の原因となります。
過剰なアルコール摂取
アルコールには胃壁に炎症を起こしたり、腐食したりといった作用があり、胃の分泌液が持つ普通の作用に対しても弱くなってしまいます。
コカインの使用
コカインにも出血や胃炎を引き起こす作用があります。もっとも、日本ではほとんどこれが原因で胃炎を招く人はいないと思いますが。
ストレス
大手術やトラウマになるほどのダメージ、火傷、過酷な感染症による強いストレスは、胃潰瘍や出血と同様に胃炎の原因となります。
自己免疫不全
自己免疫萎縮性胃炎は、胃壁に存在する健康な細胞を免疫システムが攻撃した際に発症します。これは胃壁が徐々に薄くなっていく炎症反応の引き金となり、胃液腺を破壊します。さらに、ビタミンB12の吸収を助ける物質の生産に干渉し、ビタミンB12欠乏を引き起こします。
ビタミンB12が不足すると、悪性貧血となることがあり、悪性貧血によってほぼ体全体のシステムが影響を受ける深刻な状態を引き起こします。なお、自己免疫萎縮性胃炎は高齢者に多い病気です。
クローン病
この病気はしばしば消化管内壁の慢性的な炎症の原因となるものですが、時々胃壁に対しても炎症を起こさせることがあります。しかし、胃の部分にクローン病を発症した場合でさえ、クローン病の症状である腹痛や下痢は胃炎の症状よりも突出しています。
放射線・化学療法
ガン治療で行われる化学療法や放射線治療により胃炎や胃潰瘍が誘発されることがあります。ごく少量の放射線を浴びた場合はそのダメージは一時的なもので済みますが、大量に浴びた場合は胃液腺や胃壁が元に戻らないほどに侵食されてしまうこともあります。
胆汁逆流
胆汁には脂肪の消化を助ける働きがあり、肝臓で生産され胆嚢に蓄えられています。通常胆汁は胆嚢から分泌されて小腸へ入っていくものですが、小腸と胃の境界にある幽門と呼ばれる部分がきちんと働いていない場合、胆汁が胃へ逆流して炎症を起こすことがあります。
その他
胃炎はこれ以外にも様々な条件で起こりえます。HIV(エイズ)、寄生虫感染、結合組織の病気、肝臓や腎臓の疾患でも起こりえます。
さすがに胃炎の原因は幅広いので、結構長くなってしまいましたね。この続きは次回と言うことで。
甘く見ないように
胃炎というと比較的良くある病気なので軽く捕らえがちですが、それが別の病気の予兆であったり、自分が想像している以上に悪い状態になっている可能性もあります。普段健康診断をきちんと受けている人はともかく、主婦のように健康診断をおろそかにしがちになっている人は気をつけましょう。
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それではまた。
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