![]() | 風の妖精たち (岩波少年文庫 (145)) (2007/08) メアリ・ド・モーガン、矢川 澄子 他 商品詳細を見る |
「人間て、けしてひみつを守れないのよ。
ほんとにだまっていられたひとなんて、いままでひとりも知らなくてよ。」
「風の妖精たち」は、ビクトリア朝の女流作家メアリ・ド・モーガンが、生涯に残した三冊の童話集のうちの一冊です。
民話や伝説の再話のような趣ですが、全てモーガン女史の創作だそうで、なるほど、読み進むうちにただの昔話とは明らかに違うことに気付きます。
幼い頃に風の妖精たちから踊りを教わったリュシラは、誰にも真似できないほどの優れた踊り手となります。
やがて美しい娘になったリュシラは、結婚して子どもを授かってからも、風の妖精たちとのたったひとつの約束を守り続けていました。
その約束とは、どこでどうして踊りを教わったのかを誰にも話さないこと。
もしも破れば、二度と踊れなくなるばかりか、リュシラのいちばん大切な人にもとんでもない不幸がおそいかかるというのです。
けれど、約束さえ守れば、いちばん困った時に助けにきてあげると、風の妖精は言いました。
たいていの昔話では、こういった約束は「破られるためにある」と言わんばかりに破られるのが常ですが、この物語ではそうはなりません。
踊りが好きな王さまの宮廷に招かれたリュシラは、その見事な舞により王さまにたいそう気に入られます。
しかし、嫉妬した王妃に「誰に踊りを教わったのか」と聞かれて答えられなかったために、ついには魔女として処刑されそうになるのでした。
約束を守ったリュシラは、風の妖精たちに助けられて、めでたしめでたし。
…と書けば、ずいぶん単純な話に聞こえますが、そこに至るまでに読み手はさんざんヒヤヒヤさせられます。
王妃というのがなかなかにしつこい人で、問い詰められたリュシラがいつ喋ってしまうかと、気が気ではありません。
表題作のほかに、月の光で陶器に絵付けするジプシーの娘と、その娘が作った杯に翻弄される陶工とその妻の話「ジプシーの杯」(この話がいちばん好きです)
悪い妖精に美しい声を盗まれた少年と、その声を取り戻そうと奮闘する健気な少女の話「声を失ったオスマル」
など、全七編が収録されています。
丁寧な心理描写に意外な展開も手伝って、どのお話もただのお伽噺とはひと味もふた味も違う、煌めくような童話集です。
![]() | ![]() |












