昨年10月、「BONA & SADAO」と題されたライヴを収録したアルバムです。このリチャード・ボナと貞夫さんのコンビによる演奏では、私が今まで接した彼らのアルバムからでもライヴからでも感じられた印象そのままの、温かい、幸せな空間に触れることができました。こんな世界を表出できるミュージシャンって、稀有だと思います。
ただ、日本人ジャズに対して高い評価を下さない方々もいます。曰く、「スケールが小さい。」「いざ海外勢にセメント・マッチでやられると、……かわいそうになった。」等々…。たしかに、ナベサダとボナとの初共演アルバムである『SADAO 2000』では、ボナの音楽性の方が貞夫さんより前面に出てしまっていましたがね。さらに、渡辺貞夫のプレー自体にも、リズムのノリ・キレの悪さ、トーンの不安定さはあります。「世界の〜」というキャッチ・コピーがついたナベサダでさえそうなのですから、そういった意味では、上記の評価はその通りともいえます。もっと付け加えれば、何かを突き抜けた、新しい音楽が生み出されているテンションも感じられませんし。
でも、やっばりここで展開されている温かい世界に浸ると、幸せな気持ちが充満することもまた事実です。元SAX吹きとして、おじいさんになって、こんな風にもSAXを吹くことができたなら…。
【『ディストラクションズ』 / RHファクター】
昨年8月、「東京JAZZ」で何かいい感じのトランペット・ソロを繰り広げていたロイ・ハーグローヴ。その彼の率いるヒップホップ系プロジェクトであるRHファクターの新譜がこれです。まあ、ここに新しいジャズへのヒントが隠されているかもしれません。
実は以前、RHファクター処女アルバムをショップの視聴コーナーで聴いたときは、いいんだけど、もの足りず、ぴーんとこなくて、結局購入しませんでした(どういった点がそうだったのかはよく覚えてはいませんが。)。でも、今回の『ディストラクションズ』は、冒頭からいい感じと引きつけるものがありました。黒い、お洒落なサウンドは、こんな曲を自分も作ってみたいと思わせるものです。
でも、処女作と今作での違いはどこにあるのでしょうか? まあ、想像によるところもあるのですが、今作でも共演しているディアンジェロ。以前、ロイは逆に彼の『ヴゥードゥー』というアルバムに参加していましたが、そこでのロイの存在感はそれほど大きくないように感じました。しかし、今作ではディアンジェロのナンバーでもロイは大きな存在感を示していました。とすると、鍵はロイ自身の成長によるところにありそうです。
しかし、曲単体で見てみても、アルバム全体としても、もっとより発展し、どこかにつれさらわれてしまうような展開性に欠けるのが残念かな。


