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2008年08月30日

狼と香辛料Ⅳ(支倉凍砂)

長いこと掃除をしていなかった物置を片付けていると、奥の方からノートが出てきた。大分古いノートで、表紙には子供の字で「にっきちょう」と書かれている。
名前を見て、なるほどお祖母ちゃんのか、と思った。
お祖母ちゃんは2年前、癌で亡くなった。最後まで決して病院に行こうとしなかった。一旦行けば戻ってこれないことが分かっていたのだろう。それに、私たちだってそう簡単に見舞いに行ったり出来ないのだ。ならば、住み慣れた家で親しい人と最後を過ごしたい、とそう願ったのだ。
悪くない人生だったはずだ。
ここに越して来たのはお祖母ちゃんたちだったそうだ。当時、周囲から猛反対を受けたという。それはそうだ。今でこそ、それなりに認知されているとは言え、こんなところに住もうと思う人などいないよ。私にはその言葉はよく理解できなかったけど、お祖母ちゃんはよくそう言っていた。
私はここが好きだった。ここ以外の生活を知らないだけだからかもしれない。それでも、私はここでの生活を気に入っているし、ここから出て行こうと思うこともない。
お祖母ちゃんは、昔の話をあまりしてくれなかった。今から思えば、知らなくていいことは知る必要はない、と思っていたのかもしれない。私はお祖母ちゃんに、ここから出て行くつもりはない、とずっと言っていた。ならば、ここ以外の生活を教えることもないだろう、とそんな風に思っていたのかもしれない。
だからこの日記を読めば、ここ以外の生活について少しは分かるかもしれない。そんな風に期待したのだ。

4がつ5にち
きょうは、でんしゃでとなりの町までいきました。でんしゃははやくて、でもぜんぜん怖くなかったです。となりの町ではお洋服を買いました。いろんなお洋服があって楽しかったです。

でんしゃってなんだろう。そういえばこの前見た映画に出てきたかも。運転手がいて、降りる時にブザーを押すあれ。たぶんそうだ。

4がつ6にち
きょうは、あやなちゃんといっしょに川にいきました。川でカメを見つけてびっくりしました。川についていったらどこまで行けるのかやってみたけど、あんまりにもどこまでもつづいてるので、こうりょく橋のてまえであきらめました。

川かぁ。何だろうな。どこまでも続いてるのか。それなら確かに、ついていってみたくなるだろうな。すっごい長い蛇とかかな?

お祖母ちゃんの日記を読んでも、私にはイマイチよくわからない言葉ばっかりで、よくわかりませんでした。こうして私達は、地上での生活をどんどん忘れてしまうのでしょうね。
空に浮かぶ島に住む、私達のような少数民族は。

一銃「お祖母ちゃんの日記帳」

そろそろ内容に入ろうと思います。
本作は、ライトノベルの人気シリーズ「狼と香辛料」の第四巻目です。
まずはシリーズ全体の設定を。
旅商人であるロレンスは、行商の途中、一人の少女を拾った。ホロと名乗るその少女はしかし、何百年もの時を生きている神様であり、麦に宿るという豊作の神様だったのだ。
二人はちょっとした理由から旅を共にすることになり、そしてさらに、ホロの故郷を一緒に探すことになった。ホロの故郷であるヨイツの場所を、既にホロは忘れてしまっている。ロレンスの行商の行く先でヨイツについての情報を集めるのだけど…。
さて、本作の内容です。
異国の物語を集め続けている聖職者がいる修道院の話を聞きつけた二人は、早速そこへ向かうことに決める。しかし、その修道院の場所を知っているという人物は、テレオという町の教会にいるという。しかも、そのテレオへの道を聞くのに一旦エンベルグという町に行かなくてはならない、という行程である。
さて、テレオの教会に辿り着いた二人だったが、しかしそこで彼らを出迎えたのは一人の少女であった。しかも、修道院の場所は知らない、という。明らかに嘘だった。
二人はしばらく町に逗留し、修道院の場所を探ることにするのだが、その間にテレオの町が隣町エンベルグと抱えているトラブルに巻き込まれることになり…。
というような話です。
さて、どの巻を読んでも絶好調に面白い「狼と香辛料」も、なんと4巻までやってきました。4巻まで読んでもまだ面白いライトノベルとか、ホントすごいなと思うわけです。
もちろん本作も、相変わらず絶好調に面白いですね。というか、この「狼と香辛料」というシリーズは、巻を増すごとに面白くなっているという印象があります。
これまでのシリーズ3冊では、彼らが巻き込まれるトラブルは商売上のものであることが多かったですが、本作では違います。これまでは彼らは商売上のトラブルに巻き込まれその中心にい続けますが、今回は基本的には傍観者です。町と町が抱える問題の巻き添えを食らった、という形です。しかも、問題の大半は宗教上のものであり、経済上の問題ではありません。彼らはずっと傍観者でいられればよかったのですが、最後には結局巻き込まれ、乗り越えていかなくてはいけなくなってしまいます。
どの巻を読んでもそうですが、この巻き込まれるトラブルの設定が非常にうまいですね。実に細部までしっかりきちんと考え込まれています。町に住む人々の生活や言動から背景を推測したり、大きな流れの中で不可避な状況というのをきちんと押さえているし、そのトラブルを巡る中での人々の感情や動きについても非常に繊細に追っています。
そして何よりも素晴らしいと思ったのが、今回のトラブルが微妙にホロの問題と重なることです。それによりホロが取り乱すシーンがあるんですけど、この場面を読んだ時、この作家の構成の巧さに舌を巻きました。これは偏に、その世界で生きる人々の感情の動きというものを著者が正確に掴もうと努力しているからこそ出来ることだろうな、と思いました。お見事です。
さらに、恐らく本シリーズ最大の魅力と言ってしまってもいいと思うけど、ホロとロレンスのやり取りが素晴らしいですね。大雑把に斬ってしまえば、彼らはただイチャイチャしてるだけ、と言えなくもないんですけど、その状況に適切にマッチした言葉の罠を仕掛けて相手を嵌めたり、急に素直になってドキッとさせたりと、まあ基本的にロレンスが翻弄されっぱなしなんですけど、このやり取りの見事さといったらないですね。
シリーズを追う毎に面白くなっていくのには、このホロとロレンスのやり取りがどんどん面白くなっていくからという点もあるでしょうね。一巻目ではまだやっぱりぎこちなかった二人が、いろんなことを乗り越えて行く中で相手を知り、またいろんな会話を交わす中で相手とのやり取りのコツを掴んでいき、そうして今のようなやり取りになっていったわけです。素晴らしいです。このホロとロレンスのやり取りをメインで読むという読み方も全然アリだと僕は思います。
まあ何にしてもですね、これほど面白いライトノベルはないんじゃないかと思ったりしますね。まあそもそも僕はそんなにライトノベルを読まないんで比較の対象が少ないですが、少なくとも今まで読んだライトノベルの中ではトップです(西尾維新の<戯言>シリーズを外すなら、ですが。<戯言>シリーズは、僕の中ではライトノベルに分類されてないので)。
最近、ライトノベルの世界から文芸の世界にやってくる作家が結構いますけど(有川浩や橋本紡など)、もし次に来るとしたらこの支倉凍砂じゃないかなと思ったりします。だって、この「狼と香辛料」は、内容はそのままでカバーだけ替えれば、新潮文庫の棚に入ってても違和感ないような作品ですよ(「守り人」シリーズみたいなイメージです)。これだけ人間をうまく書ける作家なら、ライトノベル以外にも活躍の場はたくさんあるだろうな、と思います。とはいえ、ライトノベルで出す方が圧倒的に本は売れるでしょうから(有川浩と桜庭一樹は例外中の例外でしょう)、そのままライトノベル業界だけにい続けるという可能性もありますけどね。
僕はもう既にⅤ巻も買っているわけです。ちょっとしたら読むつもりです。これほど読むのが楽しみなライトノベルというのも凄いですね。まだ読んでない人がいたら、ホント面白いので、是非読んでみてください。シリーズを追う毎にドンドン面白くなっていきますよ!

追記)amazonのレビューを見ると、この巻はどうも評価が低いですね。シリーズ全体の小休止、と柔らかな表現を使っている人も多かったですけど。そうかなぁ。僕は相当面白かったと思うんだけど。

支倉凍砂「狼と香辛料Ⅳ」


狼と香辛料Ⅳ文庫

狼と香辛料Ⅳ文庫

2008年08月30日

「星を継ぐもの」ジェイムズ・P・ホーガン/池央耿訳

星を継ぐもの (創元SF文庫)
星を継ぐもの (創元SF文庫)
  • 発売元: 東京創元社
  • 価格: ¥ 693
  • 発売日: 1980/05
  • 売上ランキング: 2152
  • おすすめ度 4.5


21世紀、地球人が月や火星に到着できるようになったころ。
月面で赤い宇宙服を着た男の死体が発見された。チャーリーと名付けられた彼は
どう調べても人間と同じ体をしており、しかし彼の所持品のテクノロジーは
現在の地球のものを超えていた。更に驚くことに、彼は5万年前に死んでいた・・・・。
チャーリーとは何者か?彼はどこから来たのか?
この謎を解くために、物理学者、生物学者など世界の一流の学者が一同に集い、
地球レベルの研究を始める。
地球人なのか宇宙人なのか?彼らの調査は進むが、木星でさらなる発見が・・・!

帯にこうあるんです。
「SFにして本格ミステリ。謎は大きいほど面白いに決まっている」


ものすごくスケールのでかい舞台とスケールのでかい謎が用意された、
これは本格ミステリでもあります。もちろんSF、しかもかなりハードなSFでもあり、
読み応えは十分。面白いに決まってますよ、そりゃもう。

2008年08月30日

2008年08月に読んだ本

2008年8月に読んだ本です。

083「影武者徳川家康」隆慶一郎
084「ノルウェイの森」村上春樹
085「春の雪」三島由紀夫
086「李歐」高村薫
087「ずっとお城で暮らしてる」シャーリィ・ジャクスン/市田泉訳
088「夏姫春秋」宮城谷昌光
089「星を継ぐもの」ジェイムズ・P・ホーガン/池央耿訳
090「海がきこえる」氷室冴子
091「美女と竹林」森見登美彦
092「グラン・ヴァカンス―廃園の天使?」飛浩隆
093「燃えるスカートの少女」エイミー・ベンダー/管啓次郎訳


11作品。感想は少しずつ書きます。

今月の積読消化 11/59
今月の翻訳   3/12

2008年08月30日

中原みすず【初恋】

1968年12月10日、東京都府中市で起こった「三億円強奪事件」の実行犯と思しき人物が綴る、事件の真実と切ない恋。

宮崎あおいの主演で映画化もされた話題作。


初恋 (新潮文庫 な 65-1)初恋
(新潮文庫 な 65-1)

(2008/07/29)
中原 みすず

商品詳細を見る


初恋 スタンダード・エディション初恋 スタンダード・エディション
(2006/11/24)
中原みすず 塙幸成

商品詳細を見る



評価=☆☆☆  (5点満点)


「私は『府中三億円強奪事件』の実行犯だと思う」と、いきなり冒頭からカウンターパンチを繰り出してきますねえ。

本物の犯人がこういう本を書くとは、私にはどう逆立ちしても信じられません。文中には、現金輸送車はセドリックで犯行に使った車はクラウンだとか何だとか細かく書いてありますけど、これぐらいのデータなら、ちょっと調べれば犯人じゃなくても分かるでしょう。

事件の経過を説明されればされるほど「これは犯人じゃないなあ」という気がしてきます。



でも雰囲気は悪くないですよ、この本。

《若者たちは、いつかどこかで大人になっていく。その過程で、焦燥し汗ばんだ手のすき間から何をとり落とし、何を掴むのかという選択権など与えられえていない。》 (文庫版19ページ)

なんていう表現がけっこう胸に響きます。



ちなみに事件で奪われた三億円は東芝の社員にボーナスとして配られるべく、袋に小分けしてあったとのことですが、すべて保険でカバーされ、死傷者も出なかったそうです。そういう事件だからこそ、「わたしは犯人です」なんて小説に書けるのではないでしょうか。

これが殺人事件だったら、時効を迎えた後だとしても、世間は黙っちゃいないと思います。


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2008年08月29日

告白(湊かなえ)

なぁ、ちょっとだけ俺の話聞いてくれるか。おっ、俺が口を利いたのが意外だって顔してるなぁ。まあ無理もないよね。いじめられっ子いじめっ子にこんな風に話すなんてね。ムカついてる?まあそうだよね。でもさ、ちょっとだけ我慢して欲しいんだ。もし制裁を加えたいんだったらさ、後からいくらでも受けるからさ。ちょっとだけ、ね。
トオル君はいじめられたことってあるかな?ない?ないよね、そりゃあ。勉強もスポーツも出来てかっこいい。女子からもモテる。羨ましいよ、ホント。まあそんなに恵まれた人間なのになんでいじめなんかしてるのかよくわかんないんだけどね。
うん、でね、やっぱりいじめられる人間の気持ちってわかんないだろうなって思うのよ。そうでしょ?じゃあ僕がどんな風に思ってるのか教えてあげるよ。
最初はねぇ、びっくりしてね。何で僕がいじめられるんだろう、って。でもそれからはね、ちょっと楽しくなっていったかな。別にマゾとかそういうことじゃないんだよ。いじめられればいじめられるほど、よりデカイ復讐が出来るな、ってね。
トオル君はタイムトラベルって信じてる?そうそう、未来とか過去に行くやつ。信じてないんだ。まあそうだよね。普通出来るわけないしね。でもあれって、この時代の物理学の知識でも、一応可能だっていうことにはなってるんだよ。まあ未来にしかいけないんだけどね。
何の話かわかんないって?まあそうだろうね。簡単に言っちゃうとね、僕は時間を移動することが出来るんだ。過去にも未来にもね。その顔は信じてないな。まあいいんだ、別に信じてもらおうなんて思ってないんだよ。
でも、一つ聞いていいかな。マツオ君って覚えてる?
覚えてないよね。たぶんこのクラスの誰に聞いても覚えてないと思う。担任だって覚えてないだろうね。マツオ君の親に聞いたって、きっと覚えてないはずなんだ。マツオ君のことを覚えてるのは僕だけ。何故って、僕が彼のことを消しちゃったからなんだ。
ほら、あそこ。教室の真ん中辺りの席。あそこって、何故か誰も座ってないだろ。誰もそれを変だなんて思ってないみたいだけど、普通に考えたらおかしいよね。空席はもっと端っこの一番後ろとかにすればいいんだもんね。
そうそう、あそこがさ、マツオ君のいた席なんだよね。2ヶ月前まではこのクラスにちゃんといたんだよ。でももういなくなっちゃった。マツオ君も、僕のことをいじめててくれたんだ。そのお礼ってとこだよね。
どうやって消したのかって?そんなの簡単じゃないか。過去にちょっと行って、ちっちゃい頃のマツオ君をさらっと殺してあげるだけだよ。この時代で殺しちゃうとさ大騒ぎになっちゃうけど、過去に戻って殺しちゃえばさ、今この時代で姿がなくなっても誰も気づかないからね。
俺のことも消すのかって?いやいや、あれ、今僕そんな話してたっけ?僕はただ、自分がタイムトラベルが出来るってことと、昔マツオ君ってクラスメイトがいたって話をしたかっただけなんだよ。これで僕の話はお終い。
あぁ、そうか。いじめられっ子が生意気にこんな話を始めたんだから制裁を受けないとね。えっ、いいの?トオル君、何だか変わったね。そっちの方が僕好きだな。んじゃ僕帰るね。トオル君は、マツオ君みたいに消えちゃったりしないよね。

一銃「いじめられっ子の告白」

そろそろ内容に入ろうと思います。
本作は連作短編集ですが、長編という解釈も出来る作品なので、内容紹介的には長編として扱います。
森口という女性教師は、とある事情で教師を辞めることになった。その間際、クラスメイトを前にして、ある「告白」をする。
それは、少し前に起こったある「事故」に関する告白だった。
シングルマザーだった森口は、どうしても都合がつかない時は娘の愛美を学校に連れてきていた。その愛美が、学校のプールに転落して水死するという事故が起こったのだった。プールを横切った先に飼い犬がいるのだけど、その飼犬に餌をあげに行く途中で足を滑らせたのだ、と見られた。
しかし森口はクラスメイトを前にこう主張する。
『愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです』
森口は、真相が判明してからもその事実を警察には届けませんでした。何故か。それは、少年法の存在により、もし犯人を指摘しても大した罰は与えられないからです。
森口はクラスメイトを前に、自分の境遇や事件について話し続けます。そしてやがて、彼女の「裁き」が明らかになる…。
この「事件」を中心に、様々な人間を描いていく作品です。様々な人間の「語り」によって、事件は表裏をどんどんと変えて行き、状況は二転三転していきます。そして辿り着く衝撃のラスト。
というような作品です。
本作でデビューした新人の作品なんですが、これは面白いですね。新人のレベルを超えていると思いました。今ちょっとずつ話題になりつつある作品ですが、確かにこれは話題になるだけのことはある作品だなと思いました。
僕はそもそも、本作の賞への投稿の仕方がすごいなと思いました。著者は、本作の第一章である「聖職者」という作品で、短編の新人賞の賞を受賞しているわけです。つまり著者のやり方としてはこうなります。受賞できるかどうかわからないけど、連作短編として最終的に長編に構成できるような伏線を盛り込みつつ、「聖職者」という短編を書き賞に応募した、と。なかなかこういうことは出来るもんじゃないですね。著者は他にもテレビやラジオドラマなどの脚本の新人賞を受賞しているようですが、とにかく力量のある人なんだろうなと思います。本作は、どう読んでも新人の作品ではないですね。お見事だと思います。
何が凄いって、その短編の新人賞を受賞した冒頭の「聖職者」ですね。これはホントすごいです。今年どれだけ短編を読んだか覚えていないですが、その中で間違いなくトップだと言えるレベルの高さだと思います。横山秀夫の短編を読んでるような、そんな感じがしました。短い話なのに、必要な伏線をすべて盛り込んで、ラストで大きな展開を見せるというのが横山秀夫っぽい気がしました。
「聖職者」という作品は、最初から最後まで森口という女教師の一人語りによって進行します。一人語りというのは書くのに結構難しいやり方だと思うんですが、それであれだけの作品を書けてしまうんだからすごいですね。とにかくラスト驚くと思います。僕はびっくりしました。なるほど、そういうことか!って感じです。この「聖職者」という第一章だけを読むために本作を買っても損はないような気がします。
それ以降の短編では、森口の娘が殺されたという事件に直接的・間接的に関わる様々な人々が描かれていきます。森口が去って次の年になってから起こった出来事を委員長視点で描いたもの、事件の共犯者であった少年の母親の日記、事件の共犯者の回想、事件の主犯の回想、そしてラストという感じです。どの話も、それまでに描かれた部分をなんらかの形でひっくり返すような形で話が進んでいます。冒頭の「聖職者」を読んだだけでは分からない、様々な人の動きや気持ちを追うような内容になります。地味でさほど驚きのない話もありますが、しかしどの話も新人とは思えない巧さで書かれていて、レベルは高いと思いました。
そしてラストです。このラストも素晴らしいですね。なるほど、そういう展開になりますか、という感じで、またまた驚かせてくれます。お見事な展開だと思いました。
倫理的にも様々に考えさせる作品だと思いました。学校という、いつの間にかものすごくデリケートになってしまった場所を舞台にしているので、読む立場によって感じ方が様々に変わることでしょう。教師として、生徒として、親として、あるいは関係ない一般市民として読んだ場合では、本作の印象はそれぞれ大きく変わってくることでしょう。自分だったらどうするか、どうするのが正しかったか、何が出来たのか。そういうことを考えながら読んでいくと面白いかもしれません。特に、子供を持つ親は読んでみたらいいかもしれません。何らかの参考になる、とは言いませんが、自分の子供が本作で描かれているような感じではない、という保証はどこにもないと心を引き締めることが出来るかもしれません。
本作は、細かく見ればいろいろと無理があるような箇所があるかもしれません。よくamazonなんかのレビューを見ていると、そういう部分を細かく指摘している人とかがいたりしますけど、僕は別にそういう部分は気にならないので問題ありません。それよりも、そうやって伏線を回収するか、そういう展開に持ち込むか、という部分が素晴らしいと思うのでいいんじゃないかなと思います。
なかなかレベルの高い新人が出てきたものだと思います。「チーム・バチスタの栄光」ほどの衝撃度はなかったですが、でもこれから注目の作家ではないかと思います。出来れば次の作品を早目に出した方がいいですね。話題になっている内にどれだけ作品を書けるか、というのが勝負ではないかと思います。
かなりオススメ出来る作品です。是非読んでみてください。

湊かなえ「告白」


告白ハード

告白ハード

2008年08月28日

「モンティニーの狼男爵」佐藤亜紀

モンティニーの狼男爵 (光文社文庫)
モンティニーの狼男爵 (光文社文庫)
  • 発売元: 光文社
  • 価格: ¥ 500
  • 発売日: 2001/10
  • 売上ランキング: 5869
  • おすすめ度 5.0


佐藤亜紀の恋愛小説。というだけでものすごく気になる本だった。
佐藤亜紀と恋愛小説。
今まで読んだ「ミノタウロス」や「バルタザールの遍歴」など、退廃的で救いがなくて
どこかカッコいい佐藤亜紀のイメージと、甘ったるい恋愛小説のイメージは
あまりにかけ離れていたから、その組み合わせにはいたく興味を持った。
しかし読んでみてなるほどと思った。
一筋縄ではいかないのだった。

2008年08月28日

「美女と竹林」森見登美彦

美女と竹林
美女と竹林
  • 発売元: 光文社
  • 価格: ¥ 1,680
  • 発売日: 2008/08/21
  • 売上ランキング: 437
  • おすすめ度 4.0


待ちに待った森見さんの新刊。
タイトルがステキである。ビジョトチクリン、響きもよい。
新刊というだけで中身をなーんにも知らずに買う。
新作小説かと思っていたら全然違って、度肝を抜かれた。ジャンル不明。
エッセイ?本人は随筆とか書いてるけど、妄想日記?
なんだろうこれ。ジャンルはしかしどうでもいい、むちゃくちゃオモチロイ。
何度も爆笑した。電車読み注意である。

2008年08月28日

「私んちにくる?」こぐれひでこ

「私んちにくる?」こぐれひでこ
133p 扶桑社

家作りエッセイ

前回読んだ「こぐれの家にようこそ」の、姉妹編?

2008年08月27日

「遊女のあと」諸田 玲子

「遊女のあと」諸田 玲子
413p新潮社
福岡の田舎で 漁師の嫁だった こなぎは 飢饉で 食べるものにも困っていた。そんな時 夫の磯六が 嵐の海で、異人を連れ帰ってきた。
一方 江戸の高見沢鉄太郎は、妻の由伊が、忽然と 家から姿を 消した。


うわ〜〜〜ん

異人さんの張紹維が めちゃ気になったんですけど〜〜
どうして くれるのォ〜〜〜!!

2008年08月26日

「こぐれの家にようこそ」こぐれひでこ

「こぐれの家にようこそ」こぐれひでこ
128p早川書房

目次
1 東へ西へのやどかり生活 in Tokyo
2 引き算の時代 in Paris
3 ゆったりした暮らし in Tokyo
4 築100年! in Paris
5 新しいわが家 in Tokyo

こぐれひでこさんが 今まで暮らしてきた家に関するエッセイ。

どんな人生だったかを 垣間見る感じ。
家って 個性が出るなぁ。

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