まじめさゆえに窮地に陥ってしまう愛すべき隣人たち。
どこかで身に覚えのある危うい心、共感せずにはいられないミステリー集。
家庭がありながら運命的な出逢いをしてしまった2人、人の世話ばかり焼いてしまう癖を恋人に咎められる青年、息子が事故に遭遇しても足がすくんで助けられない夢にうなされる母親、隣室の女性がストーカーに殺されたのに何もしなかったと非難される男。誠実な人々の窮地を描いて共感を呼ぶミステリー集。【講談社HPより】


面白かったなー。どの作品の主人公たちも、少し変わったところもあるが、多くはいたって真面目で平凡な人たち。ただ自分たちのルールを守りたいだけ。そんな主人公たちが、事件に巻き込まれてゆくんです。

「バクのみた夢」の主人公は、不倫カップル。お互いの家庭を持ちながら、出会った瞬間、惹かれあってゆくのですが、真面目(?)だから、お互いがお互いの家庭を思いやり、どちらかが死ねば解決しようと思い立つ。そして、選んだ方法とは。不倫に真面目も何もないか。不倫をジメジメとしないで、さっぱりとしたミステリーと仕上げているところがいいですね。

「カンガルーの袋」の主人公は、二卵生双生児の兄妹。相手のことを気遣いすぎる兄と、わがままな妹。そんな妹が兄の彼女に挑戦を突きつけたこととは。

「駅で待つ人」…駅で待っている人を見るのが趣味の主人公。誰を待っているのか分からない彼女が、気になる。そして、現れたのは…。

「とっさの場合」…主人公は強迫観念症の主婦。息子が目の前で死んでしまうという、悪夢にさいなまれている。そんな彼女が、夫の前でとっさにした行動とは。

「マリッジブルー、マリンブルー」…婚約相手の実家に立ち寄る手前に海岸を訪れた男。しかし、この海岸のは見覚えがある。かって、男には事故にあい、二日間の記憶がなくなっていた。その二日間に何があったのか。

「無言電話の向こう側」…仕事を通じて仲良くなった友達。しかし、その友達は、隣人の女性が殺され、何もできなくて、批難をうけていた。そんな友達が、3時8分になると、無言電話がかかることに悩まされていた。その真相は。

この六話なんですが、わたしが好きなのは「バクのみた夢」「とっさの場合」「無言電話の向こう側」かな。特に「無言電話…」の樽見君は本当にいいやつだ。相手をき傷つけないように、納得させるなんて、少し勉強になりました。いいやつだけに事件を引きずっているんですね。

この作品は、普通で平凡な人たちが、事件に巻き込まれるお話ですが、これはすなわちわたしたちの身近なお話と捉えた方がいいのかもしれません。わたしたちも、いつこの人たちのように、巻き込まれるかわかりませんねー。
「マリッジブルー…」の主人公の記憶をなくした怖さ。これも気をつけよう。経験のある身としては。と、自分を戒めてみる。

最後の一行までじっくりと読んでください。あっと言わせてくれます。やはりこれは、ミステリなんですね。面白かった作品です。
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