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2005年04月22日

小説「流れのほとりで」第七回

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 英輔の言葉に、美沙子は喜びの色を浮かべて、紅茶を啜った。
「今日、そのいんちきな仕事の打ち合わせに行ってるけど、夜にはまた、恩田に会ってそう言ってくださらない?」
「いいですよ。」
英輔は軽く応えたが、美沙子は信頼しきった様子で、少女のように目を輝かせる。
「憧れの街だわ、京都は。わたしみたいはおばさんはもちろん、若い人にだって、そうなんだから。・・・ほら、舞妓さんにしてくれるっていうか、舞妓体験、舞妓変身どころ、っていうの、あるでしょ?あれ、人気なのよね。わたしももう少し若かったら、やってみたいと思った」
「あれですか・・・僕らは、ニセ舞妓って呼んでますが」
英輔は苦笑した。そして、遥かな記憶が蘇って、知らず知らず口調が鋭くなっていた。
「最近はほんとに、化粧の仕方、自毛で髪を結う方法なんか、本物そっくりになってますけど、ニセモノだってことは地元の人間には一発でわかりますよ。本物はね・・・あの、高いおこぼって下駄で、走るように歩くんです。出来ますか、素人にそんなこと?・・・本物の舞妓は、自分の時間なんてないですからね・・・いつも追われるように急いで、京都の花や景色を見に行くこともなくて、屋形とお茶屋、狭い花街のなかだけで青春を潰して」
 あっけにとられて見つめる美沙子に気付いて、英輔は慌てて口を閉ざした。
「南原さんは、舞妓さんのことも、詳しいんですね。個人的なおつきあい、あったのかしら?」
「そんなの、無理ですよ。僕みたいな階級じゃ、お茶屋遊びなんて、一生できません」
「階級って、おおげさね。南原さん、沢井さんのお話じゃ、本職は日本文学の助教授なんでしょ?」
英輔は微かにひきつった笑顔で早口に答えた。
「ええ、学者は貧乏なものと決まってますよ。さて、夕方までまだ時間がありますね。どんなところをご案内しましょうか」
 陽気に声を上げながら、英輔は脳裏に浮かんだ面影を振り払おうとしていた。ふく髷に結い上げた髪、白塗りと紅の下に輝いていた誇り高い表情、憧れ、恋慕したただ一人の妓・・・
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2005年04月21日

街角おもしろ物件

京都を歩き回っていたら見つけた、ちょっとした面白いものを紹介。

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京都国立博物館で開催中の「曾我蕭白~無頼という愉悦」展の宣伝のぼり。
「円山応挙がなんぼのもんぢゃ!」だったんですな(笑)

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御池通を歩いていたら、お店の中になにやら異様に輝く自転車が!
金箔屋さんが製作した、24金・黄金箔貼りのものでした。

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我礼寺というお寺の表札・・・ではありません(笑)

2005年04月20日

西陣・桜巡り

今日、4月19日は光柔らかな春の好日。もうこんな日は、憧れの桜に会いに行こう!
いろんなものをうっちゃって、西陣目指して走っていってしまった。

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一番観たかったのが、「引接寺(いんじょうじ)=通称・千本ゑんま堂」の「普賢象桜(ふげんぞうざくら)」だった。
ゑんま堂はちょっと雑駁な感じがする庶民的なお寺であるが、紫式部供養塔を覆うように咲くこの花は、見ていると魂を吸われるような気がするほどに魅惑的である。

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花の中心に二本伸びている雌しべを、普賢菩薩の乗り物である、ゾウの牙に見立てて名づけられたそうだ。花びらの数は一つの花に100枚以上!そしてこの花は花びらが散らず、椿のようにぽとりと落ちるという。まだ、一つも落ちていなかった。

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ゑんま堂の北に、「上品蓮台寺(じょうぼんれんだいじ)」=通称・十二坊」があり、紅枝垂桜がまだ美しかった。静かで、観光臭のほとんどない境内は清々しかった。

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また千本通を南に戻り、ゑんま堂を通り過ぎて、千本上立売を東へ行くと、「雨宝院」。かつては広大なお寺だったそうだが、今はとても境内が小さい。だが、そこには溢れんばかりの花々。まず観たのは「御衣黄(ぎょいこう)」。珍しい緑色の花を咲かせるのである。

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八重の「歓喜桜」は、まさに花吹雪を散らして、見惚れる我らは歓声をあげるばかり。

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千本通に戻って、五辻通を西に向かうと、「大報恩寺=通称・千本釈迦堂」。花の檻のように枝垂れる「阿亀桜(おかめざくら)」はすっかり葉桜となっていた。だが、醍醐寺の五重塔の次に古い京都市内の建築物である本堂(1227年建立)の前には、八重桜が花開いて艶やかだった。「手弱女桜(たおやめざくら)」だろうか?

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上七軒を抜けて、北野天神を通り、平野神社へ。多種の桜で知られるここは、まだ幾種類も桜が競い合っている。
その中でこの「白雲桜(はくうんざくら)」は、実に清爽な感じで、晴れた空に似合っていた。

デジカメの記録メディアも電池も使い尽くすほど、沢山の名花を撮りまくっても、全行程2時間で回れる西陣は、すごいところである。
そして、この西陣・桜巡りは、京都をそれぞれの視点で鮮やかに写しているblogの方々に刺激を受け、沢山の示唆と教授を頂いた成果である。心からお礼を申し上げたい。

2005年04月19日

東山七条界隈の春景色

花に浮かれていて、小説を書くのがすっかりおろそかになってましたが、そろそろ本腰入れます。
その前に、撮り貯めた東山七条界隈の春景色を。

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京都国立博物館では、「曾我蕭白~無頼という愉悦」展をやっております。
「円山応挙がなんぼのもんじゃ!」と書かれたのぼりが何枚も翻っておりまして、ぎょっとしたりします(笑)

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その博物館から七条通を隔てて南、三十三間堂の東隣は日本赤十字社京都府支部で、血液センターとして機能しております。「血天井」で知られる養源院に並んで血液センターがあるのは、何かの因縁かと思ったりもしますが、その前の枝垂桜はなかなか見事でした。

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博物館の北には秀吉を祀る豊国(とよくに)神社があり、国宝・唐門の黒と金に、桜がよく映えていました。

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豊国神社から西へ正面通を行くと、すぐ左手にあるのが耳塚。
凄惨な歴史を埋めた供養塔も、春の花に囲まれて憩っています。

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豊国神社の西側には、秀吉が建立した方広寺大仏殿の石垣が残っていますが、巨石の隙間から春草が芽吹いていました。

2005年04月18日

春景色・点描

ソメイヨシノは散りゆき、枝垂桜、八重桜が彩る京都の春です。
日々の行き来に、横目で撮ってきた風景を並べてみます。

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4月15日午後、賀茂川西岸の加茂街道の車窓から、「半木(なからぎ)の道」の枝垂桜

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4月16日午前、岡崎の京都市動物園から、疏水を望む

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上に同じ、疏水の桜

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動物園内、イワトビペンギンのプール

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4月15日午後、わしのほか、誰一人訪れる者なき、山科神社
山影に玲瓏と咲く一樹
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4月17日昼下がり、醍醐と小栗栖の間を流れる山科川の岸辺

2005年04月15日

小説「流れのほとりで」第六回

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 その喫茶店は山科の住宅街にあって、洋館が違和感なく郊外の景色に溶け込んでいる。
 英輔は、暖炉の前の席に美沙子を導いて腰掛けた。
「年季の入ったテーブル・・・市外にもこんな素敵なお店があるのね、京都って」
「あの、ここも京都市内なんですけどね」
 目を輝かせて室内の調度を見まわす美沙子に、英輔は苦笑した。ベイクドチーズケーキと紅茶を二人分注文すると、英輔は真顔になり、テーブルに手を置いて美沙子に訊ねる。
「それで、ご主人に内緒で、相談というのは・・・?」
 茶色のスーツ姿の美沙子は、白い首を曲げて、窓の外を眺めた。独り言のように言う。
「あの、沢井っていう人が、恩田にさせようとしている仕事・・・ご存知?」
「いや・・・私は、ガイドですから。ただお客様に京都を案内するだけですよ」
「京都のおんぼろ民家を、できるだけ安く改修して、まちや、に見せかけて、喫茶店や雑貨屋をしたいと思っている人に売りつける・・・いんちきな商売の片棒を担がされようとしてるの」
 英輔は言葉に詰まり、コップの水を飲んだ。

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「私は、京都が好き。なんか、日本の中でも、ひとつだけ特別に憧れる街。だから恩田には、そんな、京都を壊していく仕事に関わって欲しくないの。南原さんも、京都のガイドなら、京都を守っていきたいでしょ?なんとか、ならないかしら・・・」
 紅茶とケーキが運ばれてきた。英輔は黙ってフォークを取り、チーズケーキを口に運んだ。美沙子もそれに習う。
「・・・美味しい!」
「でしょ?・・・ここは、30年、ケーキも、料理のソースも全部手作りでやってきたお店なんです。それこそ、こんな郊外の不便な場所でね。値段は安くはない。でも、この店を愛する人は多い。だってここは、憧れの店だから・・・そうですね、京都も、憧れの街でいなくては、いけないと思いますよ」

2005年04月15日

京都と中国の絆

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平安神宮を中心に、桜見物の人々で賑わっている左京区岡崎。琵琶湖疏水には、十石舟が浮かんで、岸辺の桜を愛で、花吹雪を浴びながら優雅に行き来している。
そんな中、京都国立近代美術館から疏水と道路を隔てて南側に、不思議な建物があるのをご存知だろうか?
凝った装飾に彩られた四角いビルの屋上に、八角形の屋根を持つお堂が載っている。
「藤井斉成会有鄰館 (ふじいさいせいかいゆうりんかん)」という、美術館なのである。
わしは昔、この建物を能楽堂だと勘違いしていたが、藤井紡績の創業者・藤井善助という人物が、収集した八千点を超える中国美術品を展示する目的で1929年に建てたそうだ。
そして、ひときわ目に付く、この屋上の八角堂は、なんと中国の北京の故宮=紫禁城の一角にあった建物なのだ!
1924年、当時の北京で道路拡張工事が行われ、紫禁城の西北が一部分削られることになり、そこにあったこの八角堂が、中国大使やその舅であった犬養毅らの斡旋で、京都の岡崎にやってきたのである。
屋根の瓦は、1737年(乾隆2)に焼かれた瑠璃瓦、軒丸瓦には中国皇帝を象徴する五爪の龍の紋様、八角の棟には龍、獅子、麒麟などの「走獣」と呼ばれる魔除け人形が載っている。丸ごと美術品というべきお堂である。

藤井氏は中国の美術・文化を愛し、貴重なこの建物を惜しんで移転を引き受けたのであろう。しかし、その後の日本と中国の関係は戦争へと突き進んで行った。そうなっては、軍国日本が中国の文化遺産を略奪したような形になってしまったのではないだろうか。多大な犠牲と引き換えに、平和は戻った。岡崎の八角堂は、そんな歴史の痛みを刻みながら、両国友好の絆にしていくべきであろう。

今、中国では反日デモが荒れている。
「愛国無罪」などと喚いて乱暴狼藉を働く輩を見ると、感情的に怒りが湧く。
しかし、こんなときこそ、いろんなモノを振り返ってみなければいけないと思う。
岡崎もそうだが京都の桜の名所の一つに、嵐山が数えられるだろう。
その中ノ島公園には、「日中不再戦の碑」が建っている。
桜を愛でる人々よ、岡崎や嵐山には、そんなものもあることを知って欲しい。

2005年04月13日

養源院の枝垂桜

東山区の三十三間堂の東側に、養源院というお寺がある。
伏見城の遺構を移したという本堂は、俵屋宗達描く迫力ある襖絵や杉戸絵に飾られる。
さらに、その廊下の天井は、関ヶ原の役に先立つ伏見城攻防戦で自刃した鳥居元忠たちの血の滲み込んだ床板を張ったもので、「血天井」と名高い。
薄暗い本堂内で、血天井を見上げ、魁偉とも言うべき杉戸絵に面すると、ぞくぞくするのである。
しかし、時は春、その本堂前には、素晴らしい二本の枝垂桜が咲き誇っているのだ。

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修学旅行シーズンで、制服姿の少年少女たちが、途切れることなく枝垂桜のカーテンをくぐってやってきていた。
彼らの記憶に、このお寺はどんな風に残っていくだろう。

2005年04月12日

都路里の煎茶

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我が家では、孫の顔を見にやってくる、嫁さんのほうのばあちゃんを迎えてもてなすのに、よく京都駅の伊勢丹デパートを利用するのであるが、中でもばあちゃんのお気に入りはここの六階にある「茶寮・都路里(つじり)」である。
ここではばあちゃんの定番は抹茶。先日はじいちゃんも一緒で、珈琲を所望したが、ここには日本茶しかないので「じゃあ、煎茶なら手軽でええやろう」と注文したら、上の写真のようなすごい一そろいが出てきて、仰天したのだ!

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それに加えて、お湯はごつい鉄瓶で「熱いのでお気をつけて」という言葉と共に登場。じいちゃんは恐れをなして逃げた(笑)

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何しろ、湯冷ましの器に、温度計が付いているのである。70℃になったら急須に注ぐべしと、丁寧に説明書に書かれている。

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そして、急須に蓋をしたら、水時計をひっくり返し、中の白い球が三分の一まで浮上したら湯呑に注ぎ出し
一滴も残さずしぼりきることが大切

そうやって飲んだ煎茶はさすがに、旨みが段違いで、カフェイン苦手であまりお茶に詳しくないわしでも、感服したのである。
白玉あんみつか白玉団子(抹茶蜜・黒蜜が選べる)が付いて700円(税別)。煎茶というものに対する観方に変革を与えてもらった。

2005年04月12日

桜に雨の智積院

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雨に濡れる東山の智積院。朝の勤行の声が響く中、桜の花が盛りでした。

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決して桜の樹は多くないけれど、明るく澄んだ花の色です。

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この生垣の紅の新芽の鮮やかなこと・・・

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ここのお坊さんたちは黄色の袈裟をまとい、すれ違うと必ず会釈をしてくれます。

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