「型は美、技は心」という極意が武道の教えにあります。「型」は先人の残した極意の集積であり、洗練されています。美しさすらあります。稽古を積むことでこの「型」は身につけることができるといわれます。しかし、いくら「型」だけを習得しても実践(「技」)はできません。「技」にするには「型」を自分のものとする「心」が必要であるといいます。
この本はまさに「型は美、技は心」の双方の側面から論理的に、そして知覚的にプロジェクトマネージャーについて語ります。(ハウツー本ではないので、あえて”語る”という言葉を使いましたw)そして、やられました、著者の峯元さんには。いいです、この本。極意好きの私ではあるので、本のあちこちにちりばめられた「極意」に惚れたのもありますが、これは「人」が主役の本です。役割や立場という仕様・スペックの解説や解答ではなく、少し抽象的ではありますが、「なぜ重要なのか」「何を成し遂げるのか」「どのようにあるべきか」を人として、心のありようを語ります。「Web2.0はattitude(態度)」だと言われたのはつい最近ですが、プロジェクトマネージャーも実はattitudeでしかないのではないかと思う一冊です。
さて、まずタイトルです。よく見てください。そう、プロジェクトマネージャーではなく「プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル」なのです。プロジェクトマネージャーはプロジェクトマネジメントのプロフェッショナルでなければなりません。しかし、営業職であろうが、開発研究職であろうがプロであることはできます。そこで本では
<従来型組織>の中では、個人は顧客や社会に対して「組織」という枠組みを通して形式的に付き合ってきたように思います。そして組織内部では個人を性善説を背景とし、矢印は内向きでした。顧客志向や社会的貢献は形骸化されたものだったのではないでしょうか。
しかし<今後の組織>では、個人が直接、顧客や社会と対峙するような組織形態です。それはグローバル化やコモディティ化、談合や組織ぐるみの犯罪などを取り締まるための法規制などを考えれば必然的な背景があります。組織は個人を「枠」の中に囲い込むのではなく、主体性と責任感を持たせることが重要になります。そしてそれは「内部統制」のように内部にまで監視・管理強化をするのではなくて、究極に個人としての責任(PSR:Personal Social Responsibility)や企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)に真剣に取り組むこと、態度として持ち合わせることが必要なのだと思います。組織が唯一できることは、個人へのリスペクトし、マネジメントするだけでしょう。(それがダイバーシティにつながり、場の論理につながると思うのですが、今日は省略w)
そして、マネジメントは全体的であり、コントロールは部分的であるといいます。
「プロジェクトの真の成功のために何をすべきか」という貢献に焦点をあわせ、その責任を果たす人を「プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル」と定義し、プロフェッショナルとしての態度が書かれています。そう、役割や立場が重要なのではないのです。大事なのは細分化して、差別化してカテゴリを区切ること、役割や自分の空間を作ることではなく、どんなカテゴリにいても真の目的のために人として創造性をもって取り組もうとする態度なのです。クリエイティブ・クラスやブルーオーシャンなどなど最近言葉は氾濫していますが、これらも本質は「新カテゴリ」として新たな解釈をもつことではなく、視点や考え方を変えればどんなことでも変えられるということだと思っています。なので、attitudeです。 ではプロフェッショナルとは何でしょうか。この本では下記のように「組織と個人との間の緊張と責任関係の問題」を解いています。
マネジメントは「決断」であり、コントロールは「判断」であるということだ。「判断」には計画やベースラインという基準=「正解」が明示的であるが、「決断」には正解は無い。 マネジメントは”知覚のものを遠くから見る”ことであり、過去・現在・未来を俯瞰し『正しいことをする(Do Right Things)。』的なアプローチです。逆にコントロールは過去から現在を分析し『ことを正しくする(Do Things Right)。』的なアプローチなのです。 組織のマネジメントも、プロジェクトのマネジメントも同様だと思います。組織もプロジェクトも完全にコントロールすることはきっと不可能なのであり、それは一つの側面でしかないのですね。大事なのはマネジメントというattitudeであり、プロフェッショナルとしてのattitudeなのだと思いました。 その他にも本にはPMBOKの超解説として「なぜPMBOKにはその章があるのか」といった背景や、「だからどういった態度で臨むのか」という捉え方が語られています。特に「プロアクティブ・リスクマネジメント」というPMBOKのアプローチの超解説は良いです。私達は問題解決や問題管理をしようとします。しかし、問題には「前提条件」やそれを発見しようとする「既知の未知のリスク」という視点が必要です。また、なぜか起きてしまった「未知の未知のリスク」という視点も運営していく上では必要となります。マネジメントとしては、それらをきちんと分解して、本質はどこにあるのか、人・テクノロジー・組織・プロセスのどの関わり方に発生源があるのかを見極めることが必要なのだと思いました。 この本が机上の空論ではなく、現実的で実現的である考えとして、心をこめて実践していこうと思います。そしてもちろん「型」の習得も同時にしていきたいと思います。 是非、一読を!
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