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2011年06月15日

鋼の錬金術師 プロトタイプ

少年ガンガン 2011年 07月号少年ガンガン 2011年 07月号
(2011/06/10)
不明

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思えば去年の7月号に、鋼の錬金術師の最終話が掲載されたのだった。

もう一年か。早いなー。


で、今年のガンガン7月号には「鋼の錬金術師 プロトタイプ」なるものが掲載された。

まだ鋼の連載が始まる前、読み切りのつもりで用意したネームを見た担当さんに「これ、連載行けそうだから、コンペに出さない?」と言われて、急遽連載用に描き直したのだそう。

その、描き直す前の 最初のネームにペン入れしたのが、このプロトタイプ。


去年のユリイカ12月号の対談を読む限りでは、荒川先生はもう鋼ではなんにも描く気がなさそうだったので、完結してから1年後に こんな形で鋼を読めるなんて思ってもみなかった。

嬉しいなぁ。


第1話とユースウェル炭鉱の話をミックスしたような感じで、大暴れするエドは やっぱり爽快だった。



この話を元に、2ヶ月弱で連載用に描き直し、その後9年も続く壮大なストーリーを練り上げたのは すごいなーと思う。

しかも、その間に出産を挟んで、ただの一度も休載せず。

去年、最終話を読んだ後は、なんかいろいろと勿体ないやら悔しいやらでさんざん愚痴ったし、今もその気持ちは変わらないけども。(その時の感想→「鋼の錬金術師」第27巻


そういえば、いいトシした大人の私には不満がいっぱい残ったけど、本来の対象年齢層の子どもたちは あの結末をどう思ったんだろう?

娘の友だちに 熱烈な鋼ファンが二人いて(二人とも男の子、当時小六)、いつも三人で熱く語っていたらしいので、そのことを娘に訊いてみた。


すると意外にも、最終話が話題になることはないのだと言う。

「暗黙の了解というか、誰もそのことには触れないの」

なんでだ?!
それって、単に終わってしまったのが悲しいから?
二人のうちの一人は、「鋼が終わったら何を励みに生きていこう?」とか言うくらい、私並みに夢中だったよね?

「…う~ん。なんでかなぁ?なんとなく。最終回の後は、会うたびに『映画楽しみだね』って話してるよ」

ということらしい。


彼らの感想を聞いてみたかったんだけど、感想よりもむしろ その反応が全てを物語っているような。

子どもは、大人が思うほど子どもではなかったりする。


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2011年05月12日

きみのかみさま 西原理恵子

評価:
西原 理恵子
角川書店(角川グループパブリッシング)

神さまって知ってる?見たことある?わたし、神さまを探しているの…。世界の子どもたちの目を通して描く「生と死」の物語。ロング&ベストセラー『いけちゃんとぼく』に続く、西原絵本第二弾。 【BOOKデータベースより】

【かみさまは子どもたちの瞳の中にきっといる】

西原さんの本って読んだことなかったのです。どうも、絵本系が苦手で。
あの大震災以降、全く本を読む気になりませんでした。大津波やさらに、原発事故。事実がフィクションを超えており、すべての読み物が空虚に感じられる。
日本は今、すごい経験をしているんだと思う。千年に一度という大災害を目のあたりにしているんですね。

家族を亡くされたかた、今なお行方不明の方、そして、避難所生活をしている方、そして、人災ともいえる原発事故で故郷を出ていかざるを得ない方もいて、やりきれない悲しみが続いています。
そんな時、手にしたこの絵本。作者は、西原理恵子さん。今や売れっ子漫画家さんですね。

どこの国かもわからない、実在するのかどうかも分からないが、大きな喪失感の中で書かれたであろう絵本です。
第1話で少女がベッドの中でつぶやきます。「今日私は、たくさんのおおきなものをなくしたのでどうしていいかわからなくて 神さまにあいたい」
そこから作者と少女と神さまを探す旅に出ることになります。

ゴミが捨てられ、その中で暮らす子どもや貧しい環境で暮らす家族。決して物質的には十分でなく食べるために、必死の家庭。そんなお話が絵本として描かれています。

ここに登場する子どもたちは現実の中でしっかり前を向いて、生きている。かみさまを探す旅は、実はかみさまに出会う旅だったのだ。
子どもという存在が愛おしく、希望であり、この国の将来を担う光であるとするならば、この未曽有の大災害を目をそむけずに、一緒に頑張りたいと思う1冊でした。
(感想表題は、小川洋子さんのPOPから引用しています)

2011年05月02日

いたいけな瞳 8

いたいけな瞳 8 (ぶーけコミックスワイド版)いたいけな瞳 8 (ぶーけコミックスワイド版)
(1993/08)
吉野 朔実

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どの巻にどのタイトルが収録されているかなど、自分のための覚え書き。

最終巻がまだだった!



・第28話 「極めて個人的な病気(やまい)」

想う気持ちに
紆余曲折を強いる
社会的自己の抵抗が
あってこそ

はじめて恋は病気(やまい)となるのだ





不動産屋で知り合った3人の大学生 桃太郎、美人(よしと)、千茱萸(ちぐみ)。

学生向けのワンルームを探していたが、めぼしい物件に空きはなく、やむを得ず3LDKを3人でシェアすることに。


切羽詰まっていたとはいえ、他人が聞いたら非常識極まりない、互いに見ず知らずの 男2人に女1人の共同生活が始まる。

が、これが意外にうまくいって、食事の支度は当番制、修学旅行の夜がずーっと続いているような和やかな日々。

それが いきなり、タバスコぶっかけたような展開に見舞われる。

向かいの部屋の のぞき魔やら、千茱萸の変わった趣味、勘違いした美人の思わぬリアクション、桃のカミングアウト発言。


桃と千茱萸が「一生言わない」と決めたことで、今まで通りの日々がこの先も続く。

切ないけど、きっと彼らにはこれがベスト。



まこと 理想は限りなく遠く

青春は 限りなく病気に近い





・第29話 「死は確かなもの 生は不確かなもの」

ある朝 氷を抱いている夢を見た

あんまり冷たくて 手がしびれて

目を覚ますと 妻が隣で死んでいた




その妻が腐らないように、真冬に冷房を入れて、凍傷になりそうな生活を淡々と続ける男 松島。


…この人の描く漫画は、やっぱり怖い。

「小さいめぐみちゃん」って何者?

松島の死んだ妻と同じ名前で、姿形も似ている。

最初はごく普通の小学生に見えたのに、意味深な言動と、極めつけはラストシーンの あれ。

この子を「怖い」と思うのは、得体の知れない不気味さから。

いや、不気味に見えるのは、読者が松島の立場で見るからか。

そもそも作者が、松島の目に映る彼女を描いているからか。

あるいは、松島にしか見えないモノなのかも…


それ以外の「怖い」は、たぶん 自分のすぐ傍にあるかもしれない狂気だから。

「いつ行っても お留守なの」と言われて「いるよ 行ってごらん」と即座に返す。

そこに、疚しさは微塵も見られない。それが怖い。外見はすごくまともそうなんだもの~。


いろんな意味で 怖くて、不思議で、後味の悪い話。





・第30話 「薄紅」

小学校から大学までエスカレーター式の女の園、清憬女子学院 高等科の卒業式の日のお話。

松井可菜子、三輪聖良、ともに二年生。


聖良の ほつれたスカートの裾を縫うため、卒業式をさぼって 裁縫道具を借りに行った保健室で、可菜子が見つけたものは 物理の教師 佐藤の定期入れ。

そこに挟まっていた写真をめぐる一連の出来事。

半分に切られた写真。捨てられたのは、果たしてどちらだったのか。


昔のコバルト文庫にありそうな、宝塚っぽい女子高の雰囲気が いかにも!という感じで良い。


同じ学年だったら、もしも何かがほんの少し違っていたら、友だちになれたかもしれない。そういうのって、覚えがあるなぁ。


今年の卒業生のスカーフの色は、桜と同じ 薄紅色。

可菜子と聖良のスカーフは浅葱。

そして、緋、杏、藤、萌葱。

学年ごとに変わるスカーフの 色の名前にも情緒があって、古き良きお嬢様学校の匂いがぷんぷんする。


前の話の後だから余計、ほろ苦いけどアクのない 爽やかな結末だった。




・最終話 「潤む炎」

現国の教師 善知鳥妙子(うとう たえこ)。

成績優秀な二人の学生 狩座(かりくら)と笹子(ささご)。


なぜか悪い噂が絶えない善知鳥先生だが、その実像は 噂とはかけ離れている(ただ一つを除いては)。

真面目で控えめで優しげで、幸薄そうな美人。


虐待の記憶と 火事で焼けた家。


全てを知っていた彼は 思う。


あなたは 誰よりも 愛されなければ



もの悲しくも美しいラストシーンが シリーズ最終話にふさわしい。



吉野朔実さんという人は、心理学でもやってるのかってくらい、全31話 一筋縄ではいかないようなお話ばかりだった。

これだけ毛色の違う話を次々と…すごい!



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2011年03月24日

信長協奏曲 4

信長協奏曲 4 (ゲッサン少年サンデーコミックス)信長協奏曲 4 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
(2011/02/10)
石井 あゆみ

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3巻の最後で驚きの展開を見せた「信長協奏曲」待望の第4巻。

3巻までは序章。いよいよタイトル通りの「協奏曲」=サブロー信長と明智光秀の二人三脚による天下布武への旅が始まる。


1~3巻までの感想はこちらから→石井あゆみ「信長協奏曲」


※ 以下、3巻まで読んでいる方は問題ありませんが、これから読もうとお考えの方は、ちょっとだけ2巻のネタバレしてますのでご注意ください。






お市に近江の浅井長政との縁談が持ち上がるが、ブラコンのお市は予想通り一蹴。

近江は京への通り道。浅井家との縁談がまとまれば上洛への足掛かりとなるが、サブローが無理強いするとは思えない。

どうやって説得するのかと思えば…

説得ではなく、あの人の言葉にお市が心を動かされ 嫁ぐことを決心するというのが、何やら感慨深い。というか、上手い!


そして、嫁いでも身籠っても、お市が全然変わらないのが嬉しい。

相変わらずのおてんばでブラコン。


ちなみに、この巻でいちばん笑ったのが、


お市 「でえとに行きましょう!!」
長政 「…でえととは なんじゃ?」
お市 「でえとを 知らぬのですか!?」
長政 「…知らぬと…まずいのか…!?」


…という、ふたりの会話だった。




お市が浅井家へ嫁いだことにより、サブローの上洛の日は一気に近付く。

そして ついに、足利義昭を擁し 総勢六万の兵を率いての上洛。

朝廷との交渉の末 室町幕府第15代将軍 足利義昭が誕生する。

竹中半兵衛(重治)、重矩兄弟が家臣に加わり、岐阜での束の間の休息を経て、将軍からの急使により 再び京へ。


将軍の御所である二条城の建設現場で宣教師ルイス・フロイスと出会ったサブローが、京での布教活動を独断で許可したことから、将軍 義昭との間に暗雲がたちこめ始める…





戦国時代にタイムスリップしてきてから 実に20年もの間、教科書を持っているにも関わらず、サブローが本能寺の変の首謀者の名前を調べなかったというのは信じ難いが(笑)
そこはそれ、「歴史」を変えてしまわないために、何者かの大いなる意志が働いたとでも思っておこう。

知る術が永遠に失われてしまったこともまた然り。



表向きは史実通りだというのに、続きが、結末が、これほど気になる歴史漫画(?)は そうそう無いと思う。



この作品を読み始めて以来、久々に歴史に興味が湧いて いろいろと調べてみたが、実のところはどうだったのか よくわからない事柄が多過ぎて驚いている。


信長の傅役 平手政秀の自刃の理由は、諸説あって特定できないという。(だから1~2巻でああいう描き方ができたのか!)

お市は、通説では信長の妹ということになっているが、「従妹」と書かれた史料もあるというし、浅井家に嫁いだ年齢が当時としては晩婚であることから、長政とは初婚ではなく、茶々は連れ子だという説もある。

帰蝶にいたっては史料がほとんどないため、実像がはっきりしない。



…前々から思っていたが、「市」だの「犬」だの「たま」だの「茶々」だのと 見るからにどーでもようさそうな(失礼!)ネーミングの当時のお姫さまたちの中にあって、「帰蝶」という名は一線を画している。

字面も音も、際立って美しい。現代的とすら思える。

もしかして作者は、この名前から斎藤道三のキャラ設定を思いついたのではないか。

だから、長井のおじさんが現代に残してきた娘の名前には「蝶」の字がつくのでは…なんて想像してみたりもする。



もともとは、4巻の帯の推薦文とイラストが荒川弘先生だと聞いて 興味を持ったのだけれど、今はすっかりこの作品に夢中なのであった。
(私信:りほさん、情報ありがとうございました!)



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2010年12月25日

RAIDEN-18

月刊 サンデー GX (ジェネックス) 2011年 01月号 [雑誌]




「RAIDEN-18」第3話掲載の月刊サンデーGX(ジェネックス)2011年1月号。

下記の書店で購入すると荒川先生の描き下ろしメッセージカードが付いてくるらしい。↓

荒川弘氏描き下ろしメッセージカード配布書店様

こういった購入特典は、いつも都会の大きな書店ばっかりだなぁと 悲しく思っていたのが、これには楽天ブックスも入ってる!!!

嬉しくてすぐに注文したものの、メッセージカードは なくなり次第配布終了とのことだったので、もうないかも…と 半ば諦めてもいた。

それが、昨日届いたこの本にはちゃーんと付いてて大感激^^

よかったー!!!

(※私信: 多分ご覧になってはいないでしょうが…
  りほさん、どうもありがとうございましたっm(__)m
  りほさんのブログで詳細を知りました。)



第1話と第2話は、2005年と2006年にサンデーGXに掲載されたというが、この作品の存在自体全く知らなかった。

2005年といえば、既に鋼にハマっていた頃だったが…


今回初めて読んで、驚いた。

鋼と平行してこんな漫画を描いていたなんて、意外といえば意外だけど、解るような気もする。

「GXラウンジ」というコーナーに掲載された荒川先生のコメントによると、担当氏の「『鋼の錬金術師』とは逆方向の漫画を描きませんかー」という提案がきっかけだったという。


…確かに真逆だわー。

これって、フランケンシュタインのパロディー?

人の道を軽~く踏み外したマッドサイエンティスト・タチバナ博士と、彼女によって造り出されたクリーチャー(人造人間、あるいは怪物。双方の意味を持つ)雷電18号。

大相撲闇リーグチャンピオン「雷電号」の左腕と 全日本強い歯コンテスト10年連続優勝者の歯、そして米軍横流しのチタン強化頭蓋骨をはじめとする最高級品の死体パーツで構成されたライデンは、人間であるタチバナ博士より余程まともな道徳観念を持っている(笑)


タチバナ博士: 「殺しはやらないもん!
死体を利用させてもらってるだけだもん!
人体を再利用するエコ思想だもん!!」



ライデン: 「なんで犯罪者って自分を正当化するんだろう……」(心の声)


いやもう、ここまでさくっと人間の尊厳を玩具扱いしてると いっそ小気味良いというか。

遊び心の解るおとなは、(いろんなものを飲み込んだ末)フツーに笑える。

全身の力が抜けそうなバカバカしい設定が良い。



「単行本化までほんの90ページくらい!!」



と書かれていたので(笑)、あと2話分を楽しみにしている。




「クラブサンデー」という小学館のWEBコミックサイトで、「RAIDEN-18」の第1話と第2話が期間限定で無料配信されているので、この機会にぜひ!


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2010年11月17日

「乙女の密告」赤染晶子

乙女の密告
乙女の密告
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,260
  • 発売日: 2010/07
  • 売上ランキング: 27123


芥川賞受賞おめでとうございます。
受賞作ということで、初読みの作家さんでしたけど読んでみました。
アンネ・フランクが絡んでいるようで、どんなお話か興味があったし。

タイトルは「乙女」の密告ですが、これは本当に「乙女」の話で、当初面食らいました。
女子大のドイツ語の授業が主な舞台なんだけど・・・。
自分のことを「乙女」であると自覚している女子大生たちの集団のお話。
えーっと、女子大ってこんなですか?私は共学だからわからん。
なんか、萩尾望都の漫画みたいな・・、全寮制の男子校の漫画のあの雰囲気、みたいな。
あれは男子ばかりなのでまた違いますけど、そういう雰囲気を思い出しました。

続きを読む >>

2010年11月15日

今更だけど…「鋼の錬金術師」第101話についてのもやもや

今までカケラも洩れてこなかった「鋼の錬金術師」劇場版の情報がようやく解禁。

タイトルは「嘆きの丘(ミロス)の聖なる星」

…なんか、ゲームみたいなタイトルですね。

劇場版公式ホームページはコチラ

今月22日のコミックス27巻発売に合わせて劇場版の前売り券も発売だそうです。




27巻の感想を書いたら もう鋼の感想を書くこともなくなるので、その前に、25巻を読んだ後 どうにも消化し切れなかった自分の中のもやもやを やっぱり書いておこうかなぁと。

25巻を読んだ直後の感想では、その辺 敢えてさらっと流したのですが、あの後も考えて考えて、どうして?という気持ちが拭えなかったので。


第101話「5人目の人柱」

この話大好き!感動したよ~!あるいは、少しでも鋼を貶されるのは許せない!という方は、多分 不愉快な気持ちになると思うので、以下は読むことをお勧めできません。ごめんなさい。










荒川先生は、どうして大佐に選ばせなかったんだろう?

中尉が喉を掻き切られて、放っておけば間もなく失血死という絶体絶命の状況。

人体錬成が成功しないことは解りきっている。ただ真理の扉を開けてくれれば良い。そうすれば、ここにある賢者の石で中尉を治療してやろうと言われて。



あの時、もしも味方が近くにいることに気付いてなかったとしたら、それでも大佐は「人体錬成は絶対にしない」と決断できただろうか?

あれは、決断したんじゃない。

決断する必要はなかった。禁忌を犯すか、中尉を見殺しにするか。その究極の選択を せずに済んだんだ。


あの後、ブラッドレイが「君なら 目の前で大切な者が倒れたら 迷い無く人体錬成に走ると思ったのだがね」と言ったが、そうでないとなぜ言い切れる?
彼は、選ぶ必要がなかったのに。


作者としては、部下たちに「死ぬな」と命令した大佐に、部下を見殺しにする決断を させられなかったということだろうか?



あの時、本当は選択肢なんてなかったのかもしれない。

大佐が人体錬成をした後、あの医者が中尉を治療するとは思えないし、先に中尉の治療をしてくれと言っても承知するはずがない。

中尉を治してしまったら大佐に弱みはなくなるし、自ら人体錬成をさせようとするなら 大佐の拘束を解かなければならない。

発火布を身に着けている彼の拘束を解いたら一瞬で焼き殺されることは目に見えている。

中尉の死は、必然だった。



ならば、大佐には 腹心の部下であり同志であるホークアイ中尉を失う覚悟をして欲しかった。

中尉には、勝機があることを知らせるアイコンタクトなんかより、死を覚悟した上で「最初で最後の命令違反です」と笑って欲しかった。



いくら 死なない覚悟、死なせない覚悟があったところで、ギリギリまで思考を止めずに頑張ったところで、どうしようもない時だって きっとある。



二人が覚悟を決めたその後で 加勢が入ったのだったら、きっと心から「よかった!」と喜べたのに。


なんだかずっと、すっきりしないまま このシーンを引きずっている。


うちの娘なんかは、「でも、それだと中尉が助かった後、二人とも気まずいよね~」と言うが、いやいや、中尉はきっと「あの場合は当然」って顔でしれっと流すと思うよ。


こんなことをグダグダ考えてしまうのも、今まで貶すところがほとんどなかったからなんだけどね。


第五研究所で大怪我した後、入院していたエドがアルに「アルはいいよな 身体がでかくてさ」と言っちゃった時以来だわ。

あれはないだろうと思った。

あれだけ「弟が身体を失くしたのは自分のせいだ」って罪悪感の塊になってる子が、いくら口が滑ったって そんな不用意なこと言わないよ。

あの時、ウィンリィがアルだけを責めたのが、なんだか悲しかった。


…もともと穴だらけの作品だったら こんなこといちいち真剣に考えずに読み流すんだろうけど、鋼は特別だったので、どうしてもいろんなことを考えてしまう。

鋼の錬金術師 25 (ガンガンコミックス) 鋼の錬金術師 25 (ガンガンコミックス)
(2010/04/22)
荒川 弘

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2010年11月05日

「鋼の錬金術師」第26巻

鋼の錬金術師 26 (ガンガン コミックス)鋼の錬金術師 26 (ガンガン コミックス)
(2010/08/12)
荒川 弘

商品詳細を見る


この26巻が出たのは8月です。

これ読んだ後、封印していた少年ガンガン6月号と7月号をようやく解禁して、完結まで一気に読んだらもう魂が抜けたみたいになっちゃって(笑)

「胸にぽっかり穴が空いたような」とはよく言ったもので、本当にそんな感じでした。

終わったんだなぁ…と思うと寂しくて寂しくて、感想を書くどころか 一読した後はコミックスも本誌も二度と開けられなくなりました。


いろんな事情で打ち切りになったり、不幸にも作者が亡くなってしまい 結末を知ることが叶わない小説や漫画もある中、こんなにも好きな作品を完結まで追いかけることが出来て、本当に幸せだと思います。
なのに、この喪失感。
いいトシしていい加減にしろと自分でも思いますが、やっぱり寂しいものは寂しい。

まるで、すごく仲のよかった友だちがお嫁に行って尚且つ夫の海外赴任に伴って地球の反対側の国へ行っちゃったくらいの(ちょっと違う)ダメージでした。


でももう今月には最終巻が出ることだし、そろそろ感想でも書いておこうかと、発売日以来 本日初めての再読。

最終決戦ともなるともう息つく暇もないってくらい、いつもにも増して 読んでて心臓がバクバクします。


※いつものようにネタバレありです。ご注意ください。









「フラスコの中の小人」の真の目的。

地球をひとつの生命体、あるいは膨大な宇宙の情報を記憶するシステムと考え、その扉を開き、「神」をその身の内に取り込む。

地球という生命体の扉をこじ開けるのが、5人の人柱の持つ真理の扉が反発しあう力。

「神」を身の内に捉え続けるエネルギーが、アメストリス全土の国民。


…これって、人体錬成を惑星規模でやるようなものだろうか?

扉の向こうから引っ張り出すのは、人間ではなく「神」=真理?



怒涛のように伏線が回収されていく。

今までホーエンハイムが旅をしながら国のあちこちに仕掛けていた 自分の中の賢者の石。

スカーの兄の研究の成果により、上書きされた国土錬成陣。


それらの意味するところがようやく明かされ、人間たちの大逆転劇が始まる。




「先に行くよ  ホーエンハイム」



この言葉に、涙が出た。

ホーエンハイムは自分の中の賢者の石を「仲間」と呼び、彼らもまた意志を持ってホーエンハイムに協力している。

戻るべき身体はとうに失われ、ただのエネルギー体と成り果てても、アメストリス人たちの魂を身体に戻す手助けをしようとする。

ホーエンハイムが闘っている時には、彼の内側から「負けんな!」「オレの命を使え!」「私の力も使って」と叱咤する。


荒川先生は、どのキャラも大事に大事に描く人だと思ってたけど、賢者の石にされてしまった名もなき人々まで丁寧に描く。

もちろん「描く」といっても そこに姿はないんだけれど。

それでも、かつては確かに生きた人間だったんだよ
身体はないけど 今も意志を持っているんだよ ということを、とても丁寧に表現する。



スカーと闘ったブラッドレイ(=ラース)の最期は壮絶だったけど、この巻の白眉はやはりエドVSプライドだろうか。

まさかのキンブリー登場に驚いたと同時に「やっぱり!」とも思った。

死の間際にプライドの中に取り込まれたのは、こういうことだったのかと。

キンブリーの魂が そのままの自我を保って生きていたことは、プライドには想定外だったらしいが。


キンブリーは変態だと今でも思ってるけど、美学と信念を貫いたのはカッコいいなぁと思う。

ついでに、去り際までが憎らしいほどカッコよかった。


「ホムンクルスの矜持だなんだと のたまっておきながら
自身に危機が訪れたとたんに 下等生物と見下す人間の容れ物に 逃げ込もうとする…

貴方  美しくない




キンブリーのお陰でエドに反撃のチャンスが生まれ、思いもよらない方法でエドがプライドの本体を引きずり出す。

ここで、あの時のあれも伏線だったのか!と気付いて愕然。

北の坑道で、エドが 腹に刺さった鉄パイプを抜く時にやった、あれ。

ほんっとに緻密に計算されてて、後で気付いて「やられた~!」と思うこともしばしば。感心すると同時に なんだか悔しい(笑)



プライドの本体が あんな無垢な赤ん坊だったのにも驚いたけど、鋼の右手で胎児みたいにちっさいのを掴んで よくぞ潰さなかった!エド、えらい!と、そこに感動。


エンヴィーは、実は人間を羨む か弱い ちいさな生き物だった。

プライドは、母を求めて泣く 豆粒のような赤ん坊だった。


ラストやグラトニー、スロウスも、もしかしてエドなら 殺すのではなく あんなふうに 深淵に手を伸ばして救ってやれたのだろうか?

そこにはやっぱり、ちいさなか弱い生き物がいたのだろうか?



「全部終わったら ブラッドレイ夫人に謝りに行かなきゃな」

そう言いながら、畳んだ自分のコートの上にそーっとプライドを降ろすエドは、彼を「プライド」ではなく「セリム」と呼ぶ。


この子 何者だろう?
なんかもう、天使に見えるよ。エド。



…次はついに最終巻。

もう最終回まで読んでしまったというのに、文字だけの予告でも まだ泣けます。重症です(笑)


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2010年10月19日

「奇想の江戸挿絵」辻 惟雄

「奇想の江戸挿絵」辻 惟雄
集英社

目次
はじめに 江戸後期挿絵の魅力
第1章 「異界」を描く
第2章 「生首」を描く
第3章 「幽霊」を描く
第4章 「妖怪」を描く
第5章 「自然現象」を描く
第6章 「爆発」と「光」を描く
第7章 デザインとユーモア

北斎をはじめとする江戸の浮世絵師たちにとって、版本の挿絵は重要な仕事だった。


日本の漫画のルーツだな。
日本人にはこのDNAが 受け継がれてるのよね。


集英社新書ヴィジュアル版を 読破しようと思って?借りた本。
図版がいっぱいで 見ごたえあり。

2010年07月18日

おじさんとおばさん 平安寿子

ひさかたぶりの同窓会に集まった男女たち。みんなもうおじさんとおばさんで、体力気力は落ち気味、介護や子供たちの就職にと心配の種もつきない。しかし、初恋の人に会えば胸がきゅんとし、同時代のテレビ番組、漫画、流行歌を思い出すと懐かしさに気持ちが温かくなる。幾つか新たな同級生カップルもできたが、その恋の行方は?熟年こその「希望」を求める50歳を過ぎた人々に、愛をこめて贈る同窓会小説。 【朝日新聞出版HPより】

この本を読んで思わず笑ったあなた。正真正銘のおじさんとおばさんかもしれません。
もちろんわたしも、笑いましたとも。老眼の進行、老化が進む頭やしわや、腹部など。もうメタボなどとは言ってはいられない、そういう世代なんですね。もちろん、わたしも例外ではありません。笑えないけど笑ってしまう。そんな同窓会小説です。

60歳を前に再会した小学校の同窓生男女6人。すでに子供は独立しているもの。家業を継いでいるもの。妻を亡くし、退職してボランティアに勤しむものなど。それぞれがそれぞれの生活を抱え、一生懸命に生きている。そんな時、あるパーティーで再会を果たし、一気に30数年前に戻って、若かったあの頃の秘めた思いや、恋心を再燃させてしまうというお話。

まあ、年齢を重ねるたびに、体力の衰えや気力の衰えは仕方ないとしても、恋心だけは失くさないものなのでしょうね。気力と一体のような気もしますが。恋に落ちたら、それぞれに現実があるわけだし、冷めてゆくのもいたしかたないですね。実際、自分はその年になって、そんな気力があるかどうか疑問ですが、恋ができるくらい心身しっかりしていたらなあとは思いますね。
しかし、最近の老化はとどめを知らず、進行している(笑)

平さん流のウイットが随所に感じられ、笑ってしまいます。もちろん、ラストも平さんらしいですね。さわやかさも感じられます。

各章のタイトルが「愛のプレリュード」「男の子女の子」「プレイバックPart2」「愛なき世界」「HELP!」「希望」と続いてますから、その年代の人たちには、懐かしさもありますよね。

何はともあれ、初老小説のこの作品は、シュールな笑いと同感と、思い出すのは、
「人は何のために歳を重ねるのだろう」(対岸の彼女より)という命題がちょっぴり分かったような気がします。
がんばって、歳とろうと思える小説かな。

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