今日は時間的に余裕があるはずだったんだけど、うっかり寝てしまったためにいつもと同じような感じになってしまいました。おかしい。こうやって、うたた寝のせいで時間がなくなってしまうっていうのが一番嫌いなんだよなぁ。くやしい。
今日は、客注の個人情報について書こうと思います。
客注というのはお客さんが欲しい本を本屋に注文することなんだけど、その際名前と連絡先を聞くことになります。出版社に在庫がありませんでしたよとか、当店に入荷しましたよとかっていう連絡をするためです。
で、その名前と連絡先をどういう風に聞くのかというのが今日の話です。
当店で使っている客注表(何の本を何冊注文で、お客さんの名前とか連絡先などを書くもの)は、一枚のページにに五件分書くことが出来るようになっています。で、僕のいる店の場合は、スタッフがお客さんに名前と連作先を聞き、お客さんに口頭で答えてもらって、それをスタッフが客注表に記入する、というやり方をしています。
このやり方の場合、お客さんに電話番号などを言ってもらわなくてはいけないので、正直なところ個人情報的にはあまりよくないだろうと思ったりします。お客さんの中には(特に女性)、連絡先などを小声で言う人もいるし(言い忘れてたけど、スタッフがお客さんと客注のやりとりをするところは、両側にレジがあるという状態のところなので、普通にお客さんがいたりします)、携帯電話の画面を見せて連絡先を伝えようという方もいます。確かに個人情報にうるさくなった現代では、それぐらいの用心は必要なのかもしれません。
ただそれでも僕は、このやり方が一番妥当で、というかこれ以外のやり方はないだろうと思っていました。
しかし最近、僕がよく見ている書店系のブログの一つで、この客注表の記入の話が書かれていました。そのお店では、お客さん自身に名前や連絡先を記載してもらうようになっているんだそうです。
先ほど書いたように、僕のいる店で使っている客注表は、一枚のページに五件分書けるようになっています。つまり、お客さんに客注表を渡して、そこに直接連絡先を書いてもらう、なんていうことは出来ないわけです。誰がどんな本を注文しているのか、そしてその人の連絡先まで分かってしまうわけですからね。
ということは、一旦何か別の紙に書いてもらって、それをさらにスタッフが書き写すというやり方をしてるんだろうと思います。
僕のいる店の場合、レジの部分以外にカウンターみたいなものがないので、そもそもお客さん自身に何かを書いてもらえるようなスペースがありません。ただもしそれがあったとしても、お客さんに書いてもらうやり方はミスが多くなるんじゃないかなぁと思ったりします。
そのブログでも書かれていましたが、お客さんが書いた数字が読めないということがあるようです。どれぐらいの頻度なのか分かりませんが、しかしその部分の説明で、「スタッフが確認を怠ったから」みたいなことが書いてありました。つまりそのお店の手順としては、
お客さんに書いてもらう→そこに書かれていることをスタッフが確認する→それを客注表に書く
という流れになるはずです。スタッフが確認するという作業はもちろん口頭で行うんでしょう。だったら、ウチでやってるやり方と別に変らないんじゃないかとか思います。お客さんに書いてもらうというステップを挟むことで、より間違えの可能性が上がるのではないかと思ったりします。
もちろん、僕のいる店でやっているやり方の場合でも、電話番号が間違っているケースというのは時々あります。スタッフの聞き間違いだったりお客さんの言い間違いだったりいろいろありますが、お客さんに書いてもらう場合さらに読み違いという可能性も出てくるわけで、やっぱり直接口頭で聞くのがいいんではないかと僕は思ったりしました。
まあこの客注の個人情報については、なかなか難しいものがあるなぁと思います。うまいやり方をしているお店はあるんでしょうか?
そろそろ内容に入ろうと思います。
本作は7編の短編を収録した連作短編集です。
まず全体の設定だけ書きましょう。
失恋し、気分を変えたかった岡村柊子は、友人である彦坂夏美から耳寄りな話を聞く。それは、夏美の友人である松江銀子が同居人を探しているというものだ。松江銀子はとある映画スターの娘で、変人ばかりが集まる夏美の友人の中でもとびきりの変人だという。よくわからないが、家事を全部引き受ければ家賃はタダというのはおいしい。
というわけで早速同居を決めたのだが、銀子さんはお嬢様育ちでとんでもない方向に常識の欠けた人だったし、いきなり幽霊は見るしで初日から柊子はてんてこまいさせられるのであるが…。
「あなただけを見つめる」
引っ越し初日、柊子は銀子さんの子供の頃の話を聞かされる。家人が死ぬ前日に出るという幽霊の話だ。柊子はつい先ほど幽霊を見たばかり。幽霊の見えない銀子さんが見た唯一の幽霊とは…。
「サンタクロースのせいにしよう」
隣人に、ゴミの出し方にうるさい鈴木さんという人がいる。うるさいなんて形容が生易しいくらいの人で、周囲からはとにかく嫌われている。
クリスマスの日、鈴木さんがゴミ捨て場から悲鳴を上げて逃げだしてくるのを柊子は見かける。鈴木さんは、ゴミ袋の中に死体があった、そしてそれが動いた、とうわ言のように繰り返していたのだが…。
「死を言うなかれ」
銀子さんが友人から聞いたという不思議な話を、柊子と、銀子の父親が愛人に産ませた子供である曽我竜郎の二人が考える。その不思議とは、花を愛し庭一面に雑草も含めた様々な草花を咲かせていた庭の一角、チューリップが咲いていたところだけ根こそぎ抜かれて持ち去られていたというもので…。
「犬の足跡」
何故か自分が犬になった夢を見るようになってから、近所の生き物好きである浜田さんの奥さんが、犬にまつわる不思議を持ってくる。自宅を改装したばかりの近所の家のガレージのコンクリートの上に、犬の足跡がついていたというのだ…。
「虚構通信」
一週間前、銀子さんの妹で女優の端くれだった卯子さんが、手首を切って自殺した。遺書はなく、一週間経っても誰もその理由を理解できない死だだった。
そんな折、柊子の元に内木田しのぶという女性から電話が掛かってくる。夏美の友人らしいのだが、香港で卯子さんに車で轢かれそうになったという話を突然され…。
「空飛ぶマコト」
銀子さんと台湾に旅行に行くことになったのだが、その機内でカップルのケンカを目撃することになる。通路を行ったり来たりし、連れの男性にエコノミークラスであることをなじり、トイレから出てきた柊子に怒鳴り散らすなかなか変わった女性で、しかし柊子はちょっと気になった。何かおかしくはないだろうか…。
「子どものケンカ」
銀子さんの都合で同居生活が解消されることになり、銀子さんに頼まれて柊子は家事全般を教え込むことになった。一方で、夏美と達郎と柊子で花見に出かけたのだが、そこでちょっとした騒動が持ち上がり、柊子は間に立たされることになる…。
というような話です。
ちょっと仕掛けてみおうかという作品を探しているところで、そのために読んだ一冊でした。
なかなか面白い出来だと思います。ジャンルとしては<日常の謎>系で、もちろん日常の謎系の作品ではいくつも秀作はありますが、本作は仕掛けるにはなかなかいい作品かもしれないと思います。薄い文庫だし、それに文章が非常に読みやすい。ミステリというだけで敬遠するような人でもスラスラ読めるんではないかなと思います。ちょっと検討というところ。
一番出来がいいと思った話は、「空飛ぶマコト」。これは秀逸でした。僕が上記で書いたような内容紹介では、何が謎なのかすらよくわからないだろうと思うけど、最後まで読むと、なるほどそういうことだったのかと納得します。もし仕掛けるとしたら、POPには「とりあえず「空飛ぶマコト」を立ち読みしてみてください」みたいな風に書こうかなと思います。
「虚構通信」はちょっと怖い話でした。別に幽霊がどうとかじゃなくて、女性の怖さですね。僕は男なんで、やっぱり細部まで理解できたとは思えないんだけど、女性が読んだらまた違った感想があるかもしれません。「虚構通信」は本作中でも結構毛色の変わった作品だと思います。
あとは「サンタクロースのせいにしよう」「死をいうなかれ」辺りがよかったかな。「サンタクロースのせいにしよう」は鈴木さんというキャラクターがなかなか抜けていて、こんな人がいたら最悪だなというところが面白いし、オチもまあまあ面白い。「死をいうなかれ」は、チューリップがなくなったというだけでよくもあんな話が作れるものだ、と感心しました。
本作は形態としてはミステリだけど、非常に面白いキャラクターによってストーリーが進んでいく感じがします。柊子は自分のことを普通だと思っているけど、やぱりちょっと変わっているし、夏美のズバズバしているところとか、竜郎のでしゃばりっぷりなんかも読んでて面白い。近所の人なんかも、そこまで話には出てこない癖に妙に濃いキャラクターが揃っていて印象深い。
しかしそれ以上にやっぱり銀子さんがキャラクターとしては抜けている。一番初めの「あなただけを見つめる」では、銀子さんの話を聞いて柊子が死ぬほど笑うというシーンが出てくるんだけど、気持ちはよくわかる。料理をさせれば破壊的だし、旅行に行けば振り回されるし、それに日常の所作が何だかおかしい。そういうおかしな登場人物のクスッと笑えるような小さい話が、結構本作の魅力になっているのではないかなと思います。
軽く読めるという点では非常に仕掛け向きだと思うんだよなぁ。さてどうしたものか。そこまで強く推したいわけでもないんだけど、当たる要素は結構あるという理由で仕掛けをするというのはどうだろう。まあ機会がれば読んでみてください。
若竹七海「サンタクロースのせいにしよう」
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