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2011年02月01日

「聖夜」佐藤多佳子

聖夜 ― School and Music
聖夜 ― School and Music
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 1,450
  • 発売日: 2010/12/09
  • 売上ランキング: 12553


「第二音楽室」につづく、School&Musicのシリーズの第二弾です。
「聖夜」というだけに、クリスマスイブまでに読めたらよかったけれど、読んだのは1月でした。

「第二音楽室」と同じコンセプトの、学校と音楽にまつわるお話だったけど、
前作とだいぶ雰囲気が違って、戸惑いながら読みました。
前のは、多少暗い話があるにせよ、全体的にはさわやかな、誰にでもお薦めできる、
温かいお話が多かったのです。主人公たちも、ちょっとひねくれてる時もあるけど
だいたいが素直で、かわいらしいかったんだけれど。

今回の主人公はずいぶんひねくれてました。
また、宗教音楽とか、オルガンとか、メシアンとか、あまりなじみのないジャンルだったのも、
ちょっととっかかりが悪かった理由かもしれないです。

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2011年01月31日

「第二音楽室」佐藤多佳子

第二音楽室―School and Music
第二音楽室―School and Music
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 1,500
  • 発売日: 2010/11
  • 売上ランキング: 8208


佐藤多佳子さんの久々の新作、二冊連続刊行だというのでとても楽しみでした。
いろんな作家さんの本を読んでますが、老若男女誰にでもお勧めできる作家さんって、
いそうであんまりいないんですけど、佐藤さんの本はほんま誰にでも薦められますね。
教科書にも採用されているようだし児童書が多いのもあって若い人にももちろんだし、
私みたいな30代以降の世代にも。若かったころを経験したことのある人なら、
佐藤さんの作品に出てくる少年少女たちに、きっと共感できると思うのです。
となると、誰にでも薦めたくなりますよね。すごい作家さんです。

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2010年12月03日

「永遠のジャック&ベティ」清水義範

永遠のジャック&ベティ (講談社文庫)
永遠のジャック&ベティ (講談社文庫)
  • 発売元: 講談社
  • 発売日: 1991/09


そうだった、清水さんの本を電車で読んではいけないんだった。
と思ったのは電車に乗って表題作を読み始めてからだった。

英語の教科書で会話をしていたジャックとベティが、大人になって出会ったら、
さてどんな会話になるのか・・・。

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2010年10月24日

マルガリータ

みげるは南蛮に行きさえしなければ、あのような酷い生涯は送らずにすんだのでございます。

「マルガリータ」村木嵐著(文藝春秋) ISBN: 9784163295107

帰国した千々石ミゲルはなぜ、4人の天正遣欧少年使節のうちただ一人、棄教したのか。彼は生涯、誰を思って生きたのか。

信長から秀吉、そして徳川の治世へ。支配者の変遷、大名たちの生き残りをかけた権謀術数に、ミゲルと日本のキリシタンたちが翻弄されるさまを、約300ページにわたり丹念に描く。痛ましい迫害、時にはすすんで殉教を選んでしまう信者たちの心根には出口が見えず、読んでいて息苦しいほどだ。
一度は心の支えと思ったものが、時代によって否定されることの悲痛。ヨーロッパからきた宣教者たちの思惑さえ絡み合う。それをみているしかなかったミゲルの妻、珠(たま)がありったけの疑問をぶつけるクライマックスに迫力がある。

著者は司馬遼太郎夫人、福田みどりさんの個人秘書という経歴です。松本清張賞受賞。(2010・10)

2010年10月12日

「熱帯の夢 」茂木 健一郎

「熱帯の夢 」茂木 健一郎
集英社

子どもの頃から 憧れていた 熱帯雨林の生態系。昆虫採集を きっかけに 育まれた旅への焦燥。
初めて訪れるコスタリカの自然では、いったい何が 待ち受けていたのか。

この前から 気になっていた 集英社新書ヴィジュアル版 6冊目

場所さえおぼつかなかった コスタリカの 夢のような数日。私も連れて行ってもらいました。
こういうのだと虫刺されも 蛇も 怖くないからいいわ。


〇既読の集英社新書ヴィジュアル版
「フランス革命の肖像」 佐藤 賢一
「澁澤龍彦 ドラコニア・ワールド 」澁澤 龍彦
「愉悦の蒐集 ヴンダーカンマーの謎 」 小宮 正安
「藤田嗣治手しごとの家」林 洋子
「フェルメール全点踏破の旅 」朽木 ゆり子

〇虫関連
「三人寄れば虫の知恵」奥本・養老・池田:虫好きの三人の対談だったと思う。
「エンプティー・チェア」ジェフリー ディーヴァー:虫好き少年が出てくる。
「闘蟋―中国のコオロギ文化」瀬川 千秋;不思議の国 中国だよ。コウロギを 戦わせる話。
「昆虫探偵―シロコパκ氏の華麗なる推理 」鳥飼 否宇 ;あんまり好きじゃなかったけど・・
「虫嫌いの田舎暮らし」今関 知良 :こっちはノンフィクション。農業は虫との闘い?
「情熱の女流「昆虫画家」―メーリアン波乱万丈の生涯」中野 京子:題名どおり。すごい人だよ。
〇蝶
「風精(ゼフィルス)の棲む場所」柴田よしき
「黄金蝶ひとり」太田 忠司
「蝶のゆくえ」橋本 治
「見えない博物館」池澤 夏樹
「図書館の女王を捜して」新井 千裕

2010年09月26日

「あられもない祈り」島本理生

あられもない祈り
あられもない祈り
  • 発売元: 河出書房新社
  • 価格: ¥ 1,365
  • 発売日: 2010/05/13
  • 売上ランキング: 166405
  • おすすめ度 2.0


島本さんの本は何冊か読んでいるけど、数年前の話。
当時は「ナラタージュ」がよくて、そのあと何冊か続けて読んだのだった。
で、数年ぶりに手に取ったのがこの「あられもない祈り」だった。

「私」は、「あなた」からの告白に何度も首を振り続けた。
「あなた」は結婚が決まっていた。「私」は、直樹という男性と暮らしていて、
母は劇団の演出をしている父と二人でよく「私」を放っていたけど、
今は「私」に頼りきりで、金の無心をしてくる。
直樹は少し壊れている。「私」はいつしか、「あなた」に救いを求める。

2010年09月05日

「舞姫通信」

「思い詰めて、どこが悪いんだ」

「舞姫通信」重松清著(新潮文庫) ISBN: 9784101349114

研究に挫折し、しかたなく教師に転じた27歳の岸田。赴任した女子校では十年前、みずから宙に踊った「舞姫」という生徒のことが伝説となっていた。

ずっと積んでいた文庫を読んだ。簡単に解決の道が見えるわけではない、生真面目な空気は、この著者らしい。でも、名前の覚えが悪い教師と気まぐれな女子高生たちという、さほど深くはない人間同士のつながりに、一筋の光明が差す。

解説はなくて、かわりに著者による「文庫版のためのあとがき」がついている。それによると、フリーラーターとしての初仕事は岡田有希子に関する本だったという。そして、この作品の単行本が出たのは、いじめの問題がクローズアップされていた1995年。さらに10数年がたっても、若者が抱える悩みや、希望なき衝動は決して癒されていないけれど、私たちは諦めずに、しつこく考え続けるしかないのかもしれない。(2010・9)

2010年09月05日

「しゃべれどもしゃべれども」

どの顔も、どの顔も、自分のこれからに自信や希望がもてないで困っていた。
 その困っている連中に、俺はなぜか落語を教えていた。俺自身が落語に困っているというのに、教えているのだった。

「しゃべれどもしゃべれども」佐藤多佳子著(新潮文庫) ISBN: 9784101237312

噺家二つ目の今昔亭三つ葉は、ひょんなことから素人に落語を教えるはめになる。ハンサムなのに口べたなテニスコーチ、とんでもなく無愛想な元女優…。個性的な面々との葛藤と成長の日々。

SNS「やっぱり本を読む人々。」選出「100冊文庫+20」のうちの一冊を、旅先に持参して読んだ。これが初の佐藤多佳子さん。

巻末の北上次郎さんの解説にもあるように、明るくて軽妙で、すいすい読めるけれど、ちょっと違和感のあるイメージが巧妙に散りばめられていて、深みを感じさせる。人って、嬉しいときでもただ笑うだけじゃないし、平凡な日常も平凡なだけじゃないんだなあ。

落語を覚える「生徒」たちが抱える悩みは、短く言うとコミュニケーションの問題だ。周りの人の気持ちがわからないわけではなく、わかり過ぎてしまってややこしくなる、というあたりが、なんとも今日的で身につまされる。
登場人物は、「坊ちゃん」とあだ名されるほど直情型の主人公・三つ葉はもちろん、ほんの脇役に至るまで皆、生き生きして魅力的。個人的には特に、ダンディーで毒舌で、古典落語を「現代に通用しない」と痛烈にくさしながらも愛してやまない白馬師匠がお気に入り。(2010・8)

2010年08月27日

かたみ歌

かたみ歌 (新潮文庫)かたみ歌 (新潮文庫)
(2008/01/29)
朱川 湊人

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時は昭和30年代末から40年代。東京の下町、アカシア商店街。

レコード屋のスピーカーからは「アカシアの雨がやむとき」が流れ、「幸子書房」という名の古本屋の店の奥では、芥川龍之介似の老店主がいつも煙草をふかしている。

商店街にほど近い「覚智寺」というお寺のどこかはあの世に繋がっているらしい。


「ですから昔から、この寺の近くでは奇妙なことが、ちょくちょく起こるとか起こらないとか……きっと何かが、ねじくれてしまっているのでしょうね」


古本屋の店主の言葉通り、アカシア商店街とその周辺で起きる不思議なできごとを描く連作短編集。


私の記憶にある「昭和」はもう少し後なのに、なぜかほのぼのと郷愁を誘われる。

何もかもが今ほど便利ではなくて、誰もがもっとのんびりしていた時代。


世間を騒がせた大事件から、当時の流行歌、ドラマなど、時事風俗を絡めつつ、生者と死者のほんの一時の交流や、時空を超えた恋の行方など、作者の語りの巧さに引き込まれ一気に読んだ。


「紫陽花のころ」「夏の落し文」「栞の恋」「おんなごころ」「ひかり猫」「朱鷺色の兆」「枯葉の天使」の全7編。


「夏の落し文」は、重い小児喘息を患う小学3年生の弟 啓介と、歳に不釣合いなほど聡明な小学5年生の兄 秀則のお話。

ある年の夏、アカシア商店街のあちこちに、奇妙な貼り紙が見つかる。

全てがカタカナの筆文字で書かれたそれは、どうやら啓介がこの夏の間に死ぬという予言らしい。

どう考えてもこの世の者ではない貼り紙の主の正体もさることながら、この あまりにも出来過ぎた兄はいったい何者だったのかと思う。


「優しくされて嬉しいと思ったら、お前も誰かに優しくしてあげろよ。そしたらいつか、世界中のみんなが優しくなるから」


こんな言葉をさらりと言える兄を、弟が自慢に思わないわけがない。


世の中の悲しいことのすべてを見たようなあんな目が、わずか十歳の少年だった兄になぜできたのだろう。


難病を患う子どもの中には、歳不相応に達観した目をした子どもがいて、聞き分けがよくて我慢強いのが、周りの大人にしてみると余計に不憫で切ない。
この兄は、そういう子どもたちを思い出させる。

勉強もスポーツも何でもよくできて、弟思いで、健康な少年が、そんな目をしていたのだ。


啓介にとって、兄 秀則は、永遠のスーパーヒーローに違いない。

最後の一文に、あやうく泣きそうになった。



「栞の恋」は、ジャック・フィニイの短編「愛の手紙」を髣髴とさせる。

あちらはアンティークの机、こちらは戦時中に出版された稀覯本。

けれど、こちらの結末のほうが より切ない。



「ひかり猫」は、漫画家を夢見て上京してきた「私」の部屋を訪ねてくる 魂だけの猫のお話。

生きている猫の仕草そのままに、「私」にじゃれつく光の球のような猫がかわいらしい。


世の中には―――寂しい思いをしているものが、たくさんいる


ひかり猫の正体を知った「私」は、しみじみとそう思う。


自分だけが寂しい、辛いと自分自身を哀れむことは、とても簡単で心地良い。
でも、それだとそこで行き止まってしまう。


郷里に帰って、ほかの仕事をしながらも夢を諦めずに漫画を描き続けた「私」は、辛くなる度にひかり猫を思い出す。
そうして、もう少しがんばってみようと思う。


良いお話だった。
謙虚で努力家で、心優しい彼が ちゃんと報われる結末だったことにほっとする。
ひとつ前のお話が、どうにもやりきれない結末だったもので…

そういう意味でも、話の順番って大事だなぁと思った。



最終話の「枯葉の天使」では、ようやく幸子書房の店主の過去が明らかになる。

時系列がバラバラだということに今更ながら気付き、一話目の「紫陽花のころ」で、店主が額に入れて眺めていた桜の枯葉はこれだったのか!と納得。

最終話は、「おんなごころ」の事件の数年後で、「紫陽花のころ」よりも前の出来事ということになる。


「難解な言葉なんか一言たりとも使っちゃいないのに、この豊かな詩興はどうだろう」という感想、そして辿った生涯からも、金子みすゞを連想させる夭折の詩人と 幸子書房の店主の繋がりはすぐに察しがつくが…
予想外の展開が待ち受けている。



後年、寂れてしまったアカシア商店街の描写がところどころに見られるが、その物悲しさも、最終話で時間がぐるりと過去へ戻ってしまうので、不思議とやわらぐ。
最終話から第1話へと話が繋がるため、あたかも時間の環の中に昭和の一時期が閉じ込められ、ずーっとそこに存在するかのような。


ちょっと怖いけど郷愁を誘われる、良い作品だった。


ただ、帯のあの「涙腺崩壊」というでっかい文字はやめて欲しいと思った(笑)
さあ泣け!と言わんばかりの惹句を見ると、読む前から構えちゃって素直に泣けません。

さくらさんのレビューを読んでなかったら、書店で見かけても、あの帯にドン引きして手に取ることはなかったと思う。

さくらさん、ありがと~^^



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2010年07月16日

「道徳という名の少年」桜庭一樹

道徳という名の少年
道徳という名の少年
  • 発売元: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 価格: ¥ 1,365
  • 発売日: 2010/05/11
  • 売上ランキング: 12341
  • おすすめ度 4.0


普段、amazonの「なか見検索」とか利用したりしてないけど
この本はぜひ、なか見検索やってみてください。読まれてない方。
いかに美しい本か、ちょっとでもわかってもらえると思います。
本文ページのレースのような繊細な模様と色遣いがすばらしくてうっとり。
時折入る、あやしく美しいモノクロの挿絵にもうっとり。
大人のための、素敵で残酷な絵本、という趣です。素敵。

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