「コンビニたそがれ堂」シリーズ第二弾。
元版が児童書だった前作とは違い、本書は文庫書き下ろしです。
お父さんの再婚で、新しいお母さんができた小学四年生の さゆき。
お父さんの故郷である風早の街には、一週間ほど前に引っ越してきたばかりです。
風早の街に買った古い小さな庭つきの家を、お父さんとお母さんが 住める状態に整えていた 冬休みの二週間、さゆきは 亡くなった前のお母さんの実家に預けられていました。
風早よりも北の 山の中にあるその村の 雪が降り積もる森の中。冬休みを一緒に過ごした懐かしい友だちに、さゆきは会いたくてたまりません。
新しいお母さんは綺麗で優しくて素敵な人だけど、慣れない都会はちょっと怖くて、それに、田舎にいる時に偶然聞いてしまった おばあちゃんとおばさんの会話も さゆきを不安にさせていたのです。
もしかして、もしかして、ママが嫌いで、わざと帰るのが遅くなったなんて誤解されたらどうしよう?
(中略)
さゆきは、いっしょに暮らし始めたばかりの、新しいママのことを思いました。
明るい笑顔と優しい声。いつもさゆきのことを喜ばせようって考えてくれている素敵なお姉さん。
あの人を傷つけようなんて、ぜんぜん思ってもいないのに、もし、勘違いされたら。道に迷った さゆきが、そんなことを思いながら歩いていた 一月のある夕方、辿り着いたのは コンビニたそがれ堂。
長い銀の髪に金の瞳の店員さんが迎えてくれる、あたたかく懐かしいお店の中で さゆきの目にとまったのは「魔法の葉書」でした。
「送りたい人に必ず届く」というその葉書に、さゆきが書いた宛名は…
(雪うさぎの旅)
ある出来事がきっかけで、ひきこもりになってしまった17歳の真衣。
これでは駄目だと自分でも思っているのに、仕事を探しに行こうとしては外に出られず、勉強しようとしては参考書を開くこともできず。
一日中自分の部屋に閉じこもり、オンラインゲームの世界で遊ぶ日々。
二年もそんな生活を続けていれば当然 高レベルプレイヤーになり、ゲームの世界の真衣はちょっとした有名人です。
現実世界で過ごすべき時間を捨てて、現実から逃避して、一見明るく見える、電脳世界のまぶしい暗がりの中で遊んでいるだけ。
その時間が無駄に長いだけ。
通りすがりのプレイヤーから、言葉を投げかけられたこともあります。
『おまえさ、リアルじゃ「廃人」だろう?』
その言葉が、真衣の胸に刺さりました。そんな真衣が、ある日、ふと 「いきなり、『職探し』なんてこと、やらなくてもいいんじゃないかな?」と気付きます。
そんなの、ゲームの世界と同じで、レベルの低いキャラクターが いきなり難しいクエストに挑戦するようなもの。
だったら、まずは家を出て、街に行って、何か小さな買いものをして帰ってこようと思い立ちました。
それから少しずつ、遠くに行けるようにがんばろうと。
お母さんに、何か夜食になるようなものを買って帰ろうと立ち寄った「コンビニたそがれ堂」で、真衣の目にとまったのは「奇跡の招待状」。
『パーティに招きたい「誰かさん」を、呼ぶことができる、魔法の招待状です。カードに名前を書きさえすれば、必ず、その人はあなたの元へ。』という信じ難い説明書きが添えてあります。
「気をつけてくださいね。今夜はハロウィン。不思議な力は強く働きます。どんな願いごとでも叶ってしまうかもしれません。けっして叶ってはいけないような願いごとさえも」 (人魚姫)
「クリスマスの思い出」についてのエッセイの執筆依頼を受けている作家の薫子。
小説やブックレビューに比べてエッセイは苦手な上、「女の子らしい記憶の在庫がない」と、困り果てて部屋を見渡せば 目に留まったのは一冊の写真集。
今はもう絶版の、外国の湖の写真集です。
十年前の十二月の朝、その写真集を押しつけるように薫子に渡し、旅に出た友人は、それっきり戻ってきませんでした。
学部もサークルも同じで、名前が薫子と一字違いの 佐藤薫。
語学が堪能で、機転の利く風来坊だった薫は、思いつきで旅の行き先や期間を変えることもしょっちゅうだったため、誰もが、彼はそのうち帰ってくるだろうと思っていたのです。
あれから十年。
「この本、いつになったら、取りに来るんだろう?」置き去りにされたのは本だけではなく、クリスマスの食事の約束もでした。
「もう十年たったんだもんね。引っ越してもいいのかもしれない。潮時なのよ、きっと」十二月に入ってから、真夜中の謎の騒音に悩まされるようになった薫子は、引越しを決意します。
不動産屋に行く途中、「コンビニたそがれ堂」に迷い込んだ薫子が、見つけたのは「ペンジュラム」
「なくしたものを探し出すことができる、不思議な魔法の振り子です。質問に答えることもできます。願いごとも叶えます。道に迷っても大丈夫。帰り道を教えてくれます。」 (魔法の振り子)
戦国時代、ある地方の海辺に栄えた、一つの国のお話。
その国の若君に可愛がられた美しい黒猫は、愛する人々を殺された恨みから 恐ろしい魔物に変わりました。
「……ねここや、ねここ。わたしが死ねば、この国は終わってしまう。もうそれは決まったことのようだけれど、でも、少しでも長く、わたしはこの地上に生きていたいんだ」(エンディング~ねここや、ねここ)
※以下、ちょっとだけネタバレありです。未読の方はご注意ください。前作と比べると全体的に内容が重く、切ないゴーストストーリーといった印象。
唯一「雪うさぎの旅」だけはそうでもなかったけれど、父親の再婚と慣れない都会暮らしに不安定になっている さゆきが、真っ先に「会いたい」と思い浮かべるのが自分で作った雪だるまと雪うさぎって…
百歩譲って、ほんっっっとに、十年生きてきてただの一人も友だちができなかったのだとしても、それってあまりに絵空事めいていて説得力がない。
おばあちゃんとおばさんに作ってもらったお弁当を、冬のさなか、雪の積もった森で食べるというのも、なんだかなぁ…
まともな大人なら、子どもにお弁当を持たせて一人で冬の森に行かせたりはしないと思うけど。
命を持たない者に 徒らに命を与えて、挙句 野垂れ死にさせてしまったような、嫌ぁな後味でした。
「人魚姫」の、「ハロウィンの晩に、本物の死霊に化かされる」っていうのは、ちょっと洒落にならないというか。
まさか このシリーズでそんなホラーな展開あるわけないと思っていても、怖かったなー。
優しいゴーストに背中を押されて、やっと歩き始めた真衣の 未来を暗示するかのような光あふれるラストシーンが素敵。
うっかり大泣きしてしまったのが「魔法の振り子」
でも、冷静になって考えてみると、「頼むから成仏して!」と思います。やっぱり。
幽霊の恋人とずっと一緒に暮らすなんて、不毛すぎる…
「ねここや、ねここ」は…
う~ん。生まれ変わりって、そりゃ、あるとは思うけど…
昔々の殿様と奥方様と若君と、ついでに若君の乳きょうだいだった娘までが 生まれ変わって一つの家族を成してるっていうのは、いくらフィクションだからってあんまりだと思います。
その上、みんながみんな 前世を連想させるような職業に就いてたり部活をやってたり。
失笑を買いそうな設定だと思うんだけど、本になるまでに誰もツッコミ入れなかったんだろうか?
誤植も気になったし、なんか、いろいろと残念。
私は前作のほうが好きだなぁ。
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