静かな城下町を恐怖に陥れた大量毒殺事件。その現場に居合わせた少女が十数年後に事件を小説に書いて出版した。著者は覆面のまま、次作を発表することなく世間から忘れ去られた。
さらに長い年月を経て、事件の現場となった旧家の屋敷は取り壊しが決まった。だが事件には今なお謎が多く、容疑者については「冤罪ではないか」との声が絶えない。
小説を書いた少女の真意とは。そして事件の真相とは。
評価=☆☆☆☆☆ (5点満点)
本書の舞台となる静かな城下町は、文中では「K市」と呼ばれますが、これが石川県金沢市であることは明らかでしょう。恩田さんのバレバレイニシャルトーク旅行記シリーズとでも申しましょうか。『クレオパトラの夢』では函館が「H市」、その函館にある観光名所の五稜郭が「G稜郭」となっていますし、『黒と茶の幻想』では、どう考えても屋久島にしか思えない島が「Y島」と書かれています。
で、とにかくその金沢市の兼六園にある成巽閣(せいそんかく)という建物の中に、「群青の間」と呼ばれる青一色の部屋があるんだそうです。(成巽閣のホームページはこちら)
なにせ「加賀百万石」と言われる城下町ですからね。お殿様が「オレってすげーだろ」と自慢したくて造った「群青の間」なのでしょうけど、青一色とはいかにも不気味。お殿様のセンスを疑います(笑)。
この不気味な青い部屋に恩田さんが触発されて本書をお書きになったことは、文庫版『ユージニア』の巻末の「ユージニアノート」でふれられています。
物語は、大量毒殺事件の関係者と思しき人々が入れ替わり立ち代わり証言する形で、ゆるゆると進みます。しかし警察の捜査はすでに終結しました。犯人もわかっています。事件はとっくに昔話と化しています。
では人々は「誰に対して」「何のために」過去の事件を語っているのか? そもそもこの語り手はいったい誰なのか? そのへんは証言の合間にチラチラと見え隠れする程度。まるで目鼻のはっきりしない幾つもの人影がふわふわ行き交うようです。恩田さんの『Q&A』という作品に似た雰囲気。
ただ、『Q&A』は結末が幻想的でしたが、本書は最後までミステリー小説らしさを保っていると思います。
恩田さんの作品だと、結末で真実が明らかになるどころか、事件そのものが形を失ったり、いつのまにやら話がミステリー小説ではないものに変わったりと、わけがわからんモノもありますからね(笑)。わからないなりに楽しめますけど。(楽しめなかったモノも若干ありますけど……)
本書では事件の真相が漠然と「察せられる」結末となっています。
すみずみまでガッチリ構築されたミステリー小説がお好みのかたには強くお勧めしませんが、作品の雰囲気に身をまかせるような読み方だと楽しめるかと思います。
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さらに長い年月を経て、事件の現場となった旧家の屋敷は取り壊しが決まった。だが事件には今なお謎が多く、容疑者については「冤罪ではないか」との声が絶えない。
小説を書いた少女の真意とは。そして事件の真相とは。
![]() | ユージニア (角川文庫 お 48-2) (2008/08/25) 恩田 陸 商品詳細を見る |
評価=☆☆☆☆☆ (5点満点)
本書の舞台となる静かな城下町は、文中では「K市」と呼ばれますが、これが石川県金沢市であることは明らかでしょう。恩田さんのバレバレイニシャルトーク旅行記シリーズとでも申しましょうか。『クレオパトラの夢』では函館が「H市」、その函館にある観光名所の五稜郭が「G稜郭」となっていますし、『黒と茶の幻想』では、どう考えても屋久島にしか思えない島が「Y島」と書かれています。
で、とにかくその金沢市の兼六園にある成巽閣(せいそんかく)という建物の中に、「群青の間」と呼ばれる青一色の部屋があるんだそうです。(成巽閣のホームページはこちら)
なにせ「加賀百万石」と言われる城下町ですからね。お殿様が「オレってすげーだろ」と自慢したくて造った「群青の間」なのでしょうけど、青一色とはいかにも不気味。お殿様のセンスを疑います(笑)。
この不気味な青い部屋に恩田さんが触発されて本書をお書きになったことは、文庫版『ユージニア』の巻末の「ユージニアノート」でふれられています。
物語は、大量毒殺事件の関係者と思しき人々が入れ替わり立ち代わり証言する形で、ゆるゆると進みます。しかし警察の捜査はすでに終結しました。犯人もわかっています。事件はとっくに昔話と化しています。
では人々は「誰に対して」「何のために」過去の事件を語っているのか? そもそもこの語り手はいったい誰なのか? そのへんは証言の合間にチラチラと見え隠れする程度。まるで目鼻のはっきりしない幾つもの人影がふわふわ行き交うようです。恩田さんの『Q&A』という作品に似た雰囲気。
ただ、『Q&A』は結末が幻想的でしたが、本書は最後までミステリー小説らしさを保っていると思います。
恩田さんの作品だと、結末で真実が明らかになるどころか、事件そのものが形を失ったり、いつのまにやら話がミステリー小説ではないものに変わったりと、わけがわからんモノもありますからね(笑)。わからないなりに楽しめますけど。(楽しめなかったモノも若干ありますけど……)
本書では事件の真相が漠然と「察せられる」結末となっています。
すみずみまでガッチリ構築されたミステリー小説がお好みのかたには強くお勧めしませんが、作品の雰囲気に身をまかせるような読み方だと楽しめるかと思います。
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