![]() | はるかな国の兄弟 アストリッド・リンドグレーン (2001/06) 岩波書店 この商品の詳細を見る |
アストリッド・リンドグレーンといえば「長くつ下のピッピ」が有名ですが、私はこの「はるかな国の兄弟」がいちばん好きです。
兄が「ヨナタン・レヨンイェッタ」と呼ばれるようになったわけと、その後に続く不思議なお話が、弟カールによって語られます。
「レヨンイェッタ」とは、英語で言うと「Lion hearted」
「獅子の心(=勇敢な)」を意味する言葉です。
十歳のカールは、自分の命が長くないことを知っていました。
死ぬのが怖いと泣くカールに、十三歳の兄ヨナタンは「ナンギヤラ」のことを語って聞かせます。
死んで土の下に横たわるのはただのぬけがらで、魂はナンギヤラへ行くのだと。
「そこはまだ、野営のたき火とお話の時代なのさ。きっと、きみは、すきになるよ。」
そこに行けば、朝から夕方まで、それに夜中までも、冒険が続くのだとヨナタンは言います。
だから自分が行くまでは、木に登ったり、森でたき火をおこしたり、小川で釣りをしたり、今までやってみたくてもできなかったたくさんのことをしながら、待っていてほしいと。
けれども先にナンギヤラへ旅立ったのは、ヨナタンでした。
燃えるアパートの三階の窓から、動けないカールを背負って飛び降りたのです。
「まるでお話の王子さまのよう」と言われるほど美しい少年だったヨナタンは、
「泣くなよ、クッキー、ナンギヤラで、また会おう」(※ヨナタンはカールのことをクッキーと呼びます)
それだけを言い遺して、この世を去りました。
そうして、約束のナンギヤラの、桜の花咲く谷での再会から二人の冒険が始まります。
ナンギヤラは、楽園ではありません。
テンギルという独裁者がいます。
恐ろしい竜もいます。
時には信じていた仲間に裏切られることも。
それでも最後まで「レヨンイェッタ」であり続けたヨナタンと、そして小さなクッキーに、涙があふれてとまりませんでした。
余談ですが、何年か前、何を思ったのか私は、このお話を娘に読み聞かせようと思い立ちました。
が、二章で号泣してしまって声が続かなくなり、娘に慰められた覚えがあります…。
当時幼稚園児だった娘が今でも「ヨナタン・レヨンイェッタ」という、日本人には馴染みの薄い名前を覚えているところを見ると、かなりのインパクトだったと思われます。
イロン・ヴィークランドの繊細な挿絵も物語によく合っていて、特に表紙の絵にはため息が出そう…。
結末は賛否両論ありますが、私は好きです。
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