- 未来ビジネスを読む (ペーパーバックス)/浜田 和幸
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「未来学」を放棄したH.G.ウェルズの苦悩
さて、 1930年代はSF (science fiction)が文学として礁帝した時期だった。
イギリスでは「SF協会」が組織され、機関誌『明日:未来のためのマガジン』も発刊され、毎号、 sF小説をはじめ、未来研究にまつわる論文や提言が掲載されたo
その1938年春季号には、 「イギリス政府内に未来研究省を設立し専任大臣Minister forthe Futureを置くべき」との提案もされている。
イギリスSF協会の最大のパトロンが、 H.G.ウェルズだった。
しかし、前述したように、原爆投下はウェルズを落胆disappointさせ、未来研究に意欲をなくし、協会活動も停滞していく。
ウェルズは1913年に原爆の発明を予測し、原爆を使った世界戦争が起こる近未来小説を発表している。
ウェルズに触発されたドイツの物理学者レオ・スジラードLeoSzilard (1898-1964)が1934年に原子爆弾の理論を完成させた。
スジラードはドイツからイギリスに亡命し、極秘に研究を進めていたが、その後アメリカに渡り、 1939年からコロンビア大学ColumbiaUniv.で核融合実験に参加した。
ここでアルバート・アインシュタインAlbertEinstein (1879- 1955)と合流し、ルーズベルト大統領に原爆製造の可能性を伝えたのであった。
ここからスタートしたのが、有名なマンハッタン計画Manhattan Projectである.
ウェルズは、原爆が実際に使用されることがないようにと願ったが、現実は逆になってしまった
1945年8月、アメリカが日本の広島と長崎に原爆を投下したことを知ったウェルズは、いたく落胆して声も出なかったという。
彼が、深い絶望感に襲われたのも無理はない。
なぜなら、彼が原爆を小説に登場させた理由は、それが使われることがないように人類に警告することだったからである。
ウェルズの落胆と絶望despairは次のような遺言となって、後の世代の課題として引き継がれることになった。
「進化する科学技術の影響があまりに大きいことに気づかねばならない。
科学の進歩をどうやって人類の未来にとってプラスに使うべく予測を立てることができるかが肝要である」
このウェルズのメッセージは、人類がより賢明に生きていくためにこそ、未来研究の意味があり、単に科学技術の開発競争や国家間の抗争の手段として使われるべきではない、ということをわれわれに伝えている。
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