「仕事の楽しみ方」講座の名物教師が引き出した、カリスマたちの人生を豊かにする「秘密」。慶応義塾大学でキャリアデザインのパイオニアの一人として絶大な支持を集め、アカデミーヒルズの超人気講師となったフランス人が、外国人トップとして各界を代表する日本企業を率いる五人の社長たちを直撃インタビューしている。



著者はプロのマリンバ・ソリスト演奏家かつ作曲家でありながらキャリア・イノベーターのフランソワ・デュ・ボワ氏。現在では(株)D-Projectにて、「デュボワ・メソッド」のキャリア・デザイン講座を個人及び法人向けに展開、多くの学生(大学、MBA)や社会人を、スクールディレクターとして指導している。そんな著者が今回で四作目となる著書をリリース。以下の各界を代表する外国人経営者たちが登場するのだが、「特別な存在」として捉えて欲しくないと本人は言う。なぜなら自分のキャパシティを、勝手に狭めてしまうからである。むしろ彼らの普通の人たる部分、人間味溢れる部分に注目することで「キャリア」とは何なのかという問いに気づくことが出来る。


  • カルロス・ゴーン氏(日産自動車株式会社)

ゴーン氏のリーダーとしてもモチベーション源は自問自答すること。孤独な状況に陥った際には真っ先に「自分は間違っているのだろうか」と自問している。トップだからといって「みんなが理解しないのはおかしい」と自分以外を責めてしまうと、更に孤独になってしまう。つまり、自分の考えを客観視することを意識することでリーダーとしてのモチベーションは保てるという。

仕事での成功=人生の成功だと位置づけする印象が日本人にはある。しかし人生は仕事ばかりではない。仕事以外の部分でも精神的な満足感を得られたり、幸せや喜びを感じる瞬間は多々ある。そのことをすっかり忘れてしまっているのではないだろうか。時間がないから、と正当化してしまうのではなく、より豊かに生きるために生きることがキャリアである。


  • リシャール・コラス氏(シャネル株式会社日本法人)

コラス氏は自由思想の持ち主である。自由思想家がやらなければならないこと、それは「一つの方向性に決めてしまわないこと。」例えそれがキャリアであっても、道であっても、ビジョンであっても。むしろ、自分の前に登場するエレメントを余すところなく使いこなすことに意味がある。これこそが目の前のチャンスをものにするということだ。

仕事と家族、パートナー、恋人などのプライベートの関係とのバランスが上手く取れないという女性が多い。しかし、日本人の女性は周囲が思っている以上に自由だ。日本では男性を前に立たせて、時々違った方向に意識が向くと、一歩下がって背中をポンと叩く。自由だが、そうではないと思い込ませているのではないだろうか。


  • マリア・メルセデス・M・コラーレス氏(スターバックスコーヒージャパン株式会社)

コラーレス氏は常に仕事を楽しんでいる、楽しくしようとしている。つまらなくても、楽しくしてしまえばいい。楽しみながらやらないと、本当にそれは「仕事」になってしまうから。「仕事」というものはつまらないものにしようと思ったら、本当心底つまらないものになりえるものだから。

CEO職の役割は、芸術(アート)と科学(サイエンス)の両方を兼ねそろえているとコラーレス氏は言う。科学的な側面、それは数字やら、戦略やら、とにかく堅い部分に偏ってしまうとつまらなくなってしまいがちだ。そこに、どんな商品をマーケットに投入するか、どんなお店をオープンさせるか、パッケージのデザインをどれにするか、といった芸術的側面に光を当てると違ってくる。これらのクリエイティブなものは、仕事のより楽しい側面。そしてCEOの役割として消費者の心の中に入り込むというのも仕事の楽しみでもある。


  • アントワーヌ・サントス氏(エコール・クリオロ)

お菓子作りの世界では、技術的には上手ではないけれど、他人よりも忍耐力があるといった人がいる。しかし、そういう人程後から伸びて技術的にも先を行っていた人を追い抜くという可能性がある。もしかしたら、技術的に下手な人のほうが、上手な人よりも「成長したい」というモチベーションは高いかもしれない。そのため、自分は日頃から無知である、下手であると意識付けするようにしている。

趣味のお菓子作りが仕事となったサントス氏。それは「成功を手にしたいから」ではない。逆に「成功を手にしたいから」と、どっぷり仕事だけに漬かる生き方はしたくなかったと言う。むしろ仕事以外で、様々な経験をすることが、人生を豊かにしてくれるはずだ。


  • ティエリー・ポルテ氏(株式会社新生銀行)

仕事において自己表現ができないという問題を抱えている人が多い。それは、拘束や社内の本当のコミュニケーションをとる余裕がない、年功序列といった日本のシステムの影響だ。個人の才能や努力に対する報酬にも正当性が欠けているのだ。新生銀行では個性的な評価システムを導入しているが、年功序列式のシステムに慣れてきた人や国にとっては、非常に抵抗感のあるやり方かもしれない。しかし、そのような先入観を取り払い、改善していかなければ自分のキャリアを楽しめなくなってしまう。

「学ぶ力」こそ日本にとってかけがえのない推進力。日々起こっていることを理解しようと努め、起こっている事から学んでいくことが大切。そうすることで自分のキャリアにおいても、そして人生においても前に進むことができる。日本の若者にはそうした学びに対するオープン・マインドの姿勢があるのではないだろうか。問題は、そのチャンスがあまり与えられていない徒言うこと、そして日常生活の中で学ぶ機会が少ないということ。日本では企業という組織に刺激が少なすぎるのだ。全く予想のつかない世界に飛び込むからこそ、常に刺激され、学びの機会を得ることが出来る。


  • 感想/私的メモ

古い価値観に影響されず、自分なりの価値観、実力を創ろう、育むことの大切さを学んだ。変化を受け入れ、楽しむこと、そして変化は当たり前に来るものだ、と自分に言い続けること。他人からの評価ではなく、自分自身で評価できたのか、という問いに「イエス」と答えられる生き方が人生の「本質」であり、それに沿っていなければ決して豊かにはなれない。日本には特有の固定観念があり、それらは学校をどうするか、どんな仕事に就くか、今の仕事をどうするか、といった課題があることで、目の前のことしか考えられなくなり、「社会ではこうした方がいい」というセオリーのようなものが厳然として存在していることは確かだ。しかし、成功には「答え」や「セオリー」がない。だからこそ自ら成長し、自らに課し、自分で納得しながら生きていかなければキャリアをデザインすることができないのだ。


『水というのは、どんなカタチにもなります。そして水は流れていく。溜まると腐ってしまうエレメントです。だから流れる「道」が必要なのです。人生も同じです。必ずオリジナルな道がある。その道を探っていこうとすれば、必ずどこかにそのヒントは潜んでいるのです。だからこそ重要なのは、探ろうとする意識を持つこと。(中略)自分の感覚を、自分の感性を大事にすること。それら(の芸術家的要素)があれば流れるべき道を見つけられると僕は思うのです。』―フランソワ・デュ・ボワ(pp111)


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