このところ、落ち込む回数が増えた。これまで僕は自分を変えよう、変えようとしてきた。昨日よりも今日、今日よりも明日、少しでも進化してゆこうと。
そのために旅に出たり、その土地に住んでみたりした。
見たこともない風景を見てみたい。その場に立たなければ感じられないことを感じてみたい。その場の風に吹かれてみたい。美しいものに触れてみたい。地球に生まれたことを実感してみたい。感動したい。
旅に対するどうしようもない憧れと、欲求。
それが僕を突き動かしてきた。
でもね。
その根底にはいつも、「変わりたい」という気持ちがあった。
ここではないどこかへ行けば、僕はきっと変われるはず、という根拠の無い自信もあった。
そして、旅に出た。
果たして僕は変われたのだろうか。
いいや。
ちっとも。
僕は外国にいても日本で過ごすときと同じようなものを食べ、同じような音楽を聴き、日本の小説を読んで過ごした。考え方もさほど変わらなかった。周りの知り合いは勿論外国人ではあったが、これといって特別に仲良くなれる人もいなかった。確かに生活の違いはあったが、アパートメントにこもってしまえば、ここが日本ではないのかと錯覚するぐらいだった。
最近になって、自分はやはり何も変わっていないことに気がついた。
こんなはずじゃなかったのにな、と思う。そうして落ち込む回数が増えていた。
そんな時に出会ったのが、野口健の『あきらめないこと、それが冒険だ エベレストに登るのも冒険、ゴミ拾いも冒険!』という本。そもそも「野口健 環境学校」をしているというのを知ってから彼に興味を持った。どんな男なのかなって。本を読みすすめていく間中、彼は思った以上にいい男だって思ったよ。落ちこぼれた僕のささくれた心を潤す静かなエネルギーを彼からもらった。自分のこれまでの生き方を正直に冷静に視ている視点は、僕も持ちたいと思った。両親が離婚したり、落ちこぼれだったこと、ほろ苦い恋の思い出、山へ登るまで、そして清掃登山、環境問題、全てに共感できた。
それに、南の島でゴミ拾いをしていたときのことを思い出させてくれた。
美しいビーチがビールの缶やマックの袋なんかのゴミが散らばっているのに心を痛め、あの島を去る1ヶ月前から毎日ゴミ拾いを日課にしたことがある。最初はきょとんとしていたローカルの人たちも、「手伝おうか?」と声をかけてくれたり、「何しているんだ」って聞いてきたり、「ありがとう」って言ってくれたり次第に僕のことを気にするようになってきた。
その中で感動したことは、近くに住むファイターが道端のゴミを拾いながらトレーニングで走るようになったこと。彼は柔術を習っていて、日本の武士道という精神にとても興味を持っているみたいだった。彼は最初、僕がゴミを拾っているというと、わけが分からない、といった顔をした。でも、それからしばらくして、ゴミを拾いながら走る彼を見かけるようになった。
あの島の知人があるとき僕にメールをくれて、あのファイターは今でもゴミ拾いを続けているという。
武道はこつこつと練習する以外に上達の道は無いのだという。基本中の基本の動きを何千回とひたすらに繰り返し、目に見えないくらいのすこしずつうまくなっていく。うまくなったと思った瞬間、ゴールはまたさらに遠のいてゆくのだそうだ。自分との戦い。そう、ファイターの彼は言っていた。
目に見えないくらいの少しずつ自分を高めてゆく。
僕もそうであって欲しいと思う。
変わっていないようでも、目に見えないほどの少しだけ先に進んでいるといい。
あきらめない気持ちは大切。
これからを生きる子供達、そしてちょっぴり疲れた大人にも、この本をおすすめする。
是非、読んでみて。
絶対、おすすめの一冊。
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