TOP>2010年03年

2010年03月30日

[読書ノート]ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘


著者:水木悦子 赤塚りえ子 手塚るみ子  出版社:文芸春秋  2010年2月刊  //\/i/i1,500(税込)  251P


ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘    購入する際は、こちらから


今週月曜日から、NHK朝の連続テレビ小説で新シリーズ『ゲゲゲの女房』がはじまった。

『ゲゲゲの女房』は『ゲゲゲの鬼太郎』作者である水木しげるの夫人が書いた同名の自伝エッセイが原案になっている。


本書はNHKドラマの人気に当て込んだような題名で、しかもつい先月出版されたばかりだが、いわゆる便乗本……ではない。


内容は水木しげる、赤塚不二夫、手塚治虫の娘たちの鼎談集で、2008年に企画されたものである。



3人の共通点は、偉大な漫画家を父に持ったことだ。


父親たちは売れっ子漫画家ゆえ、仕事に追われ、締切りに追われ、ほとんど家庭の団らんというものがなかった。

学校にいけば、有名人の娘ということでサインを頼まれたり、ときには漫画に登場させてほしいという依頼の取り次ぎを強要されることもある。


反発し、反抗した時代を経て、いま3人は三様に父の仕事を“継いで”いる。



2008年に最初の座談会が行われたとき、意気投合した3人はテープも回りはじめていないのにしゃべり出したそうである。


漫画家の娘という共通点のほかに、意外な共通点が次から次へと出てきた。

父親の年齢が離れているのに、娘達がほぼ同年代というのも不思議に感じられる。


1回目の座談会が終わったあと、赤塚りえ子さんのご両親(お母さんと赤塚不二夫氏)が相次いで亡くなるという事件があり、本としての完成が遅れたが、結果としてタイムリーな出版になった。


第1章の「ずっと父が好きだった」から始まり、本書には「父の仕事場」、「父の女性観」、「父と音楽」など、娘から見た漫画家の生活が明かされる。


印象的だったのは、3人ともずーっと父が好きだったわけではないこと。


家を出て別な女性と家庭を持ってしまった赤塚不二夫は当然として、ほかの2人の漫画家も、「興味ないんだよね。ただの父親だもん」と言われた時期があった。


やがて父の偉大さを再認識するようになる3人を象徴するような1シーンを手塚るみ子さんが本書で紹介していた。


それは、るみ子さんが一番好きな父親の作品『ジャングル大帝』に登場する。


ジャングル大帝の2代目「レオ」の息子「ルネ」は、父親に反発してジャングルを出ていった。都会で挫折してジャングルに戻ってきたルネだったが、すでにレオは死んでいる。

レオの最期を看取ったヒゲオヤジが、「お父さんの話をしようか」と言って、ルネと並んで平原を歩いていくのだが、このラストシーンの背景にレオの形をした大きな入道雲が浮かんでいた。


るみ子さんは言う。

  入道雲に浮かんだ父を見ながら歩いていくくだりは、まさにわたしの

  物語なんですよ。その先にある未来はわたし自身が見つけるべき物語

  なんだけど。


3人がひとつづつ選んだ父の傑作短編が収録してあったり、「まえがき」、「あとがき」のほかに、「なかがき」があったり、楽しい構成に仕上がっている。


話は変わるが、2ヶ月ほど前の久本雅美さんのトーク番組「メレンゲの気持ち」に的場浩司さんがゲスト出演した時のこと。


今は娘とお風呂に入っているが、一緒に入りたくないと言われる前に、娘が小学校3年生になったら「パパは、もう一緒にお風呂に入らないよ」と言うつもりだ。でも、それを告げるのがものすごく辛い、と語っていた。


出演者のあやや(松浦亜弥)が、自分も小5の時に同じことを言われてショックだった、とあいづちを打ったのだが、


なんと的場浩司さんは、

  「あややが小5まで一緒にお風呂に入っていたのなら、もう少し大丈夫だね。

   じゃ、娘に言うのを延ばす!」

と前言を撤回してしまった。


バッカじゃないの! という日本中のツッコミが聞こえそうだが、僕には分る。的場さんの気持ちが。


43歳でやっと子どもを授かったせいもあって、僕は娘にメロメロである。

きっと他の父親も同じなんだよねぇ。


ゲゲゲのパパ、レレレのパパ、らららのパパも、もちろん例外ではない、はずだ。


レレレのパパ(赤塚不二夫)だけは、娘との海外旅行に愛人を連れていったりして、可愛いはずの娘に辛い思いをさせたこともあるようだが、そんなレレレのパパも含めて、みんな娘を愛していたし、スゴイなあって言ってもらいたい、尊敬されたい、と思っていたに違いない。


父の死後、何年か経ってからではあるが、レレレの娘も、らららの娘も、父を尊敬するようになり、父の作品を広める活動を開始することになった。ゲゲゲの娘は、ゲゲゲの女房ともども、まだ現役漫画家として活躍している父を支えている。


偉大な漫画家なんて参考にならないかもしれないが、日本のパパとしては放っておけない本である。

2010年03月28日

★【Webook 2010.03.28】1日1分元気になる法則 ~ 福島正伸 + 久々に


 ★JCOLLEGE(TYO)のご案内 ~ 
     |
     |2010年3月30日(火) 19:00-21:00(18:30受付開始)
     |第53回 河合由紀さんと一緒に考える 
     |「自分だけの幸せな働き方~本当にワクワクする人生を描こう~」
     |http://jcollege.jp/  (締切過ぎてもあきらめることはない)


  ★きょうの一言 = http://twitter.com/webookoftheday
     |
     | なくなれば 自分でつくろう 居場所と出番
     |

----------------------------------------------------------------------

++   Webook of the Day    from LA
+++    http://webook.tv
++   Book diary by Shinnosuke Matsuyama

-----
続きを読む

2010年03月22日

[読書ノート]NTTデータ流ソーシャルテクノロジー


副題:「発信」「気づき」「つながり」で組織の壁を打ち破る

著者:Nexti運営メンバー有志

出版社:リックテレコム  2010年2月刊  //\/i/i1,050(税込)  131P


NTTデータ流 ソーシャルテクノロジー    購入する際は、こちらから


NTTデータは資本金1,425億円、社員数が3万人を超える大企業だ。


会社が大きくなればなるほど、部門間のセクショナリズムが起こり、意志の疎通が不十分になったり非効率になってしまうといわれる。

いわゆる大企業病の打破を目指し、ITを活用した新しいコミュニケーション手段として、NTTデータは2006年4月に社内SNSをスタートした。


その後活発に利用されるようになった社内SNSは、今やNTTデータになくてはならないサービスとなった。

やった! 大成功だ! と、運営メンバー有志がとうとう本まで書いちゃったのが本書である。


NTTデータの社内SNSである「Nexti」の登録者数は2010年1月現在で9,300名。コミュニティ数1,000、日記の投稿数は1日あたり100件、1日に1回アクセスするユーザー数が全体の10%とのこと。

mixi の会員数2,500万人に比べると見劣りしてしまうが、自由参加なのに社員の約3割が加入しているというのは凄いことだ。


運営メンバーとしては、達成感があったのだろう。「プロジェクトX」の感動が味わえる――というと褒めすぎかもしれないが、「ぼくたち、がんばったもんねー」という誇らしい気持ちが伝わってくる内容だったので、紹介させてもらうことにした。


あまり一般受けしなさそうな本だが、お付きあいいただけると嬉しい。



このプロジェクトがスタートするきっかけになったのは、NTTデータ社が「経営ビジョン」と「行動ガイドライン」を2005年6月に策定したことだった。


経営層がビジョンを発表しても、社内に定着しなければ絵に描いた餅である。社内への浸透策として「新・行動改革ワーキンググループ」の設置が決まり、全社員に向けて参加希望者を公募した。


新入社員から40代後半まで66名が名乗りをあげ、8グループに分かれて活動を開始。――と、ここまでは、どこの企業でもよく聞く話だ。


しかし、意欲に燃えた有志メンバーが本当に社内風土を変え、改革を実現する場合もあれば、建て前だけのビジョンに失望して雲散霧消してしまう場合もある。

幸いなことにトップの改革意欲は高く、この運営メンバーが打つ手は不思議にも着実に成果を上げる結果に結びついていった。


なぜこのプロジェクトは成功したのか。


――いくつか答を挙げられるだろうが、一番の成功要因はチームの名前だったのではないか、と僕は思う。


他のチームがCSR、品質重視、グローバルな視点などの行動ガイドラインに取り組むなかで、「セクショナリズムを排し、仲間の知恵と力を合わせる」というビジョンの実現を目指すことになったチームのメンバーが付けた名前。


それは、「リスペクターズ」だった。


セクショナリズムを排するために必要なのは、相手に対する尊敬や敬意――リスペクト精神を持つことだ、という思いを込めたからだ。


リスペクターズのメンバーが掲げた目標は、部門間の壁を取りはらってオールNTTデータの総力を結集できるような、風通しの良い社風をつくること。

そのために、まず「セクショナリズムはなぜ生まれてくるのか」という根源的問いを発するところから議論をはじめた。


検討を進めた結果、社内SNSをはじめることになり、システムの選定や規約の制定、メンバーの募集、登録、……とプロジェクトが進んでいく。


社長を巻きこみつつも、トップダウンでもゲリラでもない運営体制を実現したことや、社員へ「Webを使った喫煙室、給湯室のようなもの」と説明したことなど、感心させられることがたくさん載っている。

SNSの内容を充実させる工夫もたくさん紹介されているので、興味のある方はぜひ手にとって熟読してもらいたい。


同じく大企業で働く会社員として感心してしまったのは、「リスペクターズ」メンバーが匿名ではなく、顔写真付きの実名で登場していることだ。


IT業界に限らないと思うが、ふつうの会社員は広報部にでも所属していないかぎり顔と名前を公開したりしない。

本書の出版社がテレコム・IT・家電分野の専門出版社ということで、一種の学会論文の延長という位置づけなのかもしれないが、学会論文と違っていきいきとした笑顔の写真が並んでいる。


しかも、第1章を書いてトップに紹介されている著者が、2009年に会社をスピンアウトしてベンチャーを立ち上げているのは驚いた。


大企業病に冒されている会社なら、こんな社員は“無かった”ことにするはずだから、決して著者として登場することはない。


ところがこの本では、会社を辞めた人間が第1章を書いていて、一人だけノーネクタイなのに著者ページの筆頭に登場する。

まるでリクルート社みたいじゃないか。


この大企業らしからぬオープンさがNTTデータの社風になったのか、それとも「リスペクターズ」だけが特殊なのか分らないが、これがよき先例となって日本中の大企業の風通しが良くなることを念願したい。


「まえがき」で社長もいいこと言っているではないか。

  仕事のオンとオフをバランスよく組み合わせた“公私混合”(公私混同では

  ありません)の確立を目指すことにより、プロフェッショナル化が進む人財

  の知識集約が可能となり、新たなワークスタイルを実現するためのインフラ

  になりうるのではないかと考えています。

と。


かつて、インターネットの動きの速さを犬の寿命にたとえて、「ドッグイヤー」と表現したことがあったが、今や「ドッグイヤー」という言葉を使うことが恥ずかしくなるほど次々と新しい動きが出てきている。


特に、昨年の後半から大流行しているツイッターは、既存のネットサービスを根底から脅かしかねない勢いで広まっている。

ツイッターは会社のコミュニケーション手段にも使える! という主題の山本敏行著『iPhoneとツイッターで会社は儲かる』なんていう本も出ているくらいだ。


しかし、会社の規模が大きくなればなるほど、新しいコミュニケーション手段が浸透するには時間がかかるものだ。


大流行したmixiのエッセンスが、やっと会社のコミュニケーション手段にも適用されるようになった、という視点で見るとき、とても実用的な一書と感じた。

2010年03月15日

[読書ノート]折れそうな心の鍛え方


著者:日垣 隆  出版社:幻冬舎新書  2009年9月刊  //\/i/i777(税込)  213P


折れそうな心の鍛え方 (幻冬舎新書)    購入する際は、こちらから


3年前、著者の日垣氏はウツになりかけた。


強烈な喪失感とストレスに襲われ、気分がジェットコースターのように上下する毎日が続いたそうだ。


ウツになる原因は、父親や親しい友人の死が続いたことにある。


理由がはっきり分るのだから、「ウツ病」ではなく「落ち込み」が強くなっただけと言える。

ならば、精神科の薬を飲まなくても自分で治せるのではないか。と、日垣氏は考え、ウツに関する大量の本を読み、メモを大量に書きながら自分の体験を客観視するよう努めた。


荒療治の甲斐あってほぼ立ち直った日垣氏が、ウツにならない方法、なっても克つための方策を50項目にわたって紹介するのが本書である。


あくまで生兵法(なくびょうほう)なので――と著者は言っていないが――本物の「ウツ病」の領域をカバーするものではない、とあらかじめ断っている。


日垣隆氏は、挑発的な文章を書く。


『どっからでもかかって来い!』では、毎日のように何か憤慨する事態にぶつかり、ケンカばかりしている日常を綴っていたし、『すぐに稼げる文章術』では、お前らに教えてやるよ、という上から目線でものを言い、「すぐに稼げる」というタイトルなのに「最低1万時間はやり続けなければならない」と読者を突き放していた。


そんな日垣氏がウツになりかけた。


他の人のウツ体験なら、きっと「たいへんでしたね〜」となぐさめたくなるに違いないが、この人にそんな言葉はかけられない。

「みせかけの共感を口にするのは、自分が優位に立っていることを確認し、優越感に浸っている証拠だ」などと攻撃されるおそれがあるからだ。


彼の本を読んだ経験が邪魔をしてしまい、書いてあることを素直に受けとめるのがむつかしい。

日垣氏の本を読んだことがある人は、無理にでも、いったん頭の中を白紙にしてみたほうが良い。


本書の話題はウツからスタートするが、今のところ僕はウツの気配も、ウツの心配をしたこともない。重度の睡眠障害の日垣氏と違ってふとんに入れば3分で寝てしまうし、「落ち込み」が何日もつづくこともない。

腰痛で1ヶ月仕事を休んだときも、カミさんが「この先、どうなるのか……」と不安に感じているのを尻目に、「なんとかなるさ」と思い続けていた。


とはいえ、体力と気力は年齢とともに衰えていくもの。

心の健康が衰えたときに思い出すのにちょうど良い一書かもしれない。


あまり深く共感する箇所や身につまされる箇所は少なかったが、いくつか印象に残ったフレーズを引用しておこう。


  • 「好きだったことがイヤになった」は落ち込みのバロメーター
  • 「ストレス=それをやるのが本当はイヤな状態」
  • 七番目だった人が一〇番になるより、ずっと一番できた人が一〇番になるほうが、ダメージは大きくなります。
  • 「時間の経過」だけに任せず、小さなガス抜きを繰り返す
  • 「いずれ関係が破綻しそうな人」は早めに見限っておく

読みおわったところで、この本によく似た本があったことに気づいた。


著者が何でも記録した結果を元にしていて、上から目線で書いた本。

どこかで、同じような本を読んだ気がする。

なんだっけ……。


そうだ!


岡田斗司夫氏の『いつまでもデブと思うなよ』と同じだ。


50キロも減量したのだから、「すごいなぁ」とか「えらいなぁ」という感想が湧いてきそうなものなのに、なぜか「ふ〜ん」、「それで?」と言いたくなってしまう。


二人とも、なんだかエラそうだから共感しにくいのだ。


プロレスに悪役(ヒール)がいるように、本の世界にも、「ファンじゃないけど、くやしいけど読んでしまう」本があるんだなぁ……。


それにしても、日垣氏の落ち込みは激しかったようで、ナポレオンの最晩年について次のような感想を寄せている。

   仕事に失敗し、部下に裏切られ、妻子にも見捨てられ、一人死んでいく

  中年男……。

   何やらナポレオンに親近感すら湧いてきます。


実際に、この落ち込み期間に前後して、日垣氏は離婚を経験した。

次は、家庭崩壊の過程をネタに一冊書き上げる、とどこかで読んだ気がする。


さすが、ガッキィファイター。

次回作も、反発しながら、ついつい読んでしまうに違いない。

2010年03月12日

[卒読ノート]お好みの本、入荷しました


著者:桜庭 一樹

副題:桜庭一樹読書日記  出版社:東京創元社  2009年12月刊  //\/i/i1,680(税込)  301P


お好みの本、入荷しました (桜庭一樹読書日記)    購入する際は、こちらから


何か面白い本はないかな〜、といつもアンテナを張っているからだろうか、電車で隣に座った人が本を広げると、「どんな本を読んでいるんだろう」と、ついのぞき込んでしまう。ほかの人が何を読んでいるか気になるのだ。


本書も同じ。作家の読書日記はあまり参考にならないのだが、性懲りもなくまた手にしてみた。


読みはじめて3ページで挫折しそうになった。

だめだ! やっぱりダメ。この人の読んでる本、小説ばっかり。しかも外国のものが多くて、聞いたことのない題名がほとんどだ。

プロの作家というのは、高橋尚子のように毎日何十キロも走り込んでいるんだなぁ。2、3キロのジョギングでスポーツしている気になっている素人とは、練習量が違う。レベルの違いを再認識させられた。


桜庭一樹の小説は1冊も読んだことがないのだが、「一樹」というペンネームなのに女性であることは知っていた。作家になったら男か女かわからないペンネームにしよう、と思ったのは中学校時代に読んだ本の影響らしい。

「初恋の人の名前が一樹」ではないですか、と新聞記者に質問されたこともあるそうだが、巻末の三村美衣との対談で、好きだった人の名前をペンネームにするようなことは「女はやらないですよねえ」と否定している。


やはり女流作家の高樹のぶ子が、

  男の恋はインターネットを例にすれば、「名前をつけて保存」。

 女性の場合は「上書き保存」

  男性は、一つひとつの恋愛を別のフォルダに残して大事にします

 が、女性は、今までのものを全部消去して上書きします。今はこれ

 がすべてと。

『うまくいかないのが恋』で言っていたのを思い出す。


女は過去をひきずらない、らしい。


読書法は参考にならなかったけど、面白かったのは桜庭一樹の小説の書き方。

「この長編書くぞ」と決めたら、自分が読んだ本の中から参考にする本を本棚から取り出す。床に蟻地獄のように積み上げて、それを眺めながら小説を書くそうだ。

狭い部屋なので、台所へ行こうとして蹴つまずいては直し、掃除機をかけるときにちょっとだけずらす、なんて不自由もしているらしい。


書き下ろしが終わって本棚に戻すときに作品と一区切りがついて、ひきずらないでいられるのだろう。そして、また新しい本を読み、新しい本を書く。


いつまでも過去をふり返ってしまう“男”は、ついつい同じ本を手にしてしまうのだなぁ……。

2010年03月08日

[読書ノート]25歳の補習授業


副題:学校で教わらなかったこれからいちばん大切なこと

著者:福岡伸一,糸井重里、池上彰, 姜尚中, 養老孟司,太田光, 渡邉美樹

出版社:小学館  2009年10月刊  //\/i/i1,050(税込)  186P


25歳の補習授業―学校で教わらなかったこれからいちばん大切なこと    購入する際は、こちらから


村上龍著『13歳のハローワーク』が大ヒットしてから、「○○歳のための○○」というタイトルの本をよく見かけるようになった。

僕が目を通しただけでも、中学生向けなのに大人が読んでも面白い、

  池田晶子著『14歳からの哲学』

  宮台真司著『14歳からの社会学』

  福田淳著『これでいいのだ14歳。』

  豊崎由美著『勝てる読書(14歳の世渡り術)』


高校生向けなのに、大人が読んでも難しい

  松岡正剛著『17歳のための世界と日本の見方』

などがある。


社会人になった若者に向けては、明日香出版社の「あたりまえだけどなかなかできない」シリーズが、

  『あたりまえだけどなかなかできない25歳からのルール』

  『あたりまえだけどなかなかできない33歳からのルール』

  『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』

が揃っているし、ナナブックスから櫻井秀勲著の『35歳からの「愚直論」。』なんて本も出ている。


年齢をタイトルに入れることは、出版社がターゲットをはっきり絞っていることを意味する。


でも、出版社の意図が明らかだといって、読み手がタイトルに縛られる必要はない。14歳向けに送られるメッセージには世代を超えるものが多いし、17歳向けの本を17歳に独占させておくのはもったいないではないか。


――というわけで、いま52歳の僕が25歳の読者を想定した本、社会人になって2〜3年目の若者に読んでもらいたい一書を手にした。


どういう基準で選んだのか分らないが、編集者が選んだ講師は、出版界のスーパースターたち。数十万部、数百万部のベストセラーの著者ばかりだ。

自分の経験をとおして、人気作家が若者に語りかけるメッセージにハズレがあるはずはない。

各章末には、授業のポイントを2色刷りで整理してくれるなど、至れり尽くせりの内容に仕上がっている。

25歳の青年には人生のヒントや気づきが満載で、きっと「読んでよかった」と思えるに違いない。

52歳の僕が読んでも新鮮に感じるメッセージも多かった。いくつか例として引用しようとも考えたが、僕の引用文を読んでこの本を読んだ気になってしまうと、実物を手に取らないおそれもある。それではもったいないので、別の紹介のしかたを考えることにしよう。


本書の楽しみかたのひとつは、もちろん、「20代の今はこうすべきだ」という講師のメッセージを真正面から受けとめることだ。


もうひとつ、今回、僕が試してみたのは、

  「ははぁ〜、この発言はこの人らしい言い方だなぁ〜」

という少し斜めからの受けとめ方だ。


たとえば、福岡伸一氏は、「自分のなかを探しても、自分は見つからないんだよ」と言う。

いくら探したって「本当の自分」なんて見つかりませんよ、時間のムダですよ。という意見はよく聞くが、福岡氏が自分探しにダメだしする理由は、もっと科学的だ。


分子生物学が明らかにした細胞分裂のメカニズムから、「内省していてもわからないということになります」と結論する。

こんな論理展開で自分探しを否定する意見は聞いたことがない。


同じように、姜尚中氏は「今の時代、天職という考え方はあまりしないほうがいい」と言っているのだが、その根拠は正規雇用が少なくなっている社会情勢にある。

正社員になれたとしても、待遇は悪くなる一方。ならば人生の価値観をどこに置くかが重要になってくる、と説いている。自分がどんな価値観を持つかよく考えるようにアドバイスし、最後には「悩む力は生きる力」という結論に達するのが、いかにも姜尚中らしい。


もうひとつ、渡邉美樹氏が会社説明でよく受ける質問の話。


「やりたい仕事やモチベーションの見つけ方、その仕事が天職かどうかの判断が難しい」という質問を受けたとき、渡邉氏は「まず、やってみることだ!」と答えるそうだ。


「多くの場合、やってみたらたいしたことなかったり、「な〜んだ、このぐらいのつらさか」ってことで、意外と拍子抜けだったりするものなんですよ」


さすがは渡邉氏。

企業資金を貯めるために佐川急便で過酷な労働に耐えたという自身の経験を、決して特殊な事例と思っていない。


7人とも、「いかにも」という発言を楽しめる一書だった。