先月、娘を連れて実家に帰った時のこと。
娘が(私の)母のエプロンのポケットを探る仕草を見て、母が、子どもの頃の私や弟も同じことをしていたと笑うのです。
そう言われてみれば、そんなことしたかなぁ…と、かすかに記憶の端に残っているものの、今となっては、ちいさな私が母のエプロンのポケットに何を探していたのかはさっぱりわからず。
子どもってポケットが好きだよね、なんて話しながら、「なんでだろう?」と考えました。
「ポケットの中の赤ちゃん」は、幼稚園児のなっちゃんが、「うちにはどうして赤ちゃんがいないのっ。」と、ママに泣きつくところから始まります。
幼稚園のお友だちの家に赤ちゃんがいるのが、悔しくて羨ましくて仕方ないのです。
ママはなっちゃんの涙をエプロンで拭くと、ポケットの中に手を入れて、「この中に赤ちゃんがいるかもしれない。」と、ポケットの中身をひとつずつ取り出してゆきました。
なっちゃんは、ほんとうに赤ちゃんが出てきそうな気がして、どきどきします。
ちいさな子どものやわらかい心は、「赤ちゃんがポケットに入るわけない」なんて考えません。
そう思ってみると、何が出てくるかわからない「ポケットの中」は、子どもにとっては宇宙と同じなのかも。
ママがポケットから出してきたのは、レシート、はがき、紙ナプキン、チェーンリング、ビー玉、ヘアピン、輪ゴム、等々。
けれど、ママがはずしたエプロンを、後でもう一度なっちゃんが調べてみると…。
ポケットの底、ほこりにまみれて、なっちゃんの小指の頭ぐらいの、ちいさなちいさな赤ちゃんがいるじゃありませんか!
ちいさなちいさな赤ちゃんは、みるみる大きくなっていき、なっちゃんの手のひらぐらいの大きさの女の子になりました。
「ムーちゃん」と名乗る女の子に、なっちゃんは、お人形の服を着せ、おままごとの食器でご飯を食べさせます。
寝場所にはお人形のゆりかごを用意したけれど、ムーちゃんはエプロンのポケットの中でしか眠れません。
「おやゆびひめ」の絵本にクレヨンで落書きをしたり、くまのぬいぐるみの毛をむしったりと、とってもやんちゃなムーちゃん。
「ほんきにしない人に見られると、あたし、きえちゃうの。」と言うムーちゃんのために、なっちゃんは、誰にも見つからないように気をつけながら、かいがいしく世話をします。
いつもはママにお世話されているなっちゃんの奮闘ぶりがほほえましく、ママの口調を真似たようなムーちゃんへのお小言には、思わず笑いがこぼれます。
「よるって、ひるまより、もっといろんなことができるんだよ。」
ムーちゃんの言う通り、夜の中、二人は「ゆめのくに」へ遊びに行ったり、床下にもぐりこんで地下に降り、「とりこみや」に盗まれたムーちゃんのドレスを取り返しに行ったり。
楽しいことも怖いこともいっぱい。いろんな冒険をしました。
それは、たった三日間の出来事。
母のポケットの中に何かを探していた子どもの頃の自分が重なって、読み終えたときにはちょっと切なくなりました。
この本の初版は昭和47年。
何年か前に復刊したらしいのですが、残念なことに、今はまた品切れのようです。
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