さて、死ぬほど時間がないのでさっさと内容に入ろうと思います。睡魔が僕の読書時間をあっさり奪っていくのです…。
本書は、かつて単行本として出版されていた「星虫」(こちらは第一回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作)・「イーシャの舟」の合本に、「バレンタイン・デイツ」という書き下ろしの短編を収録した作品です。

「星虫」
地球環境はあと100年で崩壊してしまうと予測されている世界で、宇宙飛行士になりたいと思っている高校生の氷室友美。世界では、宇宙空間に人工の居住環境を作り出すプロジェクトが始まろうとしていて、きっといつか宇宙飛行士の需要があるはずなのだ。
しかし、宇宙飛行士になりたいというと、笑われるか猛反対されるかのどちらかだったこれまでの人生を振り返って、友美は優等生のフリをして過ごすことにした。学校では優等生だが、宇宙飛行士になるためのとレーニングは欠かさない。
そんなある日のこと。世界中の人々の大半にとんでもないことが起こった。
夏休み最後の日。後に<星虫>と名付けられることになる宇宙生物に多くの人が寄生されることになったのだ。この生き物は人間の額に吸着することで、宿主のあらゆる感覚を増幅させるという能力を持っていた。
人体に害はなさそうだということでそのままにしている人が多かったが、しかし次第に状況は変化していく。<星虫>に振り回される一週間を描いた作品。

「イーシャの舟」
廃品回収を営む偏屈婆に奴隷としてこき使われている年輝は、ある日山で美女の頼みを聞いて池に向かったところ、そこで恐るべき怪物を目にしてしまう。友人に話をすると、それは天邪鬼ではないか、という。何にしても妖怪だ。妖怪は場所に憑く。年輝に憑くということはないだろう、ということだった。
しかし年輝は、家にいる時もその怪物を見てしまうことになる。
年輝に頼みごとをした美女は、その怪物は幻覚だという。池に幻覚物質が埋め込まれていたのだ、と。しかしそうではないことは年輝が一番よく知っている。
年輝はその怪物と一緒に暮らすことにしたのだ。
暴れん坊で困った奴だが、どうにも憎めない。まるで昔飼ってた犬みたいだ。世話は焼けるけど、毎日が楽しい。
しかし、年輝が初めて怪物を見かけた池からとんでもないものが発見されて、事態はどんどんおかしな方向へ進んで行き…。

「バレンタイン・デイツ」
星虫事件で有名になった氷室友美と相沢広樹は、バレンタインデーのこの日、<初デート>をすることになった。しかしぎこちない。そんな時、ある夫婦に出会うことになるのだが…。

というような話です。
売場に置いててそこそこ売れていたのと、「星虫」という作品が第一回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作だと知って読もうと思いました。第一回日本ファンタジーノベル大賞と言えば、新人賞のレベルを桁違いに超えていると言われた(それぐらい高い評価だったと思う)、酒見賢一の「後宮小説」が大賞受賞だった回で、その最終候補に残ったというならなかなかレベルは高いんじゃないか、と思ったわけなんですね。
期待がちょっと高すぎたのかもしれないけど、全体としてはまあまあという感じでした。
どちらの作品も、結構面白いんですけど、うまく説明できないけど、なんか足りないよなぁという感じがしてしまうんですね。
でそれは、ライトノベルを読んだ時に感じるような物足りなさなんです。ライトノベルも、まあ悪くないかなというレベルのものもあるけど、それでも何か物足りないと感じることが多いです(そんなに読んだことはないんだけど)。本書は、僕が読んだ合本版では表紙がライトノベルっぽい感じになってるけど、元々は新潮社が単行本として出しているので、ライトノベルっぽい感じではなかったと思います。本の作り(表紙とか挿絵とか)がライトノベルっぽかったからそんな風に感じたのかもしれませんけど。
「星虫」にしても「イーシャの舟」にしても、異形の存在が出てきます。「星虫」の場合は<星虫>という謎の生物、そして「イーシャの舟」の場合は天邪鬼と呼ばれる変な妖怪です。どちらの話も、この異形に人類が振り回されていく、という感じの話です。あ、一応ですけど、「星虫」と「イーシャの舟」というのは話としては関連性のある物語です。
どちらも異形の存在があれこれ振り回す話なんだけど、でもがっちがちのSFという感じでもないんです。というかSFっていうかファンタジーですね、やっぱり。人間関係とか仲間同士でのやり取りとか、そういう部分が結構面白い作品で、それもやっぱりちょっとライトノベルっぽいかもとか思いました。
キャラクターは、いろいろと違和感を感じる部分がないではないけど、でもなかなか魅力的なのがいたなと思います。「星虫」の方では、やっぱり氷室友美と相沢広樹でしょう。友美は本当の自分を隠して優等生を振舞っているオテンバ娘で、段々と地が出てくる。藍沢は、<寝太郎>と言われるくらいいつも寝てばっかりの適当な男だったのに、これもどんどん変わっていく。その二人の変わりっぷりはなかなか面白いです。この二人が、信念を持って<星虫>と対峙する辺りはなかなかいいなと思いました。
「イーシャの舟」の方では、年輝と天邪鬼がよかったですね。年輝は巨漢で怪力なんだけどお人好しの馬鹿で、なんだかいろいろヤキモキしますね。もう少しずるく生きてもいいだろう、と何度も思います。まあでも最終的には、そのお人好しの部分がよかったんだろうなぁ。天邪鬼は、まあこれはこれで困った奴ですけど、どんどん変わっていくんでその成長っぷりが面白いですね。まあ、ちょっと違和感を感じる部分もないではないですけどね。
あと、ツンデレの和美とか、スーパー小学生の純とか、なかなか面白いキャラクターが揃っていたなと思います。
時間がないのでこれぐらいにしますが、全体としては普通に面白く読める作品だと思います。すごく絶賛というわけでもないので、期待しすぎないで読めば結構面白いと思います。

岩本隆雄「星虫年代記1 星虫/イーシャの舟/バレンタイン・デイツ」


■GOOD JOB!
この記事よいネ!クリック!→