先日のミニ・コンサートが終わって、その足で夫と私は
実家の母親のところへ
みかんを持ってゆくことにしました。
”モシモシ、私やけどさ、夕方みかん持って行くけん”
体調の優れない母親は、それから慌てて近所のスーパーに
おでんの材料を買いに行ったそうです。
”おでんば作っとるけんね、何も、買ってこんでよかけんね”
そう言われても、ものすごく空腹で、しかもクリスマス的特別食も食べてみたかった私は、正直、おでんだけじゃね、と思った。
”わかった、何か他のもの、買っていくけん”
ケーキも食べたいなー、と思ってたから。
そしたらば
”ケーキも買ってきたけんね”…これまた正直、嫌な予感がした。
だけども、あまり時間の余裕もなかったので、通り道の回る寿司屋でとりあえずお寿司を詰め込み、実家へ行きました。
ダンボールいっぱいのみかんに、喜ぶ母親。
妹はクリスマスパーティーに出かけたとのこと。
父親は、仕事。
私達が来たことが、ほんとに嬉しかったらしい。
山盛りおでんを振舞ってくれ、ずっとしゃべり続けます。
美味しかった。
しばらく経って、父親が帰ってきました。
年明けにはいなくなる予定の父親。
ここ数年の間に、家の周りにはアパートが立ち並び、野菜作りが楽しみで借りていた小さな畑も潰されました。
北の国からに感銘を受けていたのは知っていたけれど、とうとう、ひとりで遠くの田舎に住むことに決めたらしい。
海の綺麗な島育ち、魚の卸しもやっていた父親は魚にはかなりうるさい。
そんな彼が、くるくる回る寿司屋で詰め込んできた寿司を
うまか、うまか
と言って、食べるのだ。
(実際、美味しかったけどサ)
* * *
そうだ、ケーキ。ちょっぴり不安なケーキ。
”おかーさん、ケーキは?”
そうそう・・・と、彼女が持ってきたのは、普段、コンビニのデザートコーナーにでも並んでいるようなチョコ・ムース。
ああっ、やっぱり。
”買い物に行くたんびにね、これを食べてみたくてたまらんかったったいね。
キャラメルチョコって書いてあろーがぁ
でも、がまんしとったったいね
そげん、甘くなさそうやし、おいしそうやろぅ?”
ほら、タベナサイ。タベナサイ。
はい。
おぅっ
甘いぜ!かあさん(心の声)。
いつも笑い顔の夫がニコニコしながら言う
”ハイ、とても甘いですねぇ〜”
・・・。
まぁ、いーや。
父親が言います。
”おまえはぁ、こればクリスマスケーキと思って買ってきたとか〜”
”そーたいね、こげんなときじゃないと買われんけん”
* * *
大人4人がかりでも制覇できなかったキャラメルチョコムースは、親切に妹へと持ち越し。
それからも両親は機嫌良くしゃべり、笑う。
食卓を囲んで笑いが出るって、
こんなに幸せなことはないなと思う。
私は父親に褒められたことがありません。
だけど今年、初めて褒められた。
夫に向けて話していたのだけれども。
”こん子の偉かとこはですね、今までどげん辛いことがあっても、実家に帰ってくるって言わんことですたい”
もうすぐ離れ離れになる父親は、ずっと、そんな風に私の事を思っていてくれたのだ。
帰り道、ケーキ屋に寄って、普通の丸いクリスマスケーキを買って帰りました。
あまり甘くもなく、今時の味。
美味しい。
だけど、これを口にしながら私が思い出していたのは
あの、200円の甘ったるいチョコムース。
両親も、味見、といってひと口食べたっきり黙ったチョコムース。
私だけが
”オイシーヨ〜”
と、繰り返したチョコムース。
* * *
こんなにモノに溢れた今は、何だってスグに買える。
美味しいものだって、溢れている。
知らず知らずのうちに、そんなものがあたり前のような気になってくる。
両親は私に、お金のありがたさと、我慢することを、教えてくれました。
出せば、買える。
求められるままに出す。
そんな事を知らずに育ったことが今では、ありがたい。
こんな親、居なきゃ良いのに。
と、思っていたころは居て。
もっと、居てくれたら良いのに。
と、思い始めたころ、一つの家に居た家族がゆっくりと、解けはじめる。
電話はひかない、という。
頻繁に連絡を取り合う家族でもないから。
父親が島に帰ったら、次に会うのは、何かが起こったときかもしれない。
生きているうちに会えれば、幸せだ。
ありがとう。
くれぐれも元気で暮らしてください。
お母さんには時々連絡します。
今度遊びに行く時には、小さめのケーキを買って
持ってゆきます。
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