ベートーヴェンは音楽史的には古典派に属し、そしてロマン派の扉を開いたとされています。しかし、この《弦楽四重奏曲第14番》はそんな分類の枠には収まりきらない、時代を超越した名作のように思います。幽玄なフーガあり、天上の音楽に形容される幸福な変奏曲あり、愉悦のスケルツォあり、そして、これぞベートーヴェンと言ってもよい闘いのソナタあり−彼のいいところがいっぱい詰まっています。そう、これってベートーヴェンのみならず、全弦楽四重奏曲中の最高傑作と言っても過言ではないでしょう。
さて、カペー弦楽四重奏団による演奏ですが、昭和初期の録音ですのでディスクとしての不都合はあります。もっと状態の良い復刻CDはあるのかもしれませんが、私の持っているCD(Biddulphレーベルからのマーストンによる復刻盤 LAB 099)はスクラッチノイズが少々気になります。さらに、演奏によるところもあるとは思いますが、速い部分が上滑りしている印象があります。そして、時代を感じさせるポルタメントが耳に付きます(良い効果をあげている部分もあるのですが。)。
しかし、それでも演奏は素晴らしいです。カペー弦楽四重奏団の演奏は、優艶であり、一方寂寥感もあります。そうです、高い精神性も感じられる神韻縹渺たる温かい名人の芸と言えるでしょう。第1楽章の完璧な、演奏ではなくて音楽そのものは何て形容すればよいのでしょうか? そして、第6楽章の深い情感−言葉も出ません…。


