2009年3月のマイベスト本は、古田新太『柳に風』、中島京子『ハブテトル ハブテトラン』。

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藍はフンフンいいながら路線図を見あげる。読めない漢字ばかりだがそれがかえって新鮮だ。
「四とそれ以上の国」いしいしんじ著(文藝春秋) ISBN: 9784163277004
四国を舞台にした、幻想的な連作集。
いしいワールドは、いったい何処までいくのか。「みずうみ」で民話的な世界から一歩踏みだし、現実との接点をもった後、いったい次はどうなるんだろうと思っていたら、四国である。人形浄瑠璃やお遍路やら、四国らしい事物を散りばめつつ、うねるような文体で奇天烈なイメージを連打。頭がくらくら。もちろん、現実の四国ではない。しかし、この四国は妙にリアルで、もう「風土」とでも呼びたいような世界だ。
特に、出荷前で人にたとえるなら16、7の乙女である貴重な藍染めの原料が、まさに少女のように、ある日すらりと立ち上がって逃げ出す、という設定の「藍」が、みずみずしくて印象的。
本好きのブログなどを読んでみると、けっこう難解という声がある。確かに善も悪もなく、教訓も種明かしも結論らしきものも皆無。いつもに増して、好き嫌いが分かれそう。でも個人的には、くらくらしたのち、不思議なカタルシスがあった。
連作で繰り返し、見えそうで見えない、読めそうで読めない、聞き取れそうで聞き取れない、というシーンが登場する。生きて暮らしていくことは、なんともどかしいことか。(2009・3)