書名の「醜女」には「ブス」というルビがついている。そのたたずまいの異様さのせいで、気にはなるがどうにも読む気がしない一冊だったが、著者の紹介記事を読んで手を伸ばしてみる。
ロシア語の同時通訳者である著者が、通訳と翻訳の違いや訳の性質、文脈、コミュニケーションといった言語にまつわる諸々の問題をおもしろおかしく説いてゆく。書名は、「原文を裏切っているが整った訳文か、原文に忠実だが聞き苦しい訳文か」という「いい訳とは何か」に対する二択を表している。
通訳がコミュニケーションの補助手段である限り、行動範囲は無限にある。未知な情報を日々勉強し、訳出する際には沈黙を極度に恐れ、過ちを犯しては深く恥じ入りつつも忘れてしまう精神力も合わせ持ち、何より日本語に堪能でなければならない…そんな世界の住人というだけで尊敬してしまう。
同時通訳と逐語通訳の違い、通訳と翻訳の違い、原発言、冗語性、等々、曖昧な意味しか知らない言葉や聞いたこともないような言葉に戸惑う一方、テーマ(既知の情報)とレーマ(未知の情報)を的確に区別してレーマのみを訳すことで簡潔な訳となる、という例は美しいVBAコードを書くこととぴったり重なり一人感銘を受けた。コードも言語なのだ、と。逆に、しきりに意味不明な分野として出されるが自分はその意味を知る分野である考古学の学会発表例は、ばっさり切り捨てられる重要事項を残念に思い、やはり一番いいのは日露の学者が言語に堪能なことだと通訳の限界を見る思いがする。
通訳という口語を生業としているためか一般受けするようなくだけた例が多いのには閉口したが、そこはロシア文化に通じているからなのだろう。逝去が惜しまれる強い女性。
978-4-10-146521-0
ロシア語の同時通訳者である著者が、通訳と翻訳の違いや訳の性質、文脈、コミュニケーションといった言語にまつわる諸々の問題をおもしろおかしく説いてゆく。書名は、「原文を裏切っているが整った訳文か、原文に忠実だが聞き苦しい訳文か」という「いい訳とは何か」に対する二択を表している。
通訳がコミュニケーションの補助手段である限り、行動範囲は無限にある。未知な情報を日々勉強し、訳出する際には沈黙を極度に恐れ、過ちを犯しては深く恥じ入りつつも忘れてしまう精神力も合わせ持ち、何より日本語に堪能でなければならない…そんな世界の住人というだけで尊敬してしまう。
同時通訳と逐語通訳の違い、通訳と翻訳の違い、原発言、冗語性、等々、曖昧な意味しか知らない言葉や聞いたこともないような言葉に戸惑う一方、テーマ(既知の情報)とレーマ(未知の情報)を的確に区別してレーマのみを訳すことで簡潔な訳となる、という例は美しいVBAコードを書くこととぴったり重なり一人感銘を受けた。コードも言語なのだ、と。逆に、しきりに意味不明な分野として出されるが自分はその意味を知る分野である考古学の学会発表例は、ばっさり切り捨てられる重要事項を残念に思い、やはり一番いいのは日露の学者が言語に堪能なことだと通訳の限界を見る思いがする。
通訳という口語を生業としているためか一般受けするようなくだけた例が多いのには閉口したが、そこはロシア文化に通じているからなのだろう。逝去が惜しまれる強い女性。
978-4-10-146521-0


