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2010年03月29日

COW HOUSE―カウハウス 小路幸也

JUGEMテーマ:読書

上役ともめ、ぶんなぐり左遷された25歳の畔木。左遷された先は、会社も持て余すほどでかい、旧家の管理人。そこで、出会う人々と坂城部長の手を借りて、一大プロジェクトを企画するのだが。

庭の手入れをし、壊れたところを修理していくんですが、自分に合っていることを見出します。
出会う人々が可笑しいんです。
元ウインブルドンテニスプレーヤーのおじいさん。天才ピアノ少女。変な調律師。そして、なぜか長居する、坂城部長。一番変なのは、一緒にやってきた美咲。将来結婚する気があるも、なかなか煮え切れない畔木なんですね。

一人ひとりの過去や現在の境遇が書かれていきます。坂城部長も、畔木も悲しすぎる過去を背負っています。
しかし、美咲の過去がイマイチよくわからんなー。どうやら施設を抜け出して、畔木君のところに行き倒れたようなんですが…。
良く考えてみると、この作品に出てくる人はみんないい人なんですね。

それが作品自体に安心感を与えることにもなっているし、悪く言えば、意外性がなかったようにも思えます。
ラストは、やはり、こうきたかという感じで、まずは大団円ですが。やはり、意外性が欲しかったな〜。

COW HOUSEというネーミングもおかしいんですね。これは敢えてふれませんが、これほど題名と中身が違っている作品も珍しいかもです。

こんな家に住みたいし、こんな人たちに出会いたいとも思えます。が、結局、現実感がなくて、夢物語としか言いようがありませんね
こう書くと、悪いところばかりと感じられては困りますので、書きますが、内容は面白いですので、念のため。

ただ内容の割に、胸に響かないライトな作品だったというのが、一番の感想でしょうか。
あっ、そうそう、おじいさんと畔木の会話が絶妙でした

2010年03月28日

「幕末バトル・ロワイヤル」「井伊直弼の首」「天誅と新選組」野口武彦

幕末バトル・ロワイヤル (新潮新書)井伊直弼の首―幕末バトル・ロワイヤル (新潮新書)天誅と新選組―幕末バトル・ロワイヤル (新潮新書)

今年の大河ドラマ、面白いですよね。「龍馬伝」。
岩崎弥太郎が目立ちすぎて、「弥太郎伝」じゃないか、と突っ込みたくはなるのだけど
新しい手法で描かれてて見ごたえがあります。役者も脇が達者だし。

ってなわけで、幕末についてこの機会にトータルに思いだしておきたくて、
この新書を手にとってみました。3冊読んでも、まだまだ幕末はこれから、と
いう感じで、続きが大変楽しみですが、楽しく読みました。


2010年03月28日

退出ゲーム 初野 晴 

評価:
初野 晴
角川グループパブリッシング

JUGEMテーマ:読書

チカは高校一年生。廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者。ハルタはチカの幼なじみ。吹奏楽部のホルン奏者。廃部の危機に直面しつつ、日々練習に励む二人。しかし、校内の難事件に次々と遭遇するはめに。存続をするために、二人は難事件を解決しなければならないのだが…。

化学部から盗まれた劇薬の行方を追う「結晶泥棒」。
六面全部が白いルービックキューブの謎に迫る「クロスキューブ」
謎の色エレファンツ・ブレスを探せ!「エレファンツ・ブレス」
あと、表題作の4編が収められています。

これ、青春ユーモアミステリというジャンルなのでしょうけど、ミステリ部分が思いのほかしっかりしています。
表題の「退出ゲーム」はその代表作かもしれませんね。サックス奏者引き抜きのために、対決することになった演劇部と吹奏楽部。演じるのは、登場する人物を退出させたら勝ちという即興の劇。これがめちゃくちゃ面白い。
知恵を働かせ、役者を演じるチカとハルタと演劇部。頭脳戦を制するのは…。
これだけでも読んでみる価値あり。しっかりミステリしています

このチカとハルタの二人の掛け合いが絶妙なんですね。先輩や生徒たちは変な人ばかりだし。笑えますねー。
二人が思いを寄せるのは同じ人という設定もかなりおかしいです。ハルタがその人を見る目に、嫉妬するチカ。大笑いしてしまいました。

どうやら、続編がもうすぐ出るんですね。笑えるばかりではなく、切なさも、喜びも含まれ、社会的なことも含まれているんですから、まさにミステリの醍醐味と言っていいでしょう。

2010年03月26日

「花合わせ」

興業前の鼠木戸には誰の出入りもなく、小屋の前を、扇ではたはたと扇ぎながら急ぐ、暑そうな商人風の男や、桶を担いだ金魚屋が「めだかァー、金魚ゥ~」と長閑な声を上げては、桶につるした金魚玉を揺らし、夏の強い日差しをきらきらと反射させて、行き過ぎるのが見える。

「花合わせ」田牧大和著(講談社) ISBN: 9784062143431

まだ名題下の女形、濱次が行きずりの町娘から預かった奇妙な鉢植えをめぐる人情話。

若手時代小説家の小説現代長編新人賞受賞作を読んでみた。ゆったりした筆致で描かれる、芝居小屋を中心にした粋な江戸風情が楽しい。才能はあるが、おっとりした性格の濱次やいたずら好きの師匠、茶屋の遣り手女将ら、一癖ある登場人物たちがかわす会話も上品で、落語のような味わい。「お止しよ、鬱陶しいねぇ」とか。芸談にミステリーやファンタジーの要素をからめていて、ややまとまりに欠ける感じはあるけれども。

ちなみに「花合わせ」は花札遊びのことではなく、珍しい花の品評会のことらしい。こういう庶民文化の成熟ぶり、江戸好きにはこたえられないかも。(2010・3)

2010年03月25日

やんごとなき読者 アラン・ベネット

評価:
アラン ベネット
白水社

JUGEMテーマ:読書

飼い犬が縁で(もちろんコーギー)、読書に目覚めた現女王エリザベス二世。次第に読書が彼女を変えていきます。喜びや疑問、そして自分の人生とは何なのか。

英国でベストセラーになるというのもうなずけますね。何といっても、主人公は現女王エリザベス2世。80歳にして読書に目覚め、公務もそっちのけで、読書にはまってしまうという設定が、ウイットとユーモアに富んでますね。
特に馬車に乗って、窓から手を振りつつ、本を読んでいるというのが、おかしくて。かといって、笑えないんですよ。だって、ここまで本読みの気持ちが書かれているものないんですよ。

「本は暇つぶしじゃない。別の人生、別の世界を知るためのものよ。もっと暇が欲しいぐらいよ」
「ほんというものが行動のきっかけになることはありません。決意に裏付けを与えるものなのです・・・本はいわばけりをつけてくれるのです」
など、本読みにとっては共感できるものばかりです。
思わず、そう、そうなんだよと肯いてしまいました。

そんな女王も公室から、公務の妨げを心配して、「アルツハイマーでは」という噂が広がっていきます。相変わらず、読書を続ける女王のある決断とは。これまた凄い。

いやー、ベストセラーというのもわかりますね。
こんな女王なら愛されると思いますねー。
まさにこの作品、本読み必読の書ではないでしょうか。

そうそうタイトルが絶妙だとは思いません?
ぜひぜひ。

2010年03月24日

遠くの声に耳を澄ませて 宮下奈都

JUGEMテーマ:読書

OL、母親、料理家、看護婦など、人々の日常の一部分を切り取り、「旅」をモチーフにした短編集。
12の短編の中に、きっとあなたや私もいる。

胸にしみ入ってくる作品ですね。短編のどこかに、昔、感じた思いや体験がひも解かれてきます。懐かしい顔も浮かんできます。いったい今どうしているのだろう。そう感じてくる作品集です。

宮下さんの繊細で、何と言うのだろう、五感を刺激されるような心地よい文章が癖になりますね。たとえば「昔聞いた雑音混じりのラジオ」「秋刀魚を焼く煙と匂い」「うぐいすの囀り」など、この作者ならではの感性と文章の表現力が何ともいいです。

また「旅」の雑誌に掲載されたこともあり、「旅」がモチーフにもなっています。田舎のあの街や、遥か彼方の知らない町など、旅したいなーと感じる作品集です。
作品自体のつながりもあるので、連作の短編集と読んでみるのも面白いです。あれ、ここつながっているなんて、後から探してしまいます。

「スコーレNo.4」以来、長いこと待たされましたが、これだけ充実していれば、待ったかいがあったというものです。
一つひとつの話を、もう1回読みたくなりますね。決して、大きな感動が押し寄せる話ではないんですが、しみじみと胸に来るんですよ

好きな話は「アンデスの声」「白い足袋」。
あまりに短編なので、あらすじを書くことはしませんが、「アンデスの声」のラストから、懐かしさが押し寄せてきました。
「白い足袋」は友人への思いと、主人公の一生懸命さが共感を持てます。
きっとどこかにあった日常。そして、瑞々しい感性から引き出された文章から、現実の私たちの生活が引き出されます。
いい作品ですので、ぜひぜひ。

2010年03月24日

罪を赦すこと 三浦綾子『続 氷点』

続 氷点 (上) (角川文庫 (5072))続 氷点 (上) (角川文庫 (5072))

角川書店 1982-03
売り上げランキング : 134712

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三浦綾子『続 氷点』
『氷点』の続編。
養女とした育った陽子。自分の出生の秘密を知り苦悩する。また、義兄の徹は陽子を妹以上に愛していた。育ての父も妻、友人、子どもたちの狭間で葛藤。運命に翻弄されながら、わが道を探す陽子。

テーマが「罪を赦すこと」。
犯罪は罪。
不倫も罪。
秘密は守り通す意義。

40年前の作品なので貞操感が違う。愛し合えばなんでもありと思わないが、当事者だけの問題ではない、と前面に押し出されていた。端的にいえば、不倫や禁断の恋も違和感なく読めるので、「物語」と思いながらも何度も止まり、仮定として自問自答を繰り返した。
誰しも、あの時こうしていれば後悔することはあると思う。わたしも何度かの人生の岐路があり、後悔や自分を責めたり、責任転換したこともあった。人生の半分は過ぎ、多少は過去過去と思えるようになったこともある。個人の経験値で、感情移入が違うと思う。
また、陽子も徹もしっかりしていて、同じ歳だったころが恥ずかしかった。
新聞連載で話題を呼んだベストセラー小説。そこには、時代が変わろうとも普遍的なテーマがあった。起伏にとんだヒューマンドラマ。
昭和の香りがする本を読んでいると、新刊と違う醍醐味があり、熟成され味わい深いものだった。

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2010年03月24日

罪を赦すこと 三浦綾子『続 氷点』

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テーマが「罪を赦すこと」。
犯罪は罪。
不倫も罪。
秘密は守り通す意義。

40年前の作品なので貞操感が違う。愛し合えばなんでもありと思わないが、当事者だけの問題ではない、と前面に押し出されていた。端的にいえば、不倫や禁断の恋も違和感なく読めるので、「物語」と思いながらも何度も止まり、仮定として自問自答を繰り返した。
誰しも、あの時こうしていれば後悔することはあると思う。わたしも何度かの人生の岐路があり、後悔や自分を責めたり、責任転換したこともあった。人生の半分は過ぎ、多少は過去過去と思えるようになったこともある。個人の経験値で、感情移入が違うと思う。
また、陽子も徹もしっかりしていて、同じ歳だったころが恥ずかしかった。
新聞連載で話題を呼んだベストセラー小説。そこには、時代が変わろうとも普遍的なテーマがあった。起伏にとんだヒューマンドラマ。
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