これは、すごい!紛れもない傑作です。
冒頭から、ただならぬ気配。
父アショケは、22歳のとき、祖父を訪ねて列車に乗る。その列車が、大脱線事故に遭い、アショケも巻き込まれてしまう。この時、手に持っていた1冊の本が、アショケを救うことになる。この本こそ、ロシアの作家ゴーゴリの「外套」。
物語全体がこの冒頭の父親の事故が影響しているので、敢えてネタバレして書いてしまいます。やがて、結婚しアメリカに渡り、子どもをが生まれます。名付け親になってもらおうと、依頼していた祖母からの便りが、なぜか届かない。父はゴーゴリという名を、この子どもにつけることにする。
そこから、息子ゴーゴリの人生が語られていきます。しかし、事件があるわけでもなく、ただ淡々と幼少時からの家のこと、学校のことなどが綴られていきます。
そして、成長したゴーゴリは自分の名前にコンプレックスを感じ、改名してしまいます。ゴーゴリと家族、そして出会っていく女性との生活など、丹念に丹念に書いていきます。
そして、さまざまな死と別れを経験していきます。父と母とのエピソード。名前に隠された秘密なども徐々に分かってきます。自立をしていくゴーゴリ。そして、離れ離れになる家族。静かに静かに、感動が押し寄せます。
そして、ラスト。まるで映画を見るような展開。あー、だめだと思いつつ、泣いてしまいました。
名前にコンプレックスを持っていたのではなく、自分を形作っている、故国インドでの生活習慣やその生い立ちにコンプレックスを持っていたのですね。その代表が、名前だったんです。
そんなゴーゴリの半生も30歳までしか、書かれません。わたしとしては、もう少し読んでみたかったなー。短すぎるんですよ。もっと、この家族の話を読んでみたいのです。
しかし、この作者がうまいのは、ここで敢えて終えていることなんですね。
ゴーゴリはいろんな経験をして、人生を生きていくんでしょう。名前は自分を表すIDだけれど、決して名前だけがすべてではないということが、しっかり分かっていますから。
アメリカに行けば、自由を得られる。名前までも変えることができると喜ぶ、ゴーゴリ。何と皮肉な書き方なんでしょう。
故郷を忘れられない、両親と故郷を知らない子どもたち。その姿がまたおかしいんですよ。
しみじみと胸にしみ込む、これは傑作でしょう。しみじみとこの物語を読まれることをお勧めします。





