e2ad1898.JPG【『マイルスの夏、1969』(中山康樹著)】

 マイルス・デイヴィスが『イン・ア・サイレント・ウェイ』、そして『ビッチェズ・ブリュー』という大傑作を生んだ1969年前後に焦点を当て、それを横にではなく縦に掘り下げて書かれた新書です。さすが中山氏の著作だけあって、詳細なデータに基づき、それを客観的に綴っていて、大変読み応えがあります。

 『ピッチェズ・ブリュー』の伏線ともされる、当時のマイルス夫人のベティ・デイヴィスの未発表のセッションは是非聴いてみたいと思ったし、ジミ・ヘンドリックスとのかかわりに対する見解、ライフタイムの動向と上記アルバムとの関連、ニューポート・ジャズ・フェスティヴァルでの出来事等々、興味深かったです。

 ただ、瑣末なことかもしれませんが、ウエイン・ショーターが主奏楽器をソプラノ・サックスに移行したことが書かれている箇所で、ショーター自身が「クラリネットとソプラノ・サックスの奏法には近いものがある。」と言っていたのか、書いていたのかは知りませんが、とにかく、だから彼が少年時代クラリネットを吹いていたことが役に立ったと書かれた件がありますが、私には疑問です。私もサックスを吹いていましたが、サックス吹きならソプラノからバリトンまで吹きこなすことはそう大変なことではありません(私もソプラノからバリトンまで全部吹いていましたし、それぞれの楽器で舞台にも立っています。)。運指は全く変わらず、マウスピースも大きさが違うだけですから。むしろ、クラリネットとは、運指は全く異なり、マウスピースの形状も銜えるところの傾斜がサックスより急とこれまた異なり、移行はそんなにスムーズに行くのか? と。

 もっとも、そんな表面的で技術的なことを言っているのではないのかも知れません。似た音域での音楽表現のことを言っているのかな? とかね。

 でも、サックスは開管ですがクラリネットは閉管と、音色は異なりますからね。もしかしたら、ソプラノ・サックスとクラリネットはぱっと見(ソプラノ・サックスにはカーブドソプラノもありますが)形・大きさが似ているということで、ショーター自身が無責任に結構いい加減に言っただけだったりして! まあ、実際に「ショーターの発言はしばしば整合性に欠け」ると中山氏自身が別の箇所で書いているしね。

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