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二日後の昼下がり、英輔はまた、沢井に呼び出されていた。
寺町丸太町を下がったところの、ひと気のない神社の境内。紅梅が社殿に寄りかかるようにして咲いているのに見惚れていると、玉砂利を荒々しく踏みにじる音がした。
振り返った英輔の目に、沢井は明らかに不機嫌で、目の光は凶暴ですらある。
「なんで、こないなとこで待ち合わせしたか、わかるか!」
沢井の声は、咆え声に近い。英輔は唇を噛んだ。
「わかるさ。ここは、こんな時期にはまるっきり人が来ない。それと、おまえのオフィスに近いしな」
「一発、しばいたらな気がすまへんわ!あんだけ、踏み外すな、言うたやろが」
沢井は唾の掛かるほど、英輔に顔を近づけて、鬼面となって喚く。
「恩田のおっさんに、ようも、余計な忠告さらしたな。ただの古いぼろ家を、町家に仕立てて高く売りつける、いんちき商売に加担すな、やと!おまえ、何様のつもりや!」
力任せの平手打ちに、英輔は砂利の上に打ち倒される。
「このクズが!恩田のおっさんには、大学の助教授で、アルバイトに京都のガイドをしとる、言うて紹介したったんは、わしの思いやりやったんやで。ほんまはなんやねん?わしが紹介してやるガイドの仕事以外、今、おまえに収入あるんか?」
ひきつった顔で、英輔は立ち上がり、精一杯の気力で沢井に向き合う。容赦なく罵言が襲う。
「お前があの文学賞受賞して、わしが祝賀会、開いてやったな?あれから何年経つ?いまだに、本の一冊も出せへんやろが。そやのに、作家やと?原稿料一円も稼げへん作家がおるか?わしの紹介してやるガイドの仕事と、女にたかって、やっとこ食いつないでるおまえや。身の程わきまえたらんかい!」
歯を食いしばって、顔面を紅潮させ、英輔は沢井ににじり寄る。
「言われなくても、わかってるさ、そんなこと・・・」
「わかってへんわ!おまえ、恩田の嫁さんに、惚れよったやろ。このクソ餓鬼が、色ボケが!」
野卑な叫びも、静まり返った境内に吸い込まれ、外にはほとんど漏れない。
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