先日以前在社していた代理店の後輩からの手紙が届きました。
Web3.0 になろうという今の時代に丁寧な文書というのは、
ある種新鮮な気持ちになりますね。
IT社会での情報が飽和状態になっている今、
人の気持ちはメールではなくて、
直筆のほうが人の心に訴えるようです。
ありがたいことです。

謹啓 
八雲様

函館の五稜郭では桜が満開となりました。
ご無沙汰しております。お元気でいらっしゃいますか。
八雲先輩がお辞めになってから、
一年が過ぎようとしております。
当時先輩は、
創業者会長や上司への長年にわたる提案を却下され、
会社を見限って去って行かれました。
まだ誰もやったことのない、
新しいものばかりに目をこらす先輩の姿は、
私には新鮮に映り、いまでもご尊敬申しあげております。
八雲先輩に対する目上の人達や同僚の人たちは、
企画や提案を阻止しようと役員まで巻き込み、
保身派閥を多く作りました。一匹オオカミの八雲先輩は、
それでもマイペースで通されました。私の眼には、
坂本龍馬さんのイメージが湧いておりました。
今の時代のネット社会が台頭する10年前、
グーグルやヤフーやブログ、SNSの予見をされていました。
私はいけないと思いながらも、
内緒で先輩の文書を複製いたしました。
いま読み返してみても、先輩の先見力には驚愕している次第です。
現代のノストラダムスと言うのは、大袈裟かもしれませんが、
それくらい言い当てていたのです。
八雲先輩の提案を取り入れなかったばかりに、
会社のほうはIT企業に買収され、
大量のリストラの嵐は未だに止みそうにもありません。
買収した企業は失敗したと思ったのでしょう。
でももうあとの祭りです。創業者一族は株を全部売却、
隠し資産も海外にかなりあるという噂が、
2chで飛び交っておりますが、
定かではありません。
代理店の機能はなくなり、クライアント失っている今、
座して死を待つしかないのです。
派閥争いに躍起になっていた経営陣の責任も大きいですね。
Webに無関心だった諸先輩や、
裏リベートに明け暮れたおびただしい営業マン、制作マン。
先輩が島耕作だったら、
こんな結果にはならなかったでしょう。
先輩は昨年、奥様を亡くされました。
風の便りで耳に致しました。
長年病気を患い介護でご苦労されたと聞いております。
まな娘であるY子さんも離れて行ったそうですね。
さぞかし気を落とされているかと存じます。
このような勝手気ままなお手紙を差し上げ、
恐縮に存じておりますが、先輩だけには私の胸の内を、
お伝えしておきたかったのです。
ご迷惑でしたらご容赦下さいませ。
後日機会がございましたら、ご一献たてまつりますよう
お願い申し上げます。

敬具


土方歳三



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