- ポプラの秋 (新潮文庫)
- 発売元: 新潮社
- 価格: ¥ 420
- 発売日: 1997/06
- 売上ランキング: 116337
- おすすめ度

「夏の庭」を読んで以来の湯本さん。「ポプラの秋」なので、秋に読み、
感想をなかなか書けずに冬になってしまいましたが。
短いお話だったにもかかわらず、読んでだいぶ経ちますが、
私の中に何かが残っている、そんな作品でした。
「夏の庭」といい、湯本さんは魅力的な老人を描かせたら、素晴らしいですね。
TOP>2010年01月

つまりいかなる感情も、いかなる悩みも、それを小説の主題に使ったり、随筆評論の添え物として使って、白紙に書きおろしてしまえば、すっかり忘れ去ることができるのだ。作家こそ唯一の自由人といえよう。
「お菓子と麦酒」サマセット・モーム著(角川文庫) ISBN: 9784042973010
著名な作家、亡きドリッフィールドの伝記を書こうとしている友人から、無名時代のエピソードを提供するよう求められた主人公が、ひとり回想する若き日のドリッフィールドとその妻。
SNS読書会の課題本として読んだ。中盤までは、ちょっと寂聴さんが書く文壇裏話のよう。発表されたのが1930年だから、小説のなかの回想シーンは19世紀末あたりのイギリスか。当時の作家たちが名をなしていくプロセスや、彼らを取り巻く文人好きの貴族らの生態が、生き生きと、ときに俗っぽく、少し斜に構えた感じで描かれる。もっとも私は、当時の作家とか小説とかの知識を持ち合わせないので、どうもピンとこないなー、と感じていた。
しかし残り3分の1ぐらいになって、ぐんぐん弾みがついて引き込まれるた。特に文豪の妻、ロウジーの人物像がとても魅力的。罪深いけど決して憎めず、ふるまいは軽薄だけど実は深い思いを秘めている。そんなロウジーの真実を主人公だけが知っていて、読者にだけ一端を打ち明けましょう、というかのような、内緒話感覚の筆致が面白い。
生まれ育ちとか、教養とか、道徳観念とか。人が他人の「上等かそうでないか」を見分ける基準というのは、どういう人物と付き合うか、ひいては日々のありようを規定しかねない。でも、実はそのモノサシは見方によって随分違ってくるものだ。
終盤に主人公は、そういう複雑な人生のありようを文字にしないではいられない作家という人種の性を吐露する。真実の口当たりはほろ苦い。でも、どこか軽やかなで甘酸っぱい後味なのだ。厨川圭子訳。(2010・1)
「まいにち薔薇いろ 田辺聖子A to Z」
「秘密とウソと報道」日垣 隆
「向田邦子 暮しの愉しみ」向田邦子 向田和子
「流星ワゴン」重松 清
「赤い指」東野圭吾