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2011年11月17日

帰ってきた星の王子さま

帰ってきた星の王子さま 帰ってきた星の王子さま
(2005/02)
ジャン=ピエール ダヴィッド

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そのとき、子どもが、あなたがたのそばにきて、笑って、金色の髪をしていて、なにをきいても、だまりこくっているようでしたら、あなたがたは、ああ、この人だな、と、たしかにお察しがつくでしょう。

そうしたら、どうぞ、こんなかなしみにしずんでいるぼくをなぐさめてください。

王子さまがもどってきた、と、一刻も早く手紙をかいてください……
   (岩波書店刊 内藤濯 訳 「星の王子さま」)



サン・テグジュペリがこう記してから半世紀、この呼びかけに応えた人は誰もいませんでした。

「星の王子さまの続き?とんでもない!そんなもの、だれに書けるものか。」

と、訳者あとがきにもある通り、もとの作品があまりに有名すぎて、万一試みたとしても たちまち非難の嵐にさらされそうな そんな大博打、うてるわけがありません。

ところが、1997年になって、とうとう カナダに現れたのです。

「サン・テグジュペリが生きていたら、喜んで握手しにきてくれるような作品を」

そう願いながら書いたという作者ジャン・ピエール・ダヴィッドの、これはサン・テグジュペリへの熱烈なラブレターです。


「サン・テグジュペリさま

今日、こんなお手紙をさしあげるのは、とてもおかしな出来事にあったからです。」



…という書き出しで始まるこの作品の主人公が王子さまに出会うのは、サハラ砂漠ではなく 大洋に浮かぶ小さな無人島。

ミャンマーのチャウピューを目指しての船旅の途中、嵐に遭って船の甲板から投げ出され、ひとりで漂流しているうちに辿り着いたのでした。



作者がこの作品を書くにあたって心掛けたことは、次の三つだそうです。

1.王子さまの人物像を変えないこと。

2.王子さまが、地球にたどりつくまえに、いくつもの星を旅してくるという構想を変えないこと。

3.もとの作品とおなじくらいの長さの作品にすること。



とある事情から、ヒツジの入った箱を抱えて 流れ星にとびのり、再び旅に出ることになった王子さま。

星をめぐり、さまざまな人に出会いながら、最後に 昔出会ったキツネの言葉を思い出し、地球を目指します。

エコロジスト(環境学者)、宣伝マン、統計学者、狂信的な愛国者など、王子さまが出会う人々は前回とは様変わりしているものの、やはり この星の多くの大人たちの姿にほかなりません。


ひとつ「あれっ?」と思ったのは、地球に降り立った王子さまの話を聞いた人々が、「バラの花は、なんの象徴ですか?」「トラはなんの意味でしょう?」「ヒツジはつまり、神の子羊ですか?」
などと口々に質問するところ。

いくら王子さまが「バラはただの植物、トラもヒツジもただの動物です」と繰り返したところで、誰も耳を貸さないのです。

王子さまの話には何らかの寓意が隠されているはず と思い込み、それを解明しようと躍起になっている この人々も、ある種の人々を諷刺したものなのか、それとも批評家への牽制か。


本国カナダではたいへん好意的に受けとめられたという本書、「続編」ではなく、サン・テグジュペリへのラブレターだと思って読めば、とりたてて貶すところのない良い作品だと思います。

なのに、何か物足りなさを感じるのは、王子さまが旅に出ることになったそもそもの原因を取り除く手立てが、結局見つからなかったということと、この先バオバブの木をどうするのかが示されていなかったことが原因と思われます。

バラの花が無事だといいのですが。



ヘレン・スマイス描くところの品の良い挿絵は日本語版だけのオリジナルだそうで、物語のイメージによく合っていて素敵です。



…ところで、私は この本の旧版を古本で入手したのですが、奥付ページの裏の イラストの下に 日付と名前の入ったメッセージが。

どうやら1998年のクリスマスプレゼントだったらしいのですが。

そしてどうみても彼から彼女へのプレゼントなのですが。

この本が古本屋にあったということは、二人は別れたってこと?

この本を開く度に、他人様の人生の一コマを盗み見したようで、フクザツな気持ちになります。


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2011年09月13日

「きょうも上天気」浅倉久志訳/大森望編

きょうも上天気  SF短編傑作選 (角川文庫)
きょうも上天気 SF短編傑作選 (角川文庫)
  • 発売元: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 価格: ¥ 660
  • 発売日: 2010/11/25
  • 発売日: 2010/11/25
  • 売上ランキング: 40225


翻訳家の浅倉久志さんの追悼短編集。
浅倉さんは海外SFに疎かった私でもお名前を知っていたくらいの方で、
解説によるとかなりの翻訳をこなしておられますし、ヴォネガット他、著名な作も多いです。
私は海外作品を読むのが苦手な方なので、翻訳者が誰かというのは気にします。
翻訳の人によって、作品のカラーも違う気もするので(どうやって仕事をとっているのか
私にはわからないけれど)、この翻訳の人が訳してる本なら大丈夫、的な信頼も
読んでるうちに生まれてきています。岸本佐知子さんとか、大森望さんとか。

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2011年09月02日

2011年7月と8月に読んだ本

ジャンルが色々。
311以降、ノンフィクション率が高くなっている。
お薦めは『LIFE−TEXT』『脱原発社会を創る30人の提言』『いまだから読みたい本――3.11後の日本』と『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』『不思議な羅針盤』。

7月読了
読んだ本の数:7冊

■LIFE−TEXT 坂本龍一,高谷史郎
1999年に上演した『LIFE』のテキスト版。映像、音楽、インスタレーション、テキストと10年経過しても媒体を変えて発表。21世紀がなんだったのか?と問いをひしひしと感じる2011年夏。

■流跡 朝吹真理子
ドゥ・マゴ賞受賞。流れる文章は特有。

■原発と地震―柏崎刈羽「震度7」の警告 新潟日報社 特別取材班
2007 年7月16日中越地震でも、すでに「安全」でなく情報が「隠ぺい」された。これは新聞社のジャーナリズム精神で書かれた。3.11以降、テレビ、 新聞では一部を除いては「原発稼働」の警鐘が少ない。未来のために「エネルギーシフト」を論じて欲しい。情報を求めて本屋で平積みになった関連本を買い求 める。欲しいのは正確な情報。

■今こそ、エネルギーシフト――原発と自然エネルギーと私達の暮らし (岩波ブックレット) 飯田哲也,鎌仲ひとみ

■検証 東電原発トラブル隠し (岩波ブックレット) 原子力資料情報室
2002年出版。薄いブックレットだけど、情報は濃いです。9年経っても改善されたなかったことに憤りを覚える。そして、事故が早く収束することを祈っています。

■脱原発社会を創る30人の提言 坂本龍一、池澤夏樹他

■クレヨン王国の十二か月 (児童文学創作シリーズ―クレヨン王国シリーズ) 福永令三

8月読了
読んだ本の数:8冊

■馬たちよ、それでも光は無垢で 古川日出男
福島出身の古川日出男が東日本大震災以降の気持ちを炸裂。虚構と現実が交り合う福島や東北の姿。魂の叫びが聴こえてくる。

■リトル・ピープルの時代 宇野常寛
村上春樹作品解体、仮面ライダー、ウルトラマンからみる父性論が面白かった。

■昨日 (ハヤカワepi文庫) アゴタ・クリストフ
追悼読書。アゴタ・クリストフの作品は多くの人に読んでほしい。

■海と毒薬 (新潮文庫) 遠藤周作
罪とは?

■ものすごくうるさくて、ありえないほど近い ジョナサン・サフラン・フォア
東日本大震災を起きた2011年に翻訳、出版したことに意義があると思う。読みだせばノンストップ。印刷の仕掛けが見事。

■不思議な羅針盤 梨木香歩
自然を見つめるエッセイ。梨木さんの言葉に浄化される。

■オンディーヌ (光文社古典新訳文庫) ジャン・ジロドゥ

■いまだから読みたい本――3.11後の日本 坂本龍一他
未曾有の大震災、原発事故。3月11日以降世界が変わってしまった。先人たちの言葉を紹介。また、色んな角度からの本が多数ラインナップ。何度も読み返し、読書案内にしよう。

2011年09月02日

2011年7月と8月に読んだ本

ジャンルが色々。
311以降、ノンフィクション率が高くなっている。
お薦めは『LIFE−TEXT』『脱原発社会を創る30人の提言』『いまだから読みたい本――3.11後の日本』と『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』『不思議な羅針盤』。

7月読了
読んだ本の数:7冊

■LIFE−TEXT 坂本龍一,高谷史郎
1999年に上演した『LIFE』のテキスト版。映像、音楽、インスタレーション、テキストと10年経過しても媒体を変えて発表。21世紀がなんだったのか?と問いをひしひしと感じる2011年夏。

■流跡 朝吹真理子
ドゥ・マゴ賞受賞。流れる文章は特有。

■原発と地震―柏崎刈羽「震度7」の警告 新潟日報社 特別取材班
2007 年7月16日中越地震でも、すでに「安全」でなく情報が「隠ぺい」された。これは新聞社のジャーナリズム精神で書かれた。3.11以降、テレビ、 新聞では一部を除いては「原発稼働」の警鐘が少ない。未来のために「エネルギーシフト」を論じて欲しい。情報を求めて本屋で平積みになった関連本を買い求 める。欲しいのは正確な情報。

■今こそ、エネルギーシフト――原発と自然エネルギーと私達の暮らし (岩波ブックレット) 飯田哲也,鎌仲ひとみ

■検証 東電原発トラブル隠し (岩波ブックレット) 原子力資料情報室
2002年出版。薄いブックレットだけど、情報は濃いです。9年経っても改善されたなかったことに憤りを覚える。そして、事故が早く収束することを祈っています。

■脱原発社会を創る30人の提言 坂本龍一、池澤夏樹他

■クレヨン王国の十二か月 (児童文学創作シリーズ―クレヨン王国シリーズ) 福永令三

8月読了
読んだ本の数:8冊

■馬たちよ、それでも光は無垢で 古川日出男
福島出身の古川日出男が東日本大震災以降の気持ちを炸裂。虚構と現実が交り合う福島や東北の姿。魂の叫びが聴こえてくる。

■リトル・ピープルの時代 宇野常寛
村上春樹作品解体、仮面ライダー、ウルトラマンからみる父性論が面白かった。

■昨日 (ハヤカワepi文庫) アゴタ・クリストフ
追悼読書。アゴタ・クリストフの作品は多くの人に読んでほしい。

■海と毒薬 (新潮文庫) 遠藤周作
罪とは?

■ものすごくうるさくて、ありえないほど近い ジョナサン・サフラン・フォア
東日本大震災を起きた2011年に翻訳、出版したことに意義があると思う。読みだせばノンストップ。印刷の仕掛けが見事。

■不思議な羅針盤 梨木香歩
自然を見つめるエッセイ。梨木さんの言葉に浄化される。

■オンディーヌ (光文社古典新訳文庫) ジャン・ジロドゥ

■いまだから読みたい本――3.11後の日本 坂本龍一他
未曾有の大震災、原発事故。3月11日以降世界が変わってしまった。先人たちの言葉を紹介。また、色んな角度からの本が多数ラインナップ。何度も読み返し、読書案内にしよう。

2011年07月06日

「ニッポンの書評」豊崎 由美

「ニッポンの書評」豊崎 由美
230p光文社

目次

第1講 大八車(小説)を押すことが書評家の役目
第2講 粗筋紹介も立派な書評
第3講 書評の「読み物」としての面白さ
第4講 書評の文字数
第5講 日本と海外、書評の違い
第6講 「ネタばらし」はどこまで許されるのか
第7講 「ネタばらし」問題日本篇
第8講 書評の読み比べ―その人にしか書けない書評とは
第9講 「援用」は両刃の剣―『聖家族』評読み比べ
第10講 プロの書評と感想文の違い
Amazonのカスタマーレビュー
新聞書評を採点してみる
『IQ84』一・二巻の書評読み比べ
引き続き、『IQ84』の書評をめぐって
トヨザキ流書評の書き方
対談 ガラパゴス的ニッポンの書評―その来歴と行方

いい書評とダメな書評の違いは?
書評の役割、成り立ちとは?

豊崎さんの書評についての考え方が書いてあるんですが、頷けることは多かったです。

こういうのも 書評になるのでしょうか?
私は 感想文の域を 超えていません。
この本を 読んで思ったことは、書評家でもなんでもない素人の私は、面白くない本に出会ったら、我慢して 読み進めるべきでは ないということかな。
読まなかったら 感想も書かなくて いいし こんな小説 くだらない つまらない 時間の無駄だったと思って 消化不良を 起こさなくって済むってことね。

最近 本が 読めずに悶々としていたのだけど、そう考えたら なんか、スッキリ。

2011年07月03日

「ねにもつタイプ」岸本佐知子

ねにもつタイプ (ちくま文庫)
ねにもつタイプ (ちくま文庫)
  • 発売元: 筑摩書房
  • 価格: ¥ 630
  • 発売日: 2010/01/06
  • 売上ランキング: 39618


「沈まぬ太陽」読書中に、ちょっと一息つきたくて、読み始めた本です。
ちょっと一息に最適でした。ほんの短いエッセイに、じわじわと笑える要素満載。
岸本さんが翻訳する本についてはどれも私の好みに合うので、海外文学に慣れてない中でも
岸本さん翻訳の本は躊躇なく手に取れます。
そういう意味で信頼しているのですが、これを読んで、「ああ岸本さんと友だちになりたい」と
とても思いました。こういう人が友だちだと、ほんま毎日楽しいだろうなあ。

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2011年06月17日

「いちばんここに似合う人」ミランダ・ジュライ/岸本佐知子訳

いちばんここに似合う人 (新潮クレスト・ブックス)
いちばんここに似合う人 (新潮クレスト・ブックス)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,995
  • 発売日: 2010/08/31
  • 売上ランキング: 11551


キノベス1位、ツイッター文学賞海外篇で1位、あちこちでタイトルを見るうえに、
岸本佐知子さんの訳。いつか読もうと思っていてやっと手に取ることができました。
シンプルな黄色い表紙もおしゃれで好印象です。

読んでいて途中の「妹」という短編で「あ、読んだことある」と思いました。
「変愛小説集」2に収録されてたんだねー。確かに「変愛・・」に通じるところのある、
ちょっと奇妙な世界観。

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2011年05月25日

「黒いハンカチ」小沼丹

黒いハンカチ (創元推理文庫)
黒いハンカチ (創元推理文庫)
  • 発売元: 東京創元社
  • 価格: ¥ 735
  • 発売日: 2003/07
  • 売上ランキング: 216629


この本を知ったのは、北村薫編の「謎のギャラリー」だったように思います。
そこで表題作を読んで、その雰囲気が面白いな、と思って、この文庫を買ったのでした。
何年か本棚で読まれずに眠っていたのですが、ふと思い立って手に取ってみました。
久々に、本格ミステリ短編の醍醐味を堪能した気がしました。

小沼丹さんは男性のようです。作品の雰囲気から女性を連想していました。
おしゃれで洗練された作品群です。随分前に書かれたもののようですが、
古き良き日本というより、どこか海外、ヨーロッパみたいな印象を私は受けました。

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2011年04月02日

「スローターハウス5」カート・ヴォネガット・ジュニア/伊藤典夫訳

スローターハウス5 (ハヤカワ文庫 SF 302)
スローターハウス5 (ハヤカワ文庫 SF 302)
  • 発売元: 早川書房
  • 価格: ¥ 756
  • 発売日: 1978/12
  • 売上ランキング: 10380



一昨年1月に読んだのですが感想が書けずにいて、少し前にまた再読しました。
とはいえ、まだ何を書いていいかまるでわかんないけど・・・
感慨はすごくあるけど感想はまるで出てこない、そんな作品。

第二次大戦中、アメリカ軍の捕虜としてドレスデンにいた時に、空襲に遭い生き残って、
空襲後の地獄を見たヴォネガットが、それを題材に小説を書いたらこうなった、という作品。
ドイツの美しい都市ドレスデンは、この空襲で原爆被害に匹敵する被害を受けたようです。
この本を読むまで知らずにいて、恥ずかしい限りです。

テーマが重すぎるので覚悟して読んだのだけど、軽妙な文体で、案外軽くは読めます。
すごくひねった描かれ方なので。本人が登場するのでドキュメントのようなフィクションのような
不思議な感覚。でも主人公はビリー・ピルグリムという若者です。兵士でもなく戦場に駆り出され、
体に合わない服を着て、道化のような彼は、時間旅行者。自分の人生を全て見てきた人。
彼は戦後にUFOに乗せられ、トラルファマドール星に連れて行かれ、見せ物となるのです。
しかし自分の人生の時間を動き回れるようになった彼の人生が、時系列ばらばらで描かれます。

「スローターハウス5」、昔は「屠殺場5号」というタイトルだったみたいです。
筋書きを知ってからタイトルを読むとなんかすさまじい。

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2011年01月16日

スローターハウス5

わたしは知的生命の存在する三十一の惑星を訪れ、その他百以上の惑星に関する報告書を読んできた。しかしそのなかで、自由意志といったものが語られる世界は、地球だけだったよ

「スローターハウス5」カート・ヴォネガット・ジュニア著(ハヤカワ文庫)  ISBN: 9784150103026 

第二次大戦末期の1945年2月、米兵捕虜としてドイツ東部のドレスデン爆撃を経験したビリー・ビルグリムの人生。

半自伝的といわれる、あまりにも有名なSFを手にとってみた。280ページとさほど長くないのだけれど、ストーリーは要約しづらい。戦後、検眼医として幸せに暮らすビリーが、何故だか時間旅行者となり、物語は過去と未来を行ったり来たり。はたまた、空飛ぶ円盤で「トラルファマドール星」に連れ去られたり、まるでおもちゃ箱をひっくり返したようだ。全編が、ビリーが1986年にシカゴで撃たれる瞬間、頭に駆けめぐる脈絡ない回想のようにもみえる。

1969年に出版されたとき、まだドレスデン爆撃は広く世に知られていなかったという。そう考えると、あまりにも衝撃的な体験、人間存在の不条理は理屈抜きに、気の良い一アメリカ人の、軽薄で整理されていない人生に託すしかなかったのかも、とも思えてきた。
宇宙を理解し、過去も未来も見通しているというトラルファマドール星人の、なんとも虚無的な世界観が印象的だ。伊藤典夫訳。

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