「ペーター・シュレミールの不思議な冒険」とも題された名作。
園遊会で出会った灰色の服の男が、主人公に申し出る。「あなたの影をおゆずりいただくわけにはまいらないものでしょうか」
いくらでも金の出る革袋と引き換えに影を渡した主人公はしかしすぐさま後悔するが、灰色の服の男は行方をくらまし一年後に戻ってくるという。金に飽かせて贅を尽くした生活を送りつつも光のあるところへは姿を表せない主人公は、何をしても影がないばかりに恋を信頼をすべてを失う。
約束の一年後に戻ってきた灰色の服の男は、影を返すかわりに魂を売り渡せという。悪魔の誘い。ためらうが悪魔を振り切り、ひとりさまよううちに七里靴を手に入れ新境地を開く。一歩で七里をゆく靴なら影を気にすることもない、思うさま世界中を歩きまわり、植物採集をして暮らしていこう―。短い物語はここで終わる。
恩師に薦められて以来十数年、年に一度は読み返しているがそのたびに嵌まるツボが違う。
影とは何か、これは毎回心をよぎるが故郷文化自我自尊心下敷きどれでもなく影そのものでよいのではないかということに今回は落ち着いた。
いま読み返して気になったのは、影がないことを指摘された時の言い訳だった。
―ロシア旅行の際、寒さのために影が地面に凍りついてしまってはがすことができなかったのだそうですよ。(p.34)
―乱暴者に影を踏みつけられて穴があいてしまったので今修理に出しているのです。(p.63)
―長患いをしているうちに髪も爪も影も抜け落ちてしまったのさ。(p.104)
この切り返し感覚を持つ自分はこれを生得のものだと思っていたのだが、どうやら本に影響されていたようだ。
これもまた、読み返すことの楽しさ。再読のススメ。
園遊会で出会った灰色の服の男が、主人公に申し出る。「あなたの影をおゆずりいただくわけにはまいらないものでしょうか」
いくらでも金の出る革袋と引き換えに影を渡した主人公はしかしすぐさま後悔するが、灰色の服の男は行方をくらまし一年後に戻ってくるという。金に飽かせて贅を尽くした生活を送りつつも光のあるところへは姿を表せない主人公は、何をしても影がないばかりに恋を信頼をすべてを失う。
約束の一年後に戻ってきた灰色の服の男は、影を返すかわりに魂を売り渡せという。悪魔の誘い。ためらうが悪魔を振り切り、ひとりさまよううちに七里靴を手に入れ新境地を開く。一歩で七里をゆく靴なら影を気にすることもない、思うさま世界中を歩きまわり、植物採集をして暮らしていこう―。短い物語はここで終わる。
恩師に薦められて以来十数年、年に一度は読み返しているがそのたびに嵌まるツボが違う。
影とは何か、これは毎回心をよぎるが故郷文化自我自尊心下敷きどれでもなく影そのものでよいのではないかということに今回は落ち着いた。
いま読み返して気になったのは、影がないことを指摘された時の言い訳だった。
―ロシア旅行の際、寒さのために影が地面に凍りついてしまってはがすことができなかったのだそうですよ。(p.34)
―乱暴者に影を踏みつけられて穴があいてしまったので今修理に出しているのです。(p.63)
―長患いをしているうちに髪も爪も影も抜け落ちてしまったのさ。(p.104)
この切り返し感覚を持つ自分はこれを生得のものだと思っていたのだが、どうやら本に影響されていたようだ。
これもまた、読み返すことの楽しさ。再読のススメ。


