「続」というからには当然「巷説百物語」の続編…と思っていたら、ちょっと違った。
「巷説百物語」のそれぞれの短編を繋ぐような形で話が進む。
本書の第1話「野鉄砲」における時間軸は「巷説~」の「小豆洗い」と「白蔵主」の間、第2話「狐者異(こわい)」は「白蔵主」と「舞首」の間…という具合である。
「巷説~」が全7話で こちらが全6話だから、最終話はきっと「柳女」と「帷子辻」の間のお話なんだろうと思って油断していたから余計に、読み終えた後の衝撃は大きい。
なんとも言いようのない寂しさが残る。
迷子になったような、置いてきぼりにされたような心もとなさ。
それはきっと、読者にいちばん近い場所にいる百介の気持ちに寄り添って読んでいたからだろうと思う。
「巷説~」も重いと感じたが、本書に比べれば余程気楽に読めた。
「巷説~」が、全話 「越後の国に」「加賀の国に」というように 地名から始まっていたのに対し、「続~」は全話 「山岡百介が」で始まる。
百介は戯作者志望で、いつの日か百物語を開板することを夢見て、諸国の奇談怪談を聞き集めている蝋燭問屋の若隠居。
「巷説~」の第1話で、偶然 又市一味と出会い、その仕事ぶりを目の当たりにした百介は、彼らの人柄に魅かれ 時々仕事を手伝うようになるのだった。
「野鉄砲」「狐者異(こわい)」「飛縁魔(ひのえんま)」「船幽霊」「死神 ~或は七人みさき」「老人火(ろうじんのひ)」
個々の独立した短編でありながら、4話目までは全て「死神 ~或は七人みさき」に向けての伏線となっている。
「巷説~」では、仕掛け人である彼らの身に危険が及ぶことは なかったように思う。
いや、危ない橋を渡ってはいるけれど、それは後になってわかることで、読者がヒヤヒヤさせられることはない。
だからこそ、仕掛けやどんでん返しを純粋に楽しめた。
けれど、本書の「船幽霊」では、百介やおぎんが かなり危ない目に遭っている。
加えて、「死神 ~或は七人みさき」では、人の心に巣食う底知れぬ闇を垣間見て背筋が寒くなる。
その場に居たなら、きっと 百介同様 気を失ってしまうに違いない、底なしの恐怖である。
収拾不可能にも思える、藩ひとつを丸ごと巻き込んでの大騒動。
又市の離れ技に感心しつつ、事件が解決してもなお埋めることのできない空洞を思うと、「終わった!」という爽快感はない。
「巷説~」では触れられなかった百介の内面が深く掘り下げられ、また、治平やおぎんの壮絶な過去が明かされる、読み応えあり過ぎのずっしり重い一冊だった。
最終話「老人火」は、「死神」の事件から6年後。
一端の戯作者となった百介は、とある事情で6年ぶりに北林藩を訪れる。
胸に穴が空いたような寂しさを覚えつつ、本を閉じた。
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